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 さて、どう切り抜けるかについてだが––––––

 とりあえず逃げようと思う。幸い王子様の後ろには怪訝な顔をしたフランさんがいる。彼が王子ならば、おそらくフランさんは執事とかだろう。
 そう当たりをつけ、俺は助けてくれという願いを込めて目線を向けてみる。
 俺の視線に気付いたフランさんは、こちらへ歩いて来た。

「レオ様、お時間ですので城に戻りましょう」

 てっきりプロポーズを止めてくれるのかと思ったのにそっちか! まあ、俺も早くここから逃げたいからいいんだけどさ。

(さっきから、周りにいた女の人たちの目線が突き刺さっててすげえ怖いんだよ……)

 俺がフランさんに感謝の視線を送っていると、レオと名乗った王子様は眉間に皺を寄せながらフランさんを見た。

「見て分からないのか、今は取り込み中だ。邪魔をするな」

 そう言われたフランさんは小さくため息をつきながら再び黙ってしまう。

(助けてくれるんじゃないのかよ……)

 こうなったら、自分で何とかするしかない。俺は、どうにか帰ってもらえないかと声をかけることにした。

「あの、王子様?」

 恐る恐る問いかけると、王子様は眉を顰めたまま鋭い視線を俺に向けた。

「レオだ」
「えっと、知ってるけど」
「違う。レオと呼べ」
「レオ、様?」
「様はいらん」 
「じゃあ……レオ」

 そう言うと、レオはふわりと微笑んだ。

 簡単に王子様を呼び捨てしていいものかと思ったが、レオの笑顔を見ているとなにも言えなくなった。

(イケメンの微笑みの破壊力やべえ……こんな顔も出来るのかよ)

 先程までの怒った顔や、女性達と話していた時の表情とも違う柔らかい微笑みに、男の俺でもつい見惚れてしまう。

(はっ、違う! 見惚れてる場合じゃなかった!)
「えっと、レオ。お……わ、私ももう行かなくちゃいけなくて」

 つい「俺」と言いそうになるのを抑え、一先ずここを離れることを優先する。
 ここさえ乗り越えれば、きっとレオだって俺のことなんてすぐに忘れるだろう。あれだけ女性に囲まれていたんだから、綺麗な女性なんて選り取り見取りなはずだ。
 
 俺の言葉を聞いたレオは、じっとこちらを見つめながら思案しているようだった。

「……分かった。名は、何という」
「リョウ、です」

 まさか名前聞かれるとは思わず、驚きながら咄嗟に名前を言った。

「リョウ……リョウか」

 囁くように俺の名を呼ぶレオを見ていると、何故かものすごく恥ずかしくなってきて頰が熱くなるのを感じる。

「えっと、じゃあ私はもういかなきゃなので」

 恥ずかしさを紛らわせるようにそう言った俺の言葉を聞き、レオがまだ何か言おうとしていたが、俺はそれを遮るように挨拶をして足早にその場を去った。
 

(なに照れてんだ俺!! 相手は男だぞ!? あああああもう! レオがイケメンすぎるのが悪い!!)
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