4 / 31
3
しおりを挟む
さて、どう切り抜けるかについてだが––––––
とりあえず逃げようと思う。幸い王子様の後ろには怪訝な顔をしたフランさんがいる。彼が王子ならば、おそらくフランさんは執事とかだろう。
そう当たりをつけ、俺は助けてくれという願いを込めて目線を向けてみる。
俺の視線に気付いたフランさんは、こちらへ歩いて来た。
「レオ様、お時間ですので城に戻りましょう」
てっきりプロポーズを止めてくれるのかと思ったのにそっちか! まあ、俺も早くここから逃げたいからいいんだけどさ。
(さっきから、周りにいた女の人たちの目線が突き刺さっててすげえ怖いんだよ……)
俺がフランさんに感謝の視線を送っていると、レオと名乗った王子様は眉間に皺を寄せながらフランさんを見た。
「見て分からないのか、今は取り込み中だ。邪魔をするな」
そう言われたフランさんは小さくため息をつきながら再び黙ってしまう。
(助けてくれるんじゃないのかよ……)
こうなったら、自分で何とかするしかない。俺は、どうにか帰ってもらえないかと声をかけることにした。
「あの、王子様?」
恐る恐る問いかけると、王子様は眉を顰めたまま鋭い視線を俺に向けた。
「レオだ」
「えっと、知ってるけど」
「違う。レオと呼べ」
「レオ、様?」
「様はいらん」
「じゃあ……レオ」
そう言うと、レオはふわりと微笑んだ。
簡単に王子様を呼び捨てしていいものかと思ったが、レオの笑顔を見ているとなにも言えなくなった。
(イケメンの微笑みの破壊力やべえ……こんな顔も出来るのかよ)
先程までの怒った顔や、女性達と話していた時の表情とも違う柔らかい微笑みに、男の俺でもつい見惚れてしまう。
(はっ、違う! 見惚れてる場合じゃなかった!)
「えっと、レオ。お……わ、私ももう行かなくちゃいけなくて」
つい「俺」と言いそうになるのを抑え、一先ずここを離れることを優先する。
ここさえ乗り越えれば、きっとレオだって俺のことなんてすぐに忘れるだろう。あれだけ女性に囲まれていたんだから、綺麗な女性なんて選り取り見取りなはずだ。
俺の言葉を聞いたレオは、じっとこちらを見つめながら思案しているようだった。
「……分かった。名は、何という」
「リョウ、です」
まさか名前聞かれるとは思わず、驚きながら咄嗟に名前を言った。
「リョウ……リョウか」
囁くように俺の名を呼ぶレオを見ていると、何故かものすごく恥ずかしくなってきて頰が熱くなるのを感じる。
「えっと、じゃあ私はもういかなきゃなので」
恥ずかしさを紛らわせるようにそう言った俺の言葉を聞き、レオがまだ何か言おうとしていたが、俺はそれを遮るように挨拶をして足早にその場を去った。
(なに照れてんだ俺!! 相手は男だぞ!? あああああもう! レオがイケメンすぎるのが悪い!!)
とりあえず逃げようと思う。幸い王子様の後ろには怪訝な顔をしたフランさんがいる。彼が王子ならば、おそらくフランさんは執事とかだろう。
そう当たりをつけ、俺は助けてくれという願いを込めて目線を向けてみる。
俺の視線に気付いたフランさんは、こちらへ歩いて来た。
「レオ様、お時間ですので城に戻りましょう」
てっきりプロポーズを止めてくれるのかと思ったのにそっちか! まあ、俺も早くここから逃げたいからいいんだけどさ。
(さっきから、周りにいた女の人たちの目線が突き刺さっててすげえ怖いんだよ……)
俺がフランさんに感謝の視線を送っていると、レオと名乗った王子様は眉間に皺を寄せながらフランさんを見た。
「見て分からないのか、今は取り込み中だ。邪魔をするな」
そう言われたフランさんは小さくため息をつきながら再び黙ってしまう。
(助けてくれるんじゃないのかよ……)
こうなったら、自分で何とかするしかない。俺は、どうにか帰ってもらえないかと声をかけることにした。
「あの、王子様?」
恐る恐る問いかけると、王子様は眉を顰めたまま鋭い視線を俺に向けた。
「レオだ」
「えっと、知ってるけど」
「違う。レオと呼べ」
「レオ、様?」
「様はいらん」
「じゃあ……レオ」
そう言うと、レオはふわりと微笑んだ。
簡単に王子様を呼び捨てしていいものかと思ったが、レオの笑顔を見ているとなにも言えなくなった。
(イケメンの微笑みの破壊力やべえ……こんな顔も出来るのかよ)
先程までの怒った顔や、女性達と話していた時の表情とも違う柔らかい微笑みに、男の俺でもつい見惚れてしまう。
(はっ、違う! 見惚れてる場合じゃなかった!)
「えっと、レオ。お……わ、私ももう行かなくちゃいけなくて」
つい「俺」と言いそうになるのを抑え、一先ずここを離れることを優先する。
ここさえ乗り越えれば、きっとレオだって俺のことなんてすぐに忘れるだろう。あれだけ女性に囲まれていたんだから、綺麗な女性なんて選り取り見取りなはずだ。
俺の言葉を聞いたレオは、じっとこちらを見つめながら思案しているようだった。
「……分かった。名は、何という」
「リョウ、です」
まさか名前聞かれるとは思わず、驚きながら咄嗟に名前を言った。
「リョウ……リョウか」
囁くように俺の名を呼ぶレオを見ていると、何故かものすごく恥ずかしくなってきて頰が熱くなるのを感じる。
「えっと、じゃあ私はもういかなきゃなので」
恥ずかしさを紛らわせるようにそう言った俺の言葉を聞き、レオがまだ何か言おうとしていたが、俺はそれを遮るように挨拶をして足早にその場を去った。
(なに照れてんだ俺!! 相手は男だぞ!? あああああもう! レオがイケメンすぎるのが悪い!!)
24
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる