【完結】劣情を抱く夢魔

朔灯まい

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33.いざ、突入! side南

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「…いい?絶対見つからないように」
「もちろん!尾行ワクワクだ!!」
「…本当にわかってる真実ちゃん…?」

 わくわくが抑え切れないまみりんの横で、じとりとした視線を向けるにっしー。
 私達は今まさに家を出た村瀬さんの後をこっそりとついて行っている。

「…やっぱ向かってるよね…」
「うん…」

 迷いなく進む方向は私達も以前足を運んだ場所。
 この時間帯に出歩く事に慣れているのか、人通りが少ないにも関わらず歩くペースは崩れない。

「…そろそろだよね、」
「確かこぢんまりとしたテントっぽいのたってたよね?」
「そうそう…中には入れてないけど」
「ていうかさ、時間違くない?」

 噂の内容は21時とされているが、今の時刻は20時。これだと占い師に会うことはできないはず。

「もう知った仲だから、時間は関係ないとか?」
「…なるほど…特権だ…!」
「……着いた」

 予想は正しかった。
 村瀬さんが向かった場所は、やはり占い師のところだった。

「…入っていくね」
「伊織…大丈夫かな」
「…これ私達も行くべきよね?」

 尾行するまではよかったが、問題はこの後だ。
 このまま村瀬さんが出てくるまで待つか、中に入ってブサ男くんから村瀬さんを引き離すか。

「とりあえず暫く様子見てみる?」
「…うーん…。この前は確かこの辺で意識なくなったと思うんだけど、それもないし今がチャンスだと思う」
「もし村瀬さんが抵抗したらどうする?」
「あー、」

 にっしーの言葉に思わず頭を抱えた。

「まみりん、その可能性ってありそう?」
「私の知る限りだけど…今まで誰とも付き合った事ないと思う…」
「そっかー」
「洗脳パターンってことか」
「いや、言い方…まあでも…恋したら変わるもんなあ」
「恋は盲目だ」

 さすがににっしーが言う洗脳とまではいかないにしても、私達が恋路の邪魔をする厄介者という状況は考えられる。

「そうなったら素直に謝って退散しよう」
「話が拗れる前に切り上げる、わかった?みっちゃん」
「…だね」

 本人の意思に関係なく乗り込もうとしている以上、村瀬さんの気持ちが最優先事項ではある。
 だから、もし相手が村瀬さんを弄ぶブサ男くんでも村瀬さんが幸せなら私はとりあえず、一旦は!この場を引く。…うん。

「…本当に分かってるみっちゃん…?」
「みっちゃん??」
「……もしそれで村瀬さんが幸せならいいよ、でも…」

 教室で見た横顔が忘れられなかった。

「幸せなら…あんな顔しない…」
「みっちゃん…」
 
 青ざめた顔で辛そうにしているのが幸せだとは私は思わない。
 
「よし!!伊織が笑ってたら解散!泣いてたらグーパンだ!!」
「…そうだね、ここまで来たんだし…やりますか」
「うん!…終わったら四人で遊びに行こ!!」
「「うん!」」

 気付けば村瀬さんが中に入って少し時間が経っていた。
 まだ出てくる気配はなく、中で何が行われているのかも外からだと何も分からない。
 そろりと近付くも、防音効果でもあるのかはっきりと聞こえないが話している感じの音はする。

「ん?」
「えっ、なんて言ってる?」
「さすがに聞こえないなあ…」

 耳をすませても、聞こえない。

「……」
「これ以上ここにいても埒があかない。行こう」
「グーパンはいつでもいけるよ」
「…開けるよ!」

 ドクドクと鼓動が速くなるのがわかる。
 それを押さえつけるように布を持つ手に力を入れ、一呼吸おいて中へと入る。

「んっ!」 

 入ると同時に中に備え付けられている灯りに目が眩み、反射的に目を瞑った。
 二人も同じだったのかうっと唸る声がしたが、それも直ぐに慣れて、ゆっくりと目を開く。

「……え」
「い、おり…、」

 入る前は意気込んでいたまみりんも動揺していて、にっしーも動けないでいた。

「…えっ、な、んで……?」
「村瀬さん…」

 そこには目を大きく見開いてポロポロと大粒の涙を流している村瀬さんと、顔を仮面で隠した恐らく占い師であろう人物が村瀬さんを隠すように立っていた。



 
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