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28.満たされる、
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少しずつ興奮が収まってきて、そういえば瞳が青くなっていたなと、それを伝えると
「はっ!?!!何で言わなかったの!!?!」
「えっ、だっ…うわっ!?」
寝ていた体を勢いよく持ち上げられ何事もないか確認された。
外傷があるわけないのに、余程気が動転しているのか体のあちこちを触られ、まだ敏感になっているのか変な声が出た。
「あんっ、」
「…」
「な、何ともないから!!見ないで!!!」
散々見られたはずなのに、いざこうやって見られていると思うと恥ずかしくて仕方がなかった。
「いやっ、それより体は…」
「ピンピンしてるから!!着替えるから…後ろ向いてて…!!」
無理やり後ろを向かせて、私は脱ぎ散らかされた服を手に取り慌てて着替える。
心配なのかこちらを見てはいないものの、しきりに確認してくるアビリウスさんは不安で仕方がない様子。
死にそうな感覚はもちろんなく、何ならイッた余韻がまだ体に残っていると伝えたいが恥ずかしいので言わない。
「本当に何ともない?」
着替え終わると、直ぐに私の体に触れてくるアビリウスさんに思わず笑ってしまう。
「笑い事じゃないよ」
本当に心配してくれているらしく、むすっとした顔で顔を掴まれる。
確かに多少の気だるさはあるが、どうにか安心させたくてその手に自分の手を重ねた。
「生きてるよ」
「…うん」
ぐっと引き寄せられて強く抱き締められる。
「本当に何ともないから、ね」
「うん…」
少しでも落ち着けばと、頭を撫でて何ともない事を伝え続けた。
それでもアビリウスさんの中に巣食う不安を取り除く事は難しくて話題転換する事にした。
「…そういえば、お腹いっぱいになった?」
「!!!」
まさかそんな事を言われると思っていなかったのか、肩口に埋めていた顔が勢いよく上がる。
ボロボロと涙が出てることを隠そうともせずに。
「……」
「…???」
「なっ…た、」
「言われて気づいたの?」
思わず吹き出すと、自覚がなかったのか驚いてる様子でこちらを凝視している。
「そっか…えへへ…嬉しいなあ」
「…嬉しい?」
「だって、満たされたって事でしょ?」
それは私との情事に幸せを感じたと、都合のいい解釈をした。
初めて私の生気を吸った時も美味しかったと言っていたから相性的な問題はないはずと。
「満たされた…そう、だね…うん」
少しずつ実感しているのか、徐々に顔色が明るくなっていく。
これでアビリウスさんの憂いが晴れるといいな、そんな風に思っていたらガチャリと鍵が回る音が聞こえた。
「えっ、」
「?」
玄関の開く音と、お母さんのただいまという声が部屋まで届いた。
「なっ、何で?!今日…!!」
「伊織ー?…寝てるのかな?」
お母さんの呼びかけを無視して、この状況を見られる事だけは回避したいと頭をフル回転させる。
「思ったより早く終わったからケーキ買ってきたよー?」
どんどん声が近くなって、着実に部屋へと向かってきているのがわかる。
そして、
「あっ、おかえり」
「…起きてた?ケーキ買ってきたけど食べる?」
「う、ううん、明日食べるよ」
「そ?一人で大丈夫だった?」
「っ…ん、だ、ぃじょぶ」
「ん?」
「あっ、もう寝ようと思って、て!」
「じゃあ、冷蔵庫に入れておくから。おやすみ」
ばたりと部屋のドアが閉められ、足音が遠ざかっていくのがわかると大きく溜息を吐いた。
そして、ベッドの中に隠れてもらった毛玉を足蹴りした。
「何やってんの!!!」
「いだっ!」
隠れてもらったのはいいものの、それをいい事に足元でふわふわとした体を素足に擦り付けてくるものだからくすぐったくて仕方がなかった。
「バレたらどうしてたのよ!」
「その時はその時だよ」
ボフンと人の姿に戻って毛玉と時と同じように擦り寄ってくるアビリウスさん。
「それじゃあ、寝ようか」
「…え、ここで寝るの?」
さも当然のように隣で寝そべるものだから、思わずそう問うとアビリウスさんも頭に疑問符を浮かべている。
「え?ダメなの?」
お母さんがいなければそれもいいかも、と思っていたが状況が変わってしまった今、それは少し憚られる。
「ダメっていうか…」
見つかると面倒だしなあ、と思っていると上体を起こしていた私の体がベッドに引き摺り込まれた。
「んぉ?!」
「イオリちゃん」
向かい合うように引き寄せられると、
「今日だけは一緒にいたい…朝にはいなくなるから」
「……」
切なげに細められた瞳に見つめられ、私は思わずこくりと頷いていた。
「はっ!?!!何で言わなかったの!!?!」
「えっ、だっ…うわっ!?」
寝ていた体を勢いよく持ち上げられ何事もないか確認された。
外傷があるわけないのに、余程気が動転しているのか体のあちこちを触られ、まだ敏感になっているのか変な声が出た。
「あんっ、」
「…」
「な、何ともないから!!見ないで!!!」
散々見られたはずなのに、いざこうやって見られていると思うと恥ずかしくて仕方がなかった。
「いやっ、それより体は…」
「ピンピンしてるから!!着替えるから…後ろ向いてて…!!」
無理やり後ろを向かせて、私は脱ぎ散らかされた服を手に取り慌てて着替える。
心配なのかこちらを見てはいないものの、しきりに確認してくるアビリウスさんは不安で仕方がない様子。
死にそうな感覚はもちろんなく、何ならイッた余韻がまだ体に残っていると伝えたいが恥ずかしいので言わない。
「本当に何ともない?」
着替え終わると、直ぐに私の体に触れてくるアビリウスさんに思わず笑ってしまう。
「笑い事じゃないよ」
本当に心配してくれているらしく、むすっとした顔で顔を掴まれる。
確かに多少の気だるさはあるが、どうにか安心させたくてその手に自分の手を重ねた。
「生きてるよ」
「…うん」
ぐっと引き寄せられて強く抱き締められる。
「本当に何ともないから、ね」
「うん…」
少しでも落ち着けばと、頭を撫でて何ともない事を伝え続けた。
それでもアビリウスさんの中に巣食う不安を取り除く事は難しくて話題転換する事にした。
「…そういえば、お腹いっぱいになった?」
「!!!」
まさかそんな事を言われると思っていなかったのか、肩口に埋めていた顔が勢いよく上がる。
ボロボロと涙が出てることを隠そうともせずに。
「……」
「…???」
「なっ…た、」
「言われて気づいたの?」
思わず吹き出すと、自覚がなかったのか驚いてる様子でこちらを凝視している。
「そっか…えへへ…嬉しいなあ」
「…嬉しい?」
「だって、満たされたって事でしょ?」
それは私との情事に幸せを感じたと、都合のいい解釈をした。
初めて私の生気を吸った時も美味しかったと言っていたから相性的な問題はないはずと。
「満たされた…そう、だね…うん」
少しずつ実感しているのか、徐々に顔色が明るくなっていく。
これでアビリウスさんの憂いが晴れるといいな、そんな風に思っていたらガチャリと鍵が回る音が聞こえた。
「えっ、」
「?」
玄関の開く音と、お母さんのただいまという声が部屋まで届いた。
「なっ、何で?!今日…!!」
「伊織ー?…寝てるのかな?」
お母さんの呼びかけを無視して、この状況を見られる事だけは回避したいと頭をフル回転させる。
「思ったより早く終わったからケーキ買ってきたよー?」
どんどん声が近くなって、着実に部屋へと向かってきているのがわかる。
そして、
「あっ、おかえり」
「…起きてた?ケーキ買ってきたけど食べる?」
「う、ううん、明日食べるよ」
「そ?一人で大丈夫だった?」
「っ…ん、だ、ぃじょぶ」
「ん?」
「あっ、もう寝ようと思って、て!」
「じゃあ、冷蔵庫に入れておくから。おやすみ」
ばたりと部屋のドアが閉められ、足音が遠ざかっていくのがわかると大きく溜息を吐いた。
そして、ベッドの中に隠れてもらった毛玉を足蹴りした。
「何やってんの!!!」
「いだっ!」
隠れてもらったのはいいものの、それをいい事に足元でふわふわとした体を素足に擦り付けてくるものだからくすぐったくて仕方がなかった。
「バレたらどうしてたのよ!」
「その時はその時だよ」
ボフンと人の姿に戻って毛玉と時と同じように擦り寄ってくるアビリウスさん。
「それじゃあ、寝ようか」
「…え、ここで寝るの?」
さも当然のように隣で寝そべるものだから、思わずそう問うとアビリウスさんも頭に疑問符を浮かべている。
「え?ダメなの?」
お母さんがいなければそれもいいかも、と思っていたが状況が変わってしまった今、それは少し憚られる。
「ダメっていうか…」
見つかると面倒だしなあ、と思っていると上体を起こしていた私の体がベッドに引き摺り込まれた。
「んぉ?!」
「イオリちゃん」
向かい合うように引き寄せられると、
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