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22.夜明けの月②
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ひと月ほど経った頃、久々にキールと会った。
この前会った時とは打って変わって顔色が良く、食べれたんだなとみてわかるほどだった。
一方、僕はと言えば…。
「キール久しぶりだね」
「聞いてよ!あれからお前と別れた後にさ俺好みのお姉さん見つけてっ……アビリウス…お前もしかして食べてないの?」
意気揚々としていた顔がさっと青ざめ、こちらを見るキールに僕はゆっくりと頷いた。
「そんなとこ」
「そんなとこって…そのままじゃお前死ぬよ?!」
「このまま食べなかったら、本当に死ぬのかな?」
「はっ?!何言ってんの?!」
そんな風に言うと思っていなかったのか、キールはとても驚いた様子だった。
「この前キールと別れた後さ、人のご飯を食べる機会があったんだよ」
あの日美月さんと出会った日のことを思い返す。
「周りにいた人たちみんな美味しそうに食べてたんだよ」
食べてるものは違えど同じ食事をしている筈なのに、僕とは違って皆どこか幸せそうに見えた。
「僕はただ空腹を満たす為に食べてるだけで…。それってキールが言った通りだなって」
ただ生きてるだけ。その言葉が頭の中にずっと残っている。
「はっ?!俺が言ったから…?!」
「あ、違うよ、キールを責めてるとかじゃなくて…んー、と…」
キールの言葉は、ただ漠然としていた死について考えるきっかけをくれたに過ぎない。
死が怖いとも悪い事とも思わず、このまま生きていてもと思うと、死ぬのも有りだと選択肢として出てきた、ただそれだけだった。
悲観しているわけでもない、そのままそう言えばよかったのだが、それを言うより早くキールが動く。
「俺がお前好みの女見つけてくるから、それまで死ぬなよ!!!」
「えっ、あ…行っちゃった」
どうしたらその考えに辿り着くのか、キールは僕の元を嵐のように去っていった。
「…好みの女って…」
「おっとー?」
キールがいなくなった方向とは反対側から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ご飯の次は女の子?」
「…美月さん」
「ここにきたら会えるかなって思ってきたら…本当にいたね」
ひと月ぶりに会った美月さんは前に会った時よりも心なしか覇気がないように感じた。
「僕に会いたかったの?」
「そう、って言ったら嬉しい?」
蠱惑的な眼差しをこちらに向けている美月さんはゆっくりと距離を縮めてくる。
僕が何も仕掛けなくても釣れた女の子。本来ならここで生気を吸ってしまうのだが、何故だかそうする気になれない。
「嬉しいけど、一人で出歩く時間じゃないよ?…家族が心配してるんじゃない?」
「…家族、」
「?」
「…帰りたくないって言ったらアビーさんは困る?」
縋るようにこちらを見る美月さんに僕は優しく頭を撫でてあげた。
「困らないよ」
「ほんと!!?じゃあ、行きたいところがあるんだけど…!!」
「…うん、いいよ行こう」
直ぐにでも食べれそうな相手がいるのに、それをしない自分の考えがわからず、僕は彼女の提案を受け入れることにした。
この前会った時とは打って変わって顔色が良く、食べれたんだなとみてわかるほどだった。
一方、僕はと言えば…。
「キール久しぶりだね」
「聞いてよ!あれからお前と別れた後にさ俺好みのお姉さん見つけてっ……アビリウス…お前もしかして食べてないの?」
意気揚々としていた顔がさっと青ざめ、こちらを見るキールに僕はゆっくりと頷いた。
「そんなとこ」
「そんなとこって…そのままじゃお前死ぬよ?!」
「このまま食べなかったら、本当に死ぬのかな?」
「はっ?!何言ってんの?!」
そんな風に言うと思っていなかったのか、キールはとても驚いた様子だった。
「この前キールと別れた後さ、人のご飯を食べる機会があったんだよ」
あの日美月さんと出会った日のことを思い返す。
「周りにいた人たちみんな美味しそうに食べてたんだよ」
食べてるものは違えど同じ食事をしている筈なのに、僕とは違って皆どこか幸せそうに見えた。
「僕はただ空腹を満たす為に食べてるだけで…。それってキールが言った通りだなって」
ただ生きてるだけ。その言葉が頭の中にずっと残っている。
「はっ?!俺が言ったから…?!」
「あ、違うよ、キールを責めてるとかじゃなくて…んー、と…」
キールの言葉は、ただ漠然としていた死について考えるきっかけをくれたに過ぎない。
死が怖いとも悪い事とも思わず、このまま生きていてもと思うと、死ぬのも有りだと選択肢として出てきた、ただそれだけだった。
悲観しているわけでもない、そのままそう言えばよかったのだが、それを言うより早くキールが動く。
「俺がお前好みの女見つけてくるから、それまで死ぬなよ!!!」
「えっ、あ…行っちゃった」
どうしたらその考えに辿り着くのか、キールは僕の元を嵐のように去っていった。
「…好みの女って…」
「おっとー?」
キールがいなくなった方向とは反対側から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ご飯の次は女の子?」
「…美月さん」
「ここにきたら会えるかなって思ってきたら…本当にいたね」
ひと月ぶりに会った美月さんは前に会った時よりも心なしか覇気がないように感じた。
「僕に会いたかったの?」
「そう、って言ったら嬉しい?」
蠱惑的な眼差しをこちらに向けている美月さんはゆっくりと距離を縮めてくる。
僕が何も仕掛けなくても釣れた女の子。本来ならここで生気を吸ってしまうのだが、何故だかそうする気になれない。
「嬉しいけど、一人で出歩く時間じゃないよ?…家族が心配してるんじゃない?」
「…家族、」
「?」
「…帰りたくないって言ったらアビーさんは困る?」
縋るようにこちらを見る美月さんに僕は優しく頭を撫でてあげた。
「困らないよ」
「ほんと!!?じゃあ、行きたいところがあるんだけど…!!」
「…うん、いいよ行こう」
直ぐにでも食べれそうな相手がいるのに、それをしない自分の考えがわからず、僕は彼女の提案を受け入れることにした。
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