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19.お互い様
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未だ状況が飲み込めず、アビリウスさんを凝視する事しかできなかった。
「…そんなに見つめられると照れちゃうなあ」
「なっ、ちが…!」
そう言われ、慌てて目線を逸らそうとすれば彼の大きな手が私の頬を包み込んで逸らす事を許さなかった。
「僕の為に泣いてくれたの?」
「……っ!!」
「…会えないって…思ったから?」
どこか確信に満ちた表情で問いかけてくるアビリウスさんはとても嬉しそうに笑っている。
「……」
「もしかして…照れてる?」
最後に見た時とは違い、私が知っているアビリウスさんの姿にどこかほっとした自分がいた。
「何考えてるの?」
「えっ、と…」
改めて今の状況を整理すると、相談相手がまさかの本人でいろいろと筒抜けなわけだったということなのだが。
「今直ぐ消えていなくなりたい」
「…っふは!!」
堪える気もないのか、けらけらと笑い出したアビリウスさん。
私にとっては笑い事ではないのですが?そう思っていたらそれに気付いたのかぴたりと笑い声が止まる。
「…今度は何」
「ありがとう、会いにきてくれて」
そう言って額にそっと唇を落としたアビリウスさんは本当に嬉しそうに微笑んでいた。
そこで私はようやく一番大事な事を伝えてないことに気付き自分で自分の頭を殴りたくなった。
「…わ、私!!あや…「謝らないで」
私の言葉を遮るように口に指を当てそう言った。
「ちゃんと説明もせず逃げた僕に非があるから」
あくまで自分が悪いと言うアビリウスさんに、私はそれを否定した。
「ううん…私も人伝とはいえ、結果的にアビリウスさんの過去…聞いちゃったから」
「それこそ謝る理由にはならないよ…だって僕がキールに頼んだからね…それに、」
言葉を詰まらせ、言い淀むアビリウスさん。
「?」
「…」
言いたくない事を無理矢理言わせる趣味は持ち合わせていないので、話題を変えようとしたら、
「イオリちゃんには知ってほしい…僕の事」
「…うん」
真っ直ぐに見つめられ、アビリウスさんの決心に私は深く頷いた。
「…ああ、でも聞きたくないならそう言って?無理に聞かせるつもりはないから」
「何で突然遠慮するの…」
「あまり気持ちのいい話でもないからね」
困ったように笑うアビリウスさん。
そんな顔をしてほしくなくて、私は彼の胸にどんっと額をぶつけた。
「んっ?!」
「…知りたい、アビリウスさんのこと。だから勝手にいなくなるのだけはやめて」
「…うん」
私の思いが少しは伝わったのか、頭をぽんぽんと撫でられ、そのまま抱きしめられる。
「…僕の瞳の話をキールから聞いた時、僕を庇ってくれたよね」
「あっ、」
「…ありがとう」
体制はそのままでそう話すアビリウスさんの表情は見えなかったが声色は嬉しそうだった。
「でも…私それ以上何も言えなかった…」
「そう思ってくれてる気持ちが本当に嬉しかったんだよ」
「…そっか」
ぐっと腰に回った手に力が入ってより密着する。気付けば自然と頬が緩んでいた。
「……ん、?」
だがそこでふと疑問に思う、あの場にアビリウスさんはいなかったはず、と。
「あの、アビリウスさん」
「ん?」
「…私とキール君の会話…いつから聞いてたの?」
「最初か…あ」
「最初から…ね、」
「あ!えっと、最初からというか、いろいろ事が終わってからだから…!」
「…」
恥ずかしさから自分の顔が急激に熱を帯びていくのがわかる。
つまりアビリウスさんは見ていたのだ、私がキール君の手によって快楽に溺れていく様を。
「…イオリちゃん」
「……」
見られていた事による怒りよりも恥ずかしさが勝ち、何も言えずただ下を向き押し黙っていればアビリウスさんは気にせず続ける。
「自分でキールに頼んでおきながら後悔したんだ」
「…」
「キールにいいようにされているイオリちゃんを見てどうにかなりそうだった」
くいっと顎を持ち上げられ再び視線が交わる。
彼の眉間には皺が寄り、見るからに不機嫌そうだった。
「…勝手すぎるよ」
「そうだね、ごめん」
「んっ…」
謝る気があるのかないのか、キール君との行為を上書きしたいのか、何も言わずに唇を奪われた。
啄むように何度もキスをしてくるアビリウスさんをすんなりと受け入れている自分に少しの驚きはあったが、それ以上に彼からの私への気持ちが伝わってきてそれがどうしようもなく心地良くて堪らなかった。
「…そんなに見つめられると照れちゃうなあ」
「なっ、ちが…!」
そう言われ、慌てて目線を逸らそうとすれば彼の大きな手が私の頬を包み込んで逸らす事を許さなかった。
「僕の為に泣いてくれたの?」
「……っ!!」
「…会えないって…思ったから?」
どこか確信に満ちた表情で問いかけてくるアビリウスさんはとても嬉しそうに笑っている。
「……」
「もしかして…照れてる?」
最後に見た時とは違い、私が知っているアビリウスさんの姿にどこかほっとした自分がいた。
「何考えてるの?」
「えっ、と…」
改めて今の状況を整理すると、相談相手がまさかの本人でいろいろと筒抜けなわけだったということなのだが。
「今直ぐ消えていなくなりたい」
「…っふは!!」
堪える気もないのか、けらけらと笑い出したアビリウスさん。
私にとっては笑い事ではないのですが?そう思っていたらそれに気付いたのかぴたりと笑い声が止まる。
「…今度は何」
「ありがとう、会いにきてくれて」
そう言って額にそっと唇を落としたアビリウスさんは本当に嬉しそうに微笑んでいた。
そこで私はようやく一番大事な事を伝えてないことに気付き自分で自分の頭を殴りたくなった。
「…わ、私!!あや…「謝らないで」
私の言葉を遮るように口に指を当てそう言った。
「ちゃんと説明もせず逃げた僕に非があるから」
あくまで自分が悪いと言うアビリウスさんに、私はそれを否定した。
「ううん…私も人伝とはいえ、結果的にアビリウスさんの過去…聞いちゃったから」
「それこそ謝る理由にはならないよ…だって僕がキールに頼んだからね…それに、」
言葉を詰まらせ、言い淀むアビリウスさん。
「?」
「…」
言いたくない事を無理矢理言わせる趣味は持ち合わせていないので、話題を変えようとしたら、
「イオリちゃんには知ってほしい…僕の事」
「…うん」
真っ直ぐに見つめられ、アビリウスさんの決心に私は深く頷いた。
「…ああ、でも聞きたくないならそう言って?無理に聞かせるつもりはないから」
「何で突然遠慮するの…」
「あまり気持ちのいい話でもないからね」
困ったように笑うアビリウスさん。
そんな顔をしてほしくなくて、私は彼の胸にどんっと額をぶつけた。
「んっ?!」
「…知りたい、アビリウスさんのこと。だから勝手にいなくなるのだけはやめて」
「…うん」
私の思いが少しは伝わったのか、頭をぽんぽんと撫でられ、そのまま抱きしめられる。
「…僕の瞳の話をキールから聞いた時、僕を庇ってくれたよね」
「あっ、」
「…ありがとう」
体制はそのままでそう話すアビリウスさんの表情は見えなかったが声色は嬉しそうだった。
「でも…私それ以上何も言えなかった…」
「そう思ってくれてる気持ちが本当に嬉しかったんだよ」
「…そっか」
ぐっと腰に回った手に力が入ってより密着する。気付けば自然と頬が緩んでいた。
「……ん、?」
だがそこでふと疑問に思う、あの場にアビリウスさんはいなかったはず、と。
「あの、アビリウスさん」
「ん?」
「…私とキール君の会話…いつから聞いてたの?」
「最初か…あ」
「最初から…ね、」
「あ!えっと、最初からというか、いろいろ事が終わってからだから…!」
「…」
恥ずかしさから自分の顔が急激に熱を帯びていくのがわかる。
つまりアビリウスさんは見ていたのだ、私がキール君の手によって快楽に溺れていく様を。
「…イオリちゃん」
「……」
見られていた事による怒りよりも恥ずかしさが勝ち、何も言えずただ下を向き押し黙っていればアビリウスさんは気にせず続ける。
「自分でキールに頼んでおきながら後悔したんだ」
「…」
「キールにいいようにされているイオリちゃんを見てどうにかなりそうだった」
くいっと顎を持ち上げられ再び視線が交わる。
彼の眉間には皺が寄り、見るからに不機嫌そうだった。
「…勝手すぎるよ」
「そうだね、ごめん」
「んっ…」
謝る気があるのかないのか、キール君との行為を上書きしたいのか、何も言わずに唇を奪われた。
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