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10.代償には快楽を
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ようやく涙が止まったところで、話を再開する。
「さっきみたいなのはもうやめてよね」
「…善処するよ」
「そこはしないって言って欲しいんですけど…」
そういう性分なのか正確なのか…、これ以上言っても埒があかないので、諦める事にした。
「ていうか命の恩人ってどういうこと?」
「言葉のままだよ、あの時の僕は本当に死にかけてたんだ」
「アイスのおかげ?」
「…それもあるんだけど、それよりもイオリちゃんが近付いてくれたことで君の影に入れたからだね」
またしても何か問題発言しませんでしたか?この人。
「影?」
「あ、もちろん夜になったら出て行ったよ」
「……」
いろいろツッコミどころ満載なのだが、話が進まなくなりそうなのでここはぐっと堪えよう。
「今もこうして生きていられるのはイオリちゃんのおかげなんだよ」
本人はその時のことが余程嬉しかったのか、柔らかな笑みを浮かべている。
「んん……じゃ、じゃあ占い師してたのはその為なの?」
「そう!だからイオリちゃんが来てくれた時は運命を感じたなあ」
「……?気づいてたの?」
「それはもう、あの時……あっ」
思わず聞き返せば先程までの表情からは一変、何だかあわあわとしている。
「あの時…?」
「あ、あの時僕の占いがそう予言したのさ!!」
墓穴掘ったね…?相変わらず嘘が下手だ。
我慢できずにじとりと目を細めて無言で圧をかける。するとそれに観念したのか小さく何かを発した。
「……った、…ぃき…した」
「ん???」
あまりにか細い声で言うものだから、思わず耳を口に近づける。
「……触った時に生気を少し吸って…気付きました」
「はっ!!?!」
「…昔と一緒でとっても美味しかったよ」
「?!!!?」
囁くように言われたその内容に落ち着いていた熱がぶり返す。
慌てて体を離し、頭の中で整理しようとするが私の頭は爆発寸前だ。
「ちょ、ちょっと待って!!生気って何?!それに昔とって…!!…はぁ?!!?」
「まあまあ…、これもちゃんと説明したくて夜にしたんだよね」
私を宥めながらそう呑気に話すアビリウスさん。
こんなに慌てている私の方がおかしいの?!
「イオリちゃん昨日の事覚えてる?」
「はっ?…昨日のこと?」
「……ほら、僕たち気持ちいいことしたでしょ?」
「!!!!いっ、言い方!!!」
舌舐めずりをして、無駄に色気を出してくるアビリウスさんを一喝した。
「あ、あれが何?」
「僕たち夢魔は人の生気を吸って生きている。その代わり、人には快楽を与えるんだ」
「……快楽」
抗うことの出来なかったあの強烈な気持ち良さを思い出したからなのか下腹部が少し疼いた気がした。
「そう…そして生気っていうのは人によって味が違っていてね、イオリちゃんの生気はとても美味しいんだ」
何故先程嘘をついたのかと思うほど堂々と話すアビリウスさんのその表情は恍惚としており、どきりとする。
「あんなに美味しいと思ったのはあの時が初めてでさ…それから他のを食べても味気がなくて」
「…食べるって…」
「僕たちにとって生気を吸う事は食事をしている事に近いからね」
さらりととんでもない発言を連発している事を自覚していないんだろうなと軽蔑の眼差しを向けるが本人は全く気にしていないようだ。
「影に入った時に、少し生気を吸ったことは今でも鮮明に覚えてるよ」
「……」
「そして今、その美味しさがさらに増してるときたら、さ…」
「……」
「我慢なんてできるわけがないよね」
「!!!」
顎を掴まれ、視線を逸らすことができない。
掴んでいる指の力は全然強くないのに振り解けない自分がいた。
「それにあの時は手首からだったから、実際あそこまで感じないはずなんだよね」
「…えっ」
「昔もそうだけど、ちゃんとした吸い方はしてないから、どうなるんだろう」
逃げないと。頭ではわかっているのに体は全く言うことを聞かず、ただ目の前のアビリウスさんを見つめることしかできない。
「…怯えてるイオリちゃんも可愛いなあ…大丈夫、痛くないのは知ってるでしょ?」
「…っ」
「本来はこうやって、生気は吸うんだよ」
視界がアビリウスさんでいっぱいになった。
「さっきみたいなのはもうやめてよね」
「…善処するよ」
「そこはしないって言って欲しいんですけど…」
そういう性分なのか正確なのか…、これ以上言っても埒があかないので、諦める事にした。
「ていうか命の恩人ってどういうこと?」
「言葉のままだよ、あの時の僕は本当に死にかけてたんだ」
「アイスのおかげ?」
「…それもあるんだけど、それよりもイオリちゃんが近付いてくれたことで君の影に入れたからだね」
またしても何か問題発言しませんでしたか?この人。
「影?」
「あ、もちろん夜になったら出て行ったよ」
「……」
いろいろツッコミどころ満載なのだが、話が進まなくなりそうなのでここはぐっと堪えよう。
「今もこうして生きていられるのはイオリちゃんのおかげなんだよ」
本人はその時のことが余程嬉しかったのか、柔らかな笑みを浮かべている。
「んん……じゃ、じゃあ占い師してたのはその為なの?」
「そう!だからイオリちゃんが来てくれた時は運命を感じたなあ」
「……?気づいてたの?」
「それはもう、あの時……あっ」
思わず聞き返せば先程までの表情からは一変、何だかあわあわとしている。
「あの時…?」
「あ、あの時僕の占いがそう予言したのさ!!」
墓穴掘ったね…?相変わらず嘘が下手だ。
我慢できずにじとりと目を細めて無言で圧をかける。するとそれに観念したのか小さく何かを発した。
「……った、…ぃき…した」
「ん???」
あまりにか細い声で言うものだから、思わず耳を口に近づける。
「……触った時に生気を少し吸って…気付きました」
「はっ!!?!」
「…昔と一緒でとっても美味しかったよ」
「?!!!?」
囁くように言われたその内容に落ち着いていた熱がぶり返す。
慌てて体を離し、頭の中で整理しようとするが私の頭は爆発寸前だ。
「ちょ、ちょっと待って!!生気って何?!それに昔とって…!!…はぁ?!!?」
「まあまあ…、これもちゃんと説明したくて夜にしたんだよね」
私を宥めながらそう呑気に話すアビリウスさん。
こんなに慌てている私の方がおかしいの?!
「イオリちゃん昨日の事覚えてる?」
「はっ?…昨日のこと?」
「……ほら、僕たち気持ちいいことしたでしょ?」
「!!!!いっ、言い方!!!」
舌舐めずりをして、無駄に色気を出してくるアビリウスさんを一喝した。
「あ、あれが何?」
「僕たち夢魔は人の生気を吸って生きている。その代わり、人には快楽を与えるんだ」
「……快楽」
抗うことの出来なかったあの強烈な気持ち良さを思い出したからなのか下腹部が少し疼いた気がした。
「そう…そして生気っていうのは人によって味が違っていてね、イオリちゃんの生気はとても美味しいんだ」
何故先程嘘をついたのかと思うほど堂々と話すアビリウスさんのその表情は恍惚としており、どきりとする。
「あんなに美味しいと思ったのはあの時が初めてでさ…それから他のを食べても味気がなくて」
「…食べるって…」
「僕たちにとって生気を吸う事は食事をしている事に近いからね」
さらりととんでもない発言を連発している事を自覚していないんだろうなと軽蔑の眼差しを向けるが本人は全く気にしていないようだ。
「影に入った時に、少し生気を吸ったことは今でも鮮明に覚えてるよ」
「……」
「そして今、その美味しさがさらに増してるときたら、さ…」
「……」
「我慢なんてできるわけがないよね」
「!!!」
顎を掴まれ、視線を逸らすことができない。
掴んでいる指の力は全然強くないのに振り解けない自分がいた。
「それにあの時は手首からだったから、実際あそこまで感じないはずなんだよね」
「…えっ」
「昔もそうだけど、ちゃんとした吸い方はしてないから、どうなるんだろう」
逃げないと。頭ではわかっているのに体は全く言うことを聞かず、ただ目の前のアビリウスさんを見つめることしかできない。
「…怯えてるイオリちゃんも可愛いなあ…大丈夫、痛くないのは知ってるでしょ?」
「…っ」
「本来はこうやって、生気は吸うんだよ」
視界がアビリウスさんでいっぱいになった。
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