【完結】劣情を抱く夢魔

朔灯まい

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6.抗えない快楽※

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「何で来ちゃったんだか…」
「僕に会いたくなったから、とか?」

 にこりとこちらに微笑む占い師の彼は、私が来た時にはすでに仮面を外しており素顔を晒している。

「そういえば、お友達は目が覚めた?」
「おかげさまで」
「もー、そんなツンツンしないでよ」
「……」

 迷惑な客だな、と自分で思った。来たかと思えば終始イラつかせる態度をとっているのは自覚している。
 相手からすればこいつ何しにきたんだ、と思われても仕方がない態度をしている。
 それなのに、彼は笑みを浮かべたままこちらを見つめてくるだけ。
 その視線に耐えきれず思わず下を向いてしまった。

「……いや、でもそもそもこうなったのはこいつのせいだし…」
「ん?」
「…でも条件を守らなかった真実達にも非がある?…現に私は被害被ってないし…」
「何?僕にも聞かせてよ」
「え?…!!!?」

 口に出しているつもりはなかったけど、どうも口から出ていたらしく、顔を上げると端正な顔立ちが目と鼻の先にあった。

「?!!ち、近い!!」
「おっと…ほら危ないよ」
「誰のせいで…!」
  
 椅子ごと仰け反ってひっくり返りそうになったところ、素早い動きで手首を引っ張られてどうにか事なきを得た。

「イオリちゃん面白くてつい…」
「失礼な!」
「へへ」
「…手、離して」
「ええ…どうしようかなあ…」
「変態」

 冷めた目で見ても、なかなか離してくれる様子はなく、むしろ握る力が強くなってきている気がする。

「ちょ、ほんと、離して…!」
「…んー、もう少ししたら気持ちよくなるよ」
「は?!あんた何いっ……?!」

 掴まれた手首から急激な熱を感じ、それが一気に体中を駆け巡るのがわかった。
 そしてそれが全身に回ったと思えば何とも言えない気怠さが襲い体の力が抜けた。

「っはぁ…はぁ…あ、んた…なに…した、の」
「どう?気持ちいい?」

 質問には答えずこちらの反応を楽しんでいる様子。
 その間にも私の体は、何かが巡っているのか今度は徐々に気怠さから快楽へと変わっていく。

「あぁ…でもそうか…やっぱりイオリちゃんだったんだね」
「はっ、ぁ??」

 耳元で息を吹きかけるように囁かれて、体中に電気が走ったかのようなビリビリとでも気持ちいい感覚に脳がおかしくなりそう。
 
「今確信したよ、やっと会えた」 
「はぁ…ぁっ…」
「あー、興奮して少し流しすぎちゃったね」
「んぃっ…ぁん!?」

 ただただ襲いくる快楽の波に抗えず、身悶えしている私の耳には何の言葉も入ってきていなかった。
 
「んん…やっぱりイオリちゃんの生気は極上だなぁ…ふぅ…」
「あっ…んっ、もう、…む、り…限界…」
「これは我慢できそうにない、なぁ…」
「…ぁあ!?!」
 
 かぷっと耳たぶを甘噛みされ、その刺激に私は体中が痙攣した。
 今まで感じたことのない快楽に体が震えて、目の前がチカチカしている。

「…っはぁ…はぁ…」
「…ふぅ…どう?気持ちよかった…?」
「…っぁ…ぇ…?」

 ぼーっとしていた意識が徐々に回復して、自分の口からだらしなく涎が垂れている事に気づいた。

「…っ!わ、私!!?!」

 自分の身に起きた事に困惑と羞恥で頭がおかしくなりそうだ。
 私は目の前の二回しか顔を見合わせてない男の前でとんでもない痴態を晒している。

「…、し、死にたい…」
「何で?可愛かったよ」
「?!!?!!!」

 頭の中は大パニックを起こしてると言うのに、目の前の男は呑気にも頬杖をついてこちらを見ている。

「み、!見ないで!!」

 これ以上の羞恥に耐えられず、早くこの場を立ち去りたいのに足がガクガクと子鹿のように震えて立ち上がることすらままならない。
 せめてもの抵抗で机に突っ伏した。

「初めては誰でも怖いよね、でも大丈夫だよ。次はもっと気持ちよくなるから」
「次?!!?」

 まさか次があります、なんて言われるとは思っておらず突っ伏した顔を直ぐに上げる事になった。

「うん、だって気持ちよかったでしょ?僕たち相性良いみたいだし」
「……」

 もう何を言って良いのかわからず、空いた口が塞がらなかった。

「あ、そうだ自己紹介がまだだったね、僕はアビリウス、気軽にアビくんと呼んでね」
「ふざ、け…」

 その言葉を最後に私の意識はそこで途絶えた。






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