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7.学校
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ピピピピとアラームが鳴り、私は目が覚めた。
恐らく私を運んでくれたであろうオーくんの姿はどこにもなく、言いようのない不安に襲われる。
前までは一人が当たり前だったのにな…。
「オーくん…」
「おはようございます、天音」
「ぎゃっ!?!」
まさか返事が来るとは思っていなかった私は寝起きだと言うのに、なかなかの声量が出た。
「元気そうで何よりです…膝は痛みませんか?」
「……おかげさまで」
昨日の出来事を思い出してカッと頬が熱くなる。
私にとってあれは刺激が強すぎる事この上ない事だったが、なんて事なく聞いてくるあたりオーくんにとって、些末な事なんだろう。
私一人慌てて何だか悔しいな。
「何ふくれてるんですか、学校行くんでしょう?」
「あっ…」
オーくんは私のバッグを持っていた。ドクンっと心臓が音を鳴らす。
「大丈夫、私を信じてください」
「…うん」
私の不安などお見通しだと言うように、そう言ったオーくん。
不思議な力を持ったオーくんがそう言うのだ、信じてみよう。
「シャワー浴びてくる」
昨日結局入らずに寝てしまったので、シャワーを浴び軽めの朝ごはんを食べ、学校へ行く準備をする。
「よし、準備できた。…そういえばオーくん、キーホルダーになれるの?」
「慣れますよ」
「じゃあ…」
「元よりそのつもりです…貴女と共に」
私が最後まで言うより早くオーくんは見慣れたキーホルダーの形になって、私のバッグに付いていた。
「…あれ」
確かに破れていたはずの足は、まるで最初から破れてなかったかのように綺麗で、もちろん目もしっかり二つ付いている。
「オーくん自分で治したの?」
「ええ。自己治癒能力であっという間に完治です」
完治という表現が正しいかはさておき、あのボロボロの姿を見ずに済んだ事にホッとしていた。
家を出て学校へ向かう。
「…」
学校へ向かう足取りは重く、嫌なことばかりが頭をよぎる。
(ダメダメ、私にはオーくんもいるんだから…!)
心の中で自分に喝を入れ、私は校門をくぐり抜け自分の教室へと向かう。
「…ふぅ……」
扉を開ける前に一呼吸置き、心を落ち着かせる。
ガラリと扉を開け、教室に入ると直ぐにあいつと目が合った。
あいつは私に気付くと、一緒に話していた男子から離れこちらに向かってくる。
「…はっ」
動悸がする。また私を陥れようと何か企んでいるに違いない…!
「…天音落ち着いて」
「…!!!」
とても小さな声。でも確実に聞こえたオーくんの声に早る私の鼓動が徐々に落ち着いていく。
「金城」
「……っ」
いつもなら、この後こいつの罵りが始まって周りもそれに同調し出す。
やっぱり何も変わらないじゃ…
「その、ごめん!!」
「えっ」
「許してもらえるとは思ってない、ただ今までの事謝らせてくれ…!!」
「…」
深く私に頭を下げているこいつは本当に私をイジめていた奴と同じなの?
あまりに突然の謝罪は私に動揺を与え、それを見ていた同じクラスの子たちもざわついている。
「あの、金城さん…」
「あっ」
未だ頭を下げ続けるあいつの隣にきて、こちらを見てくるのは、あの日イジめられてる私の姿を見て笑っていた女子達。
「ごめんなさい…」
「…ごめん」
「…ごめんなさい!」
私をいじめてきた人たちからの一斉謝罪。ただ傍観していたクラスの子達も、それを罪と思ってるのか私たちの方をじっと見ている。
「あの、」
こんなに注目を浴びることなんてなかったから少し声が上擦ってしまった。
「許したくは、ないです…とても…辛かったから…」
本心だった。
私にとってあの日々は地獄でしかなく、到底許せるはずもなかった…でも。
「でも…このまま過ごすのも…嫌だから…」
これはきっと変わるチャンスだと思う。それを与えてくれたオーくんの為にも、私も一歩踏み出したい。
「もう一度…やり直したいです…」
「!!!」
直ぐに歩み寄る事は出来ないかもしれないけど、ここを起点に私の学校生活がいいものに変わっていくといいな。
「ありがと、オーくん」
「……」
返事はなかったけど、きっと優しく見守ってくれているんだろうなと想像してキーホルダーの頭を撫でた。
恐らく私を運んでくれたであろうオーくんの姿はどこにもなく、言いようのない不安に襲われる。
前までは一人が当たり前だったのにな…。
「オーくん…」
「おはようございます、天音」
「ぎゃっ!?!」
まさか返事が来るとは思っていなかった私は寝起きだと言うのに、なかなかの声量が出た。
「元気そうで何よりです…膝は痛みませんか?」
「……おかげさまで」
昨日の出来事を思い出してカッと頬が熱くなる。
私にとってあれは刺激が強すぎる事この上ない事だったが、なんて事なく聞いてくるあたりオーくんにとって、些末な事なんだろう。
私一人慌てて何だか悔しいな。
「何ふくれてるんですか、学校行くんでしょう?」
「あっ…」
オーくんは私のバッグを持っていた。ドクンっと心臓が音を鳴らす。
「大丈夫、私を信じてください」
「…うん」
私の不安などお見通しだと言うように、そう言ったオーくん。
不思議な力を持ったオーくんがそう言うのだ、信じてみよう。
「シャワー浴びてくる」
昨日結局入らずに寝てしまったので、シャワーを浴び軽めの朝ごはんを食べ、学校へ行く準備をする。
「よし、準備できた。…そういえばオーくん、キーホルダーになれるの?」
「慣れますよ」
「じゃあ…」
「元よりそのつもりです…貴女と共に」
私が最後まで言うより早くオーくんは見慣れたキーホルダーの形になって、私のバッグに付いていた。
「…あれ」
確かに破れていたはずの足は、まるで最初から破れてなかったかのように綺麗で、もちろん目もしっかり二つ付いている。
「オーくん自分で治したの?」
「ええ。自己治癒能力であっという間に完治です」
完治という表現が正しいかはさておき、あのボロボロの姿を見ずに済んだ事にホッとしていた。
家を出て学校へ向かう。
「…」
学校へ向かう足取りは重く、嫌なことばかりが頭をよぎる。
(ダメダメ、私にはオーくんもいるんだから…!)
心の中で自分に喝を入れ、私は校門をくぐり抜け自分の教室へと向かう。
「…ふぅ……」
扉を開ける前に一呼吸置き、心を落ち着かせる。
ガラリと扉を開け、教室に入ると直ぐにあいつと目が合った。
あいつは私に気付くと、一緒に話していた男子から離れこちらに向かってくる。
「…はっ」
動悸がする。また私を陥れようと何か企んでいるに違いない…!
「…天音落ち着いて」
「…!!!」
とても小さな声。でも確実に聞こえたオーくんの声に早る私の鼓動が徐々に落ち着いていく。
「金城」
「……っ」
いつもなら、この後こいつの罵りが始まって周りもそれに同調し出す。
やっぱり何も変わらないじゃ…
「その、ごめん!!」
「えっ」
「許してもらえるとは思ってない、ただ今までの事謝らせてくれ…!!」
「…」
深く私に頭を下げているこいつは本当に私をイジめていた奴と同じなの?
あまりに突然の謝罪は私に動揺を与え、それを見ていた同じクラスの子たちもざわついている。
「あの、金城さん…」
「あっ」
未だ頭を下げ続けるあいつの隣にきて、こちらを見てくるのは、あの日イジめられてる私の姿を見て笑っていた女子達。
「ごめんなさい…」
「…ごめん」
「…ごめんなさい!」
私をいじめてきた人たちからの一斉謝罪。ただ傍観していたクラスの子達も、それを罪と思ってるのか私たちの方をじっと見ている。
「あの、」
こんなに注目を浴びることなんてなかったから少し声が上擦ってしまった。
「許したくは、ないです…とても…辛かったから…」
本心だった。
私にとってあの日々は地獄でしかなく、到底許せるはずもなかった…でも。
「でも…このまま過ごすのも…嫌だから…」
これはきっと変わるチャンスだと思う。それを与えてくれたオーくんの為にも、私も一歩踏み出したい。
「もう一度…やり直したいです…」
「!!!」
直ぐに歩み寄る事は出来ないかもしれないけど、ここを起点に私の学校生活がいいものに変わっていくといいな。
「ありがと、オーくん」
「……」
返事はなかったけど、きっと優しく見守ってくれているんだろうなと想像してキーホルダーの頭を撫でた。
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