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1章・第1部:悪役令嬢は過去に戻る
(5)悪役令嬢はなぜか生きている
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「お嬢様~、朝ですよ~!!」
懐かしい声が聞こえてきて、目を開ければ視界の中には見慣れた私の部屋の天井が見えた。
__と同時に視界が一気に眩しくなる。
「…………え、ま?」
窓の前に立って、カーテンを一気に開けた人物は私のよく知る人物。
そして、理不尽に奪われてしまった人。
__私のメイドのエマだった。
何故か少し若く見えるけれど、呆然としている私に笑いかける彼女の笑顔は全く変わっていなかった。
「はい、エマですよ。おはようございます、リーシャお嬢様」
あの男に監禁されるまでは、ずっと見ていたあの優しげな笑顔を浮かべた彼女が目の前にいた。
いったい、どうして?
アルバート殿下は、彼女のことを始末したと言っていた。
あの殿下が、嘘を言うはずがない。
何しろ、有言実行が服を着て歩いているような人物だから。
だというのに、記憶よりも若い彼女が今ここにいる。
「え、あ、なんであなたがここに」
「?お嬢様、どうかしましたか?」
「…………え?」
目を見開いたまま固まった私に心配する表情で近づいてくる彼女を無視して、私はなんとなくベッド横に置いてあるドレッサーの鏡の方を向いた。
その鏡の中に写っていたのは、幼い私だった。
外見は、5・6歳ぐらいだ。
「…………わ、たし?」
「リサ、おはよう!!」
「アルベルト坊ちゃま、レディの部屋に許可なく入るのはいけませんよ」
「…………にい、さま?」
「?どうしたんだ、リサ?顔、真っ青だぞ?」
固まっている私の部屋に入ってきたのは、死んだはずのアルベルト兄様だった。
そんな彼も私の記憶で見る大人で紳士的な彼ではなく、まだまだやんちゃだった幼い頃の兄だった。
いったい、どうなっているのだろうか?
私はヒロインに殺されたと思ったのに、なぜ死んだはずの彼らがここにいるのだろうか?
死んでいなかった?
いや、確かに私はあの日あの部屋の中で両親と兄の死を確認したはず。
あのひんやりとした、温かさを失った両親たちの遺体を今でも鮮明に思い出せる。
だというのに、今目の前には幼いけれど兄とエマが立っている。
そう考えこんでいれば、真剣な表情を浮かべたエマが私のいるベッドの横に座り込んで私の顔を覗き込んできた。
「お嬢様、どこか違和感を感じるところはございますか?」
「…………ちょっと、夢見が悪くて気分が悪いの」
「え!?」
「旦那様と奥様に伝えてきますので、お嬢様はこのままベッドで休んでいてください!!」
私の言葉に、兄様が驚いた表情を浮かべて、エマが慌てて部屋から出て行った。
二人には悪いけど、二人がいたら今の状況について考えることもできない。
そう思いながら、心配した表情で私の方を見ながら近づいてきた兄様の方を見る。
「リサ、大丈夫か?」
「…………大丈夫だよ、兄様。ちょっと休みたいから、一人にしてもらっていい?」
「…………うん。酷くなったら、言うんだぞ?」
「うん」
懐かしい声が聞こえてきて、目を開ければ視界の中には見慣れた私の部屋の天井が見えた。
__と同時に視界が一気に眩しくなる。
「…………え、ま?」
窓の前に立って、カーテンを一気に開けた人物は私のよく知る人物。
そして、理不尽に奪われてしまった人。
__私のメイドのエマだった。
何故か少し若く見えるけれど、呆然としている私に笑いかける彼女の笑顔は全く変わっていなかった。
「はい、エマですよ。おはようございます、リーシャお嬢様」
あの男に監禁されるまでは、ずっと見ていたあの優しげな笑顔を浮かべた彼女が目の前にいた。
いったい、どうして?
アルバート殿下は、彼女のことを始末したと言っていた。
あの殿下が、嘘を言うはずがない。
何しろ、有言実行が服を着て歩いているような人物だから。
だというのに、記憶よりも若い彼女が今ここにいる。
「え、あ、なんであなたがここに」
「?お嬢様、どうかしましたか?」
「…………え?」
目を見開いたまま固まった私に心配する表情で近づいてくる彼女を無視して、私はなんとなくベッド横に置いてあるドレッサーの鏡の方を向いた。
その鏡の中に写っていたのは、幼い私だった。
外見は、5・6歳ぐらいだ。
「…………わ、たし?」
「リサ、おはよう!!」
「アルベルト坊ちゃま、レディの部屋に許可なく入るのはいけませんよ」
「…………にい、さま?」
「?どうしたんだ、リサ?顔、真っ青だぞ?」
固まっている私の部屋に入ってきたのは、死んだはずのアルベルト兄様だった。
そんな彼も私の記憶で見る大人で紳士的な彼ではなく、まだまだやんちゃだった幼い頃の兄だった。
いったい、どうなっているのだろうか?
私はヒロインに殺されたと思ったのに、なぜ死んだはずの彼らがここにいるのだろうか?
死んでいなかった?
いや、確かに私はあの日あの部屋の中で両親と兄の死を確認したはず。
あのひんやりとした、温かさを失った両親たちの遺体を今でも鮮明に思い出せる。
だというのに、今目の前には幼いけれど兄とエマが立っている。
そう考えこんでいれば、真剣な表情を浮かべたエマが私のいるベッドの横に座り込んで私の顔を覗き込んできた。
「お嬢様、どこか違和感を感じるところはございますか?」
「…………ちょっと、夢見が悪くて気分が悪いの」
「え!?」
「旦那様と奥様に伝えてきますので、お嬢様はこのままベッドで休んでいてください!!」
私の言葉に、兄様が驚いた表情を浮かべて、エマが慌てて部屋から出て行った。
二人には悪いけど、二人がいたら今の状況について考えることもできない。
そう思いながら、心配した表情で私の方を見ながら近づいてきた兄様の方を見る。
「リサ、大丈夫か?」
「…………大丈夫だよ、兄様。ちょっと休みたいから、一人にしてもらっていい?」
「…………うん。酷くなったら、言うんだぞ?」
「うん」
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