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第9夜「蛙(かわず)」
しおりを挟むコンコン
「セバスチャンです…失礼致します」
ガチャリッ
「お嬢様、今夜もまだ起きて… おや? このような大量の本、如何されました? ドミノ倒しをなさりたいなら本は背丈を揃えた方が無難ですよ。あらあら、倒れにくそうな分厚い辞書まで。よいですか、効率的なドミノ倒しのコツというのはもっと、ここを、こう……
え? 違う? 井の中の蛙だから、世を知るために読書をしていた、と? …まさかお読みになるために本をお持ちになっていたとは。大変失礼いたしました。さ、そんなに落ち込まないで。井の中の蛙がなんですって? 一説に、その言葉の先には「井の中の蛙大海を知らず。されど空の青さを知る」などというではないですか。美しい解釈ですね。これは決して「されど空の…太陽光の可視光線で波長の短い青色が大気中に散乱する事による青さを知る」という意味ではございませんね。付け焼き刃の知識などで武装されなくとも今のお嬢様にだって既に十分、探せば何かきっと…多分、恐らく、maybe、他の方とは違う良き所があったりなかったりするものにございます。
え? 良いところを具体的に?
……………………………そう、ですね。しばしお時間を頂けますか? ボキャブラリーの貧しさゆえお許しを。急だったもので、わたくし、心と体の準備が……。そうだメイド長、メイド長に問い合わせてみましょう。御前にてお電話失礼いたします。」
リーーーン(黒電話)
「メイド長、セバスチャンです。至急お嬢様の良い所を挙げて欲しいのだが。え? ない? それでは困ります! 主治医! 主治医に代わりなさい! 主治医、お嬢様の良い所をなんでも良いから挙げてくれ。何? 腸がちょう綺麗!? 他はない? あ、こら勝手に切るな!」
ティンッ(黒電話)
「お嬢様…井の中の蛙大海を知らず、されど腸の赤さは…… おやおや、本を枕にぐっすりだ! ちょう良かった~~~。それでは、お嬢様。お休みなさいませ。ーーよい夢を。」
カチリッ
コツコツコツ…
~就寝~
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