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第三章「レン姫様の場合」
第三章「レン姫様の場合」第一話。男の娘インフルエンサー「レン姫様」はマネージャーからの突然の行動に困惑する…。
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第三章「レン姫様の場合」
11月上旬--日本列島が秋から冬へと移行を始める季節。
冷たい風が街行く人々に肌寒さを感じさせる中、新大久保駅近くの公園に丈の短いミニスカートを纏った女子がいた。
彼女は手鏡を凝視し、傍らでは男性が動画撮影の準備をしている。
「このリップ、ちょっと派手すぎたかな?…ねえ、聞いてる?」
「うーん、そうだな…特に問題ない。いつも通りのレン姫様!かわちい!」
「はぁ?今日はいつもとは違うメイクなんだけど」
「あれ…、遠目だと全く違いが分からない…」
手鏡でしきりに自身の顔をチェックする女子。
…否、彼はれっきとした〝男子〟であり、SNS上では「レン姫様」として知られる有名インフルエンサーである。
「モブ男はさぁ、もっとメイクの違いについて勉強して」
「すまん。ところで、撮影の準備は終わったよ」
「テキトーな返事して…まあいいや。じゃあ移動しよ!荷物持って!」
そう言うと、レン姫様はそそくさと公園から移動を始めた。
モブ男はカメラ片手に、彼の荷物も背負って後を追いかける。
休日とあって繁華街は人で賑わっていた。そんな中、レン姫様とモブ男はポップな外装の店舗の前で立ち止まる。
「おはレン!今日もあざと可愛いレン姫様です♡今回はここ、新大久保に来ちゃいました!」
レン姫様は動画開始の挨拶を軽やかに済ませ、モブ男はそれに合わせてカメラをスムーズにセットした。
「このワッフル店は今年の夏に開店したばっかりなんだけど、見て…この行列!えぐい込み具合!やば!早く並ばないと!」
「あっ!レン姫様じゃん!握手してください!」
「おっと…早速バレちゃいました♡握手いいよー!」
レン姫様はファン対応も抜かりなく、手を振りながら店内を案内した。
その流麗な仕事ぶりは手練れのインフルエンサーそのものだ。
「ワッフル買えました!この量と見た目!SNS映えもばっちり!それじゃあ頂きます!……ちょっとモブ男」
レン姫様はワッフルを頬張る直前、モブ男に話しかけた。
「どうしたの?」
「私のメイクは崩れてない?光量は足りてる?」
「どうだろう…大丈夫だよ。たぶん」
曖昧な返事をしたモブ男にレン姫様は訝しい目つきをする。
「モブ男、撮影にもっと集中して!世界一かわいい男の娘を撮影しているという自覚を持って!」
「ご、ごめん」
「じゃあ、何種類か異なる角度から撮影してって。そうすれば編集する時に色々応用が利くから」
レン姫様は手鏡を取り出し、自身のメイクをチェックしながら、モブ男に指示を出した。
*
「ふぅ~、今日は滑舌も良くトークできたし、まあまあな出来かな」
「つ、疲れた…」
新大久保での撮影を終えたレン姫様とモブ男は、電車に乗り、数駅先にある芸能事務所へと帰路についた。
「あのワッフル、さすがにデカすぎ…太っちゃう」
「でも、全部食べたね。偉い!かわちい!」
「…だって、食べてるシーンが多いと動画の視聴維持率が高くなるんだもん」
「なるほど…さすがレン。SNS戦略も抜かりない!かわちい!」
レン姫様は徹頭徹尾、動画のクオリティを追求していた。
彼は、DK2と若年ながらも、SNS総フォロワー数は100万人を超える、今最も注目されているインフルエンサーなのである。
「ちょっとSNSのコメント返ししよっと。…うーん」
「どうしたの?何かアンチコメントでもあった?」
レン姫様はソファーから立ち上がり、スマホを手に取って、SNSの通知欄をチェックした。
すると、彼女の表情が次第に神妙なものへと変わっていった。
「〝恋愛対象は男性ですか?〟、〝イケメン法の適用対象者ですよね?〟、〝彼氏はいるんですか?〟…こういうコメント多すぎ…」
「あぁ…今年度に入ってから、そういう質問が絶えないね」
レン姫様のSNSには、毎日のようにイケメン法に関連したコメントが寄せられていた。
レン姫様は、戸籍上は男性である。しかし、彼は男性にも女性にも見える中性的な容姿の持ち主であり、ファッション次第で『男の娘』としても魅せることができる。
そのため、イケメン法の適用対象者なのである。
「こういう質問があるのは仕方ないんだけど…イケメン法の内容見れば分かるじゃん。私は女子とは恋愛出来ないって」
「だから自ずと…恋愛対象は男性である、と…」
レン姫様は、少し呆れたように笑った。
「まあコメント来るだけありがたいんだけどね」
「そうだね。…でも、俺からも聞いていい?レンは男性は恋愛対象なの?」
「はっ!?なに急に…」
モブ男は真面目な表情で質問を投げた。レン姫様はうろたえ、顔を赤らめてしまう。
「俺だって気になるよ。レンのマネージャーとして、そういうのも知っておいた方がいいのかなって」
「…モブ男はどうなの?彼女いないんでしょ?あんた顔は普通だけど背は高いんだし…この時代ならモテるでしょ」
レン姫様は話題をそらすように、モブ男の質問に質問で返した。
すると、モブ男はゆっくりとレン姫様に近づいていった。
「そうだな、俺は…」
「モブ男?どうしたの?」
「レン…!」
「ちょ…えっ…んむっ♡♡」
モブ男は、突如としてレン姫様を強く抱き寄せた。そして、その唇にキスをした。レン姫様は目を見開き、呆然と立ち尽くす。
「レン…」
「…えっ……はっ…?…ちょ待って…♡んんっ♡♡」
モブ男は、硬直しているレン姫様に再びキスを試みた。
今度は、唇だけでなく、舌を絡めようとする。
「待った…!な、なにしてんの…♡マネージャーのあんたがこんなこと…♡」
「ダメだった?」
「何その意外そうな反応!ダメでしょ!マネージャーが所属タレントに手を出すなんて!」
キョトンとするモブ男に対し、レン姫様は冷静なツッコミ入れた。
「確かに良くないことだと思う。でも、今の会話や雰囲気的に…これが正解かなって…」
モブ男は、レン姫様を見つめながら話を続ける。
「正直に言うと…レン姫様に近づきたいから、この事務所のマネージャーに転職しました!!」
【♡続く♡】
11月上旬--日本列島が秋から冬へと移行を始める季節。
冷たい風が街行く人々に肌寒さを感じさせる中、新大久保駅近くの公園に丈の短いミニスカートを纏った女子がいた。
彼女は手鏡を凝視し、傍らでは男性が動画撮影の準備をしている。
「このリップ、ちょっと派手すぎたかな?…ねえ、聞いてる?」
「うーん、そうだな…特に問題ない。いつも通りのレン姫様!かわちい!」
「はぁ?今日はいつもとは違うメイクなんだけど」
「あれ…、遠目だと全く違いが分からない…」
手鏡でしきりに自身の顔をチェックする女子。
…否、彼はれっきとした〝男子〟であり、SNS上では「レン姫様」として知られる有名インフルエンサーである。
「モブ男はさぁ、もっとメイクの違いについて勉強して」
「すまん。ところで、撮影の準備は終わったよ」
「テキトーな返事して…まあいいや。じゃあ移動しよ!荷物持って!」
そう言うと、レン姫様はそそくさと公園から移動を始めた。
モブ男はカメラ片手に、彼の荷物も背負って後を追いかける。
休日とあって繁華街は人で賑わっていた。そんな中、レン姫様とモブ男はポップな外装の店舗の前で立ち止まる。
「おはレン!今日もあざと可愛いレン姫様です♡今回はここ、新大久保に来ちゃいました!」
レン姫様は動画開始の挨拶を軽やかに済ませ、モブ男はそれに合わせてカメラをスムーズにセットした。
「このワッフル店は今年の夏に開店したばっかりなんだけど、見て…この行列!えぐい込み具合!やば!早く並ばないと!」
「あっ!レン姫様じゃん!握手してください!」
「おっと…早速バレちゃいました♡握手いいよー!」
レン姫様はファン対応も抜かりなく、手を振りながら店内を案内した。
その流麗な仕事ぶりは手練れのインフルエンサーそのものだ。
「ワッフル買えました!この量と見た目!SNS映えもばっちり!それじゃあ頂きます!……ちょっとモブ男」
レン姫様はワッフルを頬張る直前、モブ男に話しかけた。
「どうしたの?」
「私のメイクは崩れてない?光量は足りてる?」
「どうだろう…大丈夫だよ。たぶん」
曖昧な返事をしたモブ男にレン姫様は訝しい目つきをする。
「モブ男、撮影にもっと集中して!世界一かわいい男の娘を撮影しているという自覚を持って!」
「ご、ごめん」
「じゃあ、何種類か異なる角度から撮影してって。そうすれば編集する時に色々応用が利くから」
レン姫様は手鏡を取り出し、自身のメイクをチェックしながら、モブ男に指示を出した。
*
「ふぅ~、今日は滑舌も良くトークできたし、まあまあな出来かな」
「つ、疲れた…」
新大久保での撮影を終えたレン姫様とモブ男は、電車に乗り、数駅先にある芸能事務所へと帰路についた。
「あのワッフル、さすがにデカすぎ…太っちゃう」
「でも、全部食べたね。偉い!かわちい!」
「…だって、食べてるシーンが多いと動画の視聴維持率が高くなるんだもん」
「なるほど…さすがレン。SNS戦略も抜かりない!かわちい!」
レン姫様は徹頭徹尾、動画のクオリティを追求していた。
彼は、DK2と若年ながらも、SNS総フォロワー数は100万人を超える、今最も注目されているインフルエンサーなのである。
「ちょっとSNSのコメント返ししよっと。…うーん」
「どうしたの?何かアンチコメントでもあった?」
レン姫様はソファーから立ち上がり、スマホを手に取って、SNSの通知欄をチェックした。
すると、彼女の表情が次第に神妙なものへと変わっていった。
「〝恋愛対象は男性ですか?〟、〝イケメン法の適用対象者ですよね?〟、〝彼氏はいるんですか?〟…こういうコメント多すぎ…」
「あぁ…今年度に入ってから、そういう質問が絶えないね」
レン姫様のSNSには、毎日のようにイケメン法に関連したコメントが寄せられていた。
レン姫様は、戸籍上は男性である。しかし、彼は男性にも女性にも見える中性的な容姿の持ち主であり、ファッション次第で『男の娘』としても魅せることができる。
そのため、イケメン法の適用対象者なのである。
「こういう質問があるのは仕方ないんだけど…イケメン法の内容見れば分かるじゃん。私は女子とは恋愛出来ないって」
「だから自ずと…恋愛対象は男性である、と…」
レン姫様は、少し呆れたように笑った。
「まあコメント来るだけありがたいんだけどね」
「そうだね。…でも、俺からも聞いていい?レンは男性は恋愛対象なの?」
「はっ!?なに急に…」
モブ男は真面目な表情で質問を投げた。レン姫様はうろたえ、顔を赤らめてしまう。
「俺だって気になるよ。レンのマネージャーとして、そういうのも知っておいた方がいいのかなって」
「…モブ男はどうなの?彼女いないんでしょ?あんた顔は普通だけど背は高いんだし…この時代ならモテるでしょ」
レン姫様は話題をそらすように、モブ男の質問に質問で返した。
すると、モブ男はゆっくりとレン姫様に近づいていった。
「そうだな、俺は…」
「モブ男?どうしたの?」
「レン…!」
「ちょ…えっ…んむっ♡♡」
モブ男は、突如としてレン姫様を強く抱き寄せた。そして、その唇にキスをした。レン姫様は目を見開き、呆然と立ち尽くす。
「レン…」
「…えっ……はっ…?…ちょ待って…♡んんっ♡♡」
モブ男は、硬直しているレン姫様に再びキスを試みた。
今度は、唇だけでなく、舌を絡めようとする。
「待った…!な、なにしてんの…♡マネージャーのあんたがこんなこと…♡」
「ダメだった?」
「何その意外そうな反応!ダメでしょ!マネージャーが所属タレントに手を出すなんて!」
キョトンとするモブ男に対し、レン姫様は冷静なツッコミ入れた。
「確かに良くないことだと思う。でも、今の会話や雰囲気的に…これが正解かなって…」
モブ男は、レン姫様を見つめながら話を続ける。
「正直に言うと…レン姫様に近づきたいから、この事務所のマネージャーに転職しました!!」
【♡続く♡】
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