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学園編

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僕はレニー  ウレニ!魔導科に入学した1年生!将来の夢は魔工技士!将来の夢を叶えるために

「散財中さ…。」

両手に教科書、ポッケにはすっからかんの財布。

別にいいんだけどね…学校に行くために貯めたお金だし。でもまたバイトしなきゃ。

うっうっ、僕が獣人だったら可哀想なくらい尻尾が垂れ下がってるね!

数年間貯めたお金が入学しただけで全部無くなって変なテンションです。変な子だって思わないでね。

なんてすれ違う子に言ったら、本当に変な子だって思われちゃうな。

なんでこんなにお金に困らなきゃいけないんだ!僕貴族なのに!

いや、僕のせいなんだけどね。両親に言われるがままやる事やってれば僕は少なくとも見限られることは無かった訳だし。

っていうか部屋遠い~。寮広すぎるって。こっちは寮までの道のりで指が限界なの!教科書多すぎ!

この角!この角曲がれば僕の部屋!頑張れ、レニー  ウレニ!


え。


なんか僕の部屋のドアの前にマント羽織った人がいるんだけど…?

あっ、握力がそろそろ無くなる…。

「あっ、あの...僕の部屋に何か用?」

声をかけると、彼は振り向いた。

美人過ぎない?

黒い髪はツヤツヤだし、肌はつるつる。

金色に輝く目は、すごく僕を見てくる。

待って、ドキドキしてきた。緊張って意味で。

「えーっと、そんなに見られると恥ずかしい、かも?」

僕は教科書で顔を隠そうと思ったけど、面白いくらい持ち上がる気配がない。

ぎこちなく目を逸らすけど、不自然すぎない?マナーレッスン中だったら怒られてる。

「よろしくお願いします。」

「えっ、え?よっよろしく?」

何が?



結局その子がルームメイトで、エトワーテル辺境伯、アーノルドエトワーテルの弟だったわけだけど。

アーノルド  エトワーテル様って人も魔物も殺しまくってるやばい人だよね?

両親がいないってことはその人を見て育ったわけで。

いや、そうとも限らないか。貴族が言う家族は平民の言う家族と違うから。一度も話したことのない兄弟がいることも珍しくない。

でもキルシュ様は辺境伯様のことを悪く言われるのは嫌らしい。

仲がいいのかな?辺境伯様と性格は合わなそうだけど...。だってキルシュ様は少し怖いけど、悪い人じゃなさそう。

今だってほら。僕の名前を呼んで挨拶を

「レニー、よろしくお願いします。」

バッ。

僕は分厚い眼鏡を手で覆った。

かっ考える暇もなかった。反射だ。反射で手が動いた。

でもキルシュ様の笑った顔が脳裏に焼き付いている。

「レニー?」

不思議そうなキルシュ様の声で焦る。
何か言わなくては。

「すっすみません。噂には聞いていたんですけど、お顔が綺麗すぎて...。」

「噂?」

えっ知らないの!?こう言えばなんとなく、わかってくれると思っていたのに。

噂、噂。みんななんて言っていたかな。えーっと。

「エトワーテル家の者はみんな美形で、笑った顔は...その、国王が惚れるほどだって。」

やばぁい。国王出しちゃ駄目じゃん?普通に不敬じゃない?

というかエトワーテル辺境伯ってほぼ独立してるんじゃなかったっけ。

貴族はエトワーテル辺境伯を嫌っているけど、この国はエトワーテル辺境におんぶに抱っこ状態だってバイト先の先輩が言ってた気がする~!

国王が地雷だったらどうしよ。

キルシュ様の方を見ると、何か思案している様子だ。

彼が何か話し出す雰囲気を感じて、喉が鳴る。

「国王が兄上に?」

「なんで具体的なんですか?」

僕は思わずツッコミを入れる。
今のはボケたのか?ボケにしても思考がお兄様好き過ぎだぞ、キルシュ様。

「それほど美しいという話だと思いますよ。」

僕は呆れたようにため息をつく。
でもそうだな、兄弟同士が仲がいいというのは案外ほっこりする。意外と辺境伯様はいい人なのかもしれない。

「本当に辺境伯様が好きなんですね。」

私がそう言うとキルシュ様の無表情なお顔が段々綻んでくる。

そしてそれはそれは幸せそうなお顔で

「ええ、大好きです。」

なんて言った。

「うっ。」

僕は眼鏡を手で押えた上、顔を背ける。

やだっ、恋しちゃう!もうキルシュ様が男性とかどうでも良くなってる!

でも顔が良すぎて付き合うイメージが出来ない!どっちかと彼のこの笑顔を、この日常を守りたい!

そうか!



これが!



推し!?




(バイト先の先輩から引用)



「僕、キルシュ様のファンクラブ作ります。」

「やめてください。」


よっしゃ、やってやるぞ!!!

もちろん僕が会員番号1番だ!


兼友達1号!!!!



ーー★ーー



翌日、ファンクラブを作った。

作るのは簡単だ。同じクラスの女の子にキルシュ様のファンクラブがあると話すだけ。

そして僕もキルシュ様を推しているからそういう人がいれば教えて欲しいと言う。

「おし、とは何ですの?」

「推しは推しだよ。」

これは大規模なものになると確信しているので、同好会として教室を取りたいと学校に申請した。

同好会であれば顧問も絶対に必要というわけではないし、部員だって必要ない。

キルシュ様観察同好会という名前で発足したかったが、流石に通らなそうなので探偵同好会にした。

キルシュ様を観察する、ということは人間観察、人間を観察するのは探偵、ということで探偵同好会だ。


そして早くも今日の放課後、お話がしたいと言われたのだ。


「ウレニ様がファンクラブについて知っていると聞いて...教えて頂きたいのですわ。」

モジモジと話す彼女は青いネクタイをしているので同じ魔導科の子だろう。

「君もキルシュ様が好きなの!?」

「きっキルシュ様と呼んでいますの!?不敬だと、その、退学させられたりしませんの?」

「とりあえずそこは置いておいて、キルシュ様のどんな所が好きなの?僕はね~」

「そっその、堂々と自信のある、あの冷ややかなお顔が忘れられませんのっ!触れたらこちらがケガをするような危なさも素敵ですわ…。」

女の子は頬に手を当てて、ほぅっと息をつく。

「…。」

待って、誰の話?

いや、わかっているはずだ。レニー  ウレニ!

キルシュ様はお兄様のことを話すときに笑うことが多い。

つまり辺境伯様が悪く言われているこの学園は針のむしろ!

僕としたことが...なぜ気づかなかった!

同好会のメンバーを早急に増やし、環境改善と行こう。

それにはまず...。

「ねえ、キルシュ様が笑った話、聞きたい?」

「笑っ!?」

彼女は周りをキョロキョロし、誰もいないのに小声で話す。

「笑ったって本当ですの?」

それを聞いて僕はニヤリと笑う。そして身振り手振りを大きくして話す。

「そうそう、ファンクラブを立ち上げたのは僕なんだ。ファンクラブに入ってくれるなら詳しく話せるんだけど。」

僕がそう言うと、彼女は最初からそのつもりですわ、と会員2号になった。

「あと貴方は可愛らしい雰囲気なので、そのようなやり方よりおねだりするような言い方の方が効果的だと思いますわ。」

「勘弁して...。」
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