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エトワーテル辺境伯領
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黒と白で整えられたシックな部屋。
白い壁はよく見るとレンガで出来ており、黒と金色の布で織られたエトワーテル辺境伯領のエンブレムが垂れている。
高貴な方が使うであろう黒い天蓋付きのベッドは使われることのないまま朝日に照らされ、まるで置物だ。
そんな生活感のない部屋に置かれた黒いレザー生地のソファーで、エトワーテル辺境伯領主、アーノルド エトワーテルは目を覚ます。
黒いストレートの髪、整った容姿、白磁のような肌に埋め込まれた金色に輝く瞳。
彼が気だるげに目を開けるその姿に、高価なインテリアが背景と化す。
アーノルドは身体を起こすと、着たままだった黒い軍服を脱ぎ、適当にシャワーを浴び、また軍服を着る。
ドア横に掛られた帽子を被り、裏地が赤い黒のマントを羽織る。
部屋でやることと言ったらこれだけだ。
アーノルドは部屋を出て、黒と金で整えられた城の廊下を足音1つ立てずに歩く。
窓から見える空はまだ白み始めたばかり。足音を消すのはメイドたちを起こさないようにする配慮なのかもしれない。
そんな彼の前にどこからとなく執事が現れる。
「おはようございます。マイロード。」
アーノルドはその様子を一瞥し、何も言わずに歩く。
そしてその後ろを執事が歩く。
その2人からは布が擦れる音さえしなかった。
ーー★ーー
音を立てずに歩いていることに気づいているはずなのに、なぜ声を出すのだ。
アーノルドは後ろから着いてくる執事に、心の中で文句を垂れる。
私に挨拶をするのが執事なのであれば、是非とも執務室にいて欲しいものだ。
万が一、万が一にでも起きてしまったらどうするんだ。
アーノルドは1つのドアの前に立つ。
後ろであからさまにため息を吐く音がする。その音で起きたらどうしてくれる。
私はドアの向こうから音がしないことを確認して、静かにドアを開ける。
潤沢な資産で全ての蝶番を付け替えたのだ。音などするはずもない。
中は白色と金色で整えられた部屋だ。と言っても私の部屋とは違い、生活感のある整えられた部屋だ。
私のものと色違いの白色の天蓋付きベッドには、黒いストレートの髪を胸まで伸ばした美少年が規則正しい寝息を立てている。
キルシュ エトワーテル。私の弟だ。
そう、弟。
私の弟。
かわいい~~~~~~!
気を抜くと目尻が下がってしまいそうだ。
16歳の男をかわいいと言い表すのはどうかと思うが、事実なのだから仕方がない。
少し赤い頬も、少し丸まった指先も、全てがかわいい。
頬を手で包みたい。丸まった指を伸ばしたい。そしてそのまま指と指を絡ませたい。
かわいい。本当に。
そんなことを考えていると後ろから布が擦れた音がした。
執事がわざと鳴らしたのだろう。
普通の人はそんな小さな音を気にもとめないだろうが、音に気をつけている私には効果的だ。
仕方ない、執務室に向かおう。
出来れば毎日見たいが、そんな訳にも行かない。
私は部屋を出て、ドアを静かに閉める。
ほんの少しいただけなのに空は青くなっている。
もうメイドも起き始めるだろう。執事の判断は正しい。
正しいことなんてとっくに知っているのだ。
私は満たされない心を見ないふりをした。
白い壁はよく見るとレンガで出来ており、黒と金色の布で織られたエトワーテル辺境伯領のエンブレムが垂れている。
高貴な方が使うであろう黒い天蓋付きのベッドは使われることのないまま朝日に照らされ、まるで置物だ。
そんな生活感のない部屋に置かれた黒いレザー生地のソファーで、エトワーテル辺境伯領主、アーノルド エトワーテルは目を覚ます。
黒いストレートの髪、整った容姿、白磁のような肌に埋め込まれた金色に輝く瞳。
彼が気だるげに目を開けるその姿に、高価なインテリアが背景と化す。
アーノルドは身体を起こすと、着たままだった黒い軍服を脱ぎ、適当にシャワーを浴び、また軍服を着る。
ドア横に掛られた帽子を被り、裏地が赤い黒のマントを羽織る。
部屋でやることと言ったらこれだけだ。
アーノルドは部屋を出て、黒と金で整えられた城の廊下を足音1つ立てずに歩く。
窓から見える空はまだ白み始めたばかり。足音を消すのはメイドたちを起こさないようにする配慮なのかもしれない。
そんな彼の前にどこからとなく執事が現れる。
「おはようございます。マイロード。」
アーノルドはその様子を一瞥し、何も言わずに歩く。
そしてその後ろを執事が歩く。
その2人からは布が擦れる音さえしなかった。
ーー★ーー
音を立てずに歩いていることに気づいているはずなのに、なぜ声を出すのだ。
アーノルドは後ろから着いてくる執事に、心の中で文句を垂れる。
私に挨拶をするのが執事なのであれば、是非とも執務室にいて欲しいものだ。
万が一、万が一にでも起きてしまったらどうするんだ。
アーノルドは1つのドアの前に立つ。
後ろであからさまにため息を吐く音がする。その音で起きたらどうしてくれる。
私はドアの向こうから音がしないことを確認して、静かにドアを開ける。
潤沢な資産で全ての蝶番を付け替えたのだ。音などするはずもない。
中は白色と金色で整えられた部屋だ。と言っても私の部屋とは違い、生活感のある整えられた部屋だ。
私のものと色違いの白色の天蓋付きベッドには、黒いストレートの髪を胸まで伸ばした美少年が規則正しい寝息を立てている。
キルシュ エトワーテル。私の弟だ。
そう、弟。
私の弟。
かわいい~~~~~~!
気を抜くと目尻が下がってしまいそうだ。
16歳の男をかわいいと言い表すのはどうかと思うが、事実なのだから仕方がない。
少し赤い頬も、少し丸まった指先も、全てがかわいい。
頬を手で包みたい。丸まった指を伸ばしたい。そしてそのまま指と指を絡ませたい。
かわいい。本当に。
そんなことを考えていると後ろから布が擦れた音がした。
執事がわざと鳴らしたのだろう。
普通の人はそんな小さな音を気にもとめないだろうが、音に気をつけている私には効果的だ。
仕方ない、執務室に向かおう。
出来れば毎日見たいが、そんな訳にも行かない。
私は部屋を出て、ドアを静かに閉める。
ほんの少しいただけなのに空は青くなっている。
もうメイドも起き始めるだろう。執事の判断は正しい。
正しいことなんてとっくに知っているのだ。
私は満たされない心を見ないふりをした。
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