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強敵との遭遇
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~果ての空間~
暗い空間。見渡す限り黒一色で、上下左右どこを向いているかさえもわからない。
いくつもの紫の結晶が浮いており、様々なダンジョンが映っている。
その中には石造りの通路を進むマルス達の姿もあった。
【ククク……、面白そうな奴がいるではないか。 少し試してみるか】
姿が見えないが、ただその場に男の声が響き渡る……。
低い含み声だが、自信に満ちた高圧的な口調だ。
突然、各結晶の前に赤黒い光の球が出現した。それは禍々しく赤と黒が渦を巻いている。その光球は結晶に入っていき、各ダンジョンに変化をもたらした。
【さて、ここからどうなるか……、呆気なく終わらないでくれよ? 】
男の声は静かに低い声で笑い出す。
その直後、黒い空間に一筋の光が差し込む。
【チッ……奴が覚醒し始めたか】
次第に光は広がってゆき、暗い空間を白一色に塗り替えた。
そこには外の映像を映し出す多くの結晶が残っていた。
※※※
~魔結晶のダンジョン 最奥~
ダンジョンの最奥でマルス達な赤入墨の魔獣と戦闘を行っていた。
しかし攻撃しているのは魔獣の方で、彼らは回避に専念している。
「ガアァァァァッ! 潰ス……ツブスゥゥゥゥゥゥッ!! 」
巨大な体で石棍棒を軽々と振り回し、地面へと叩き付けてくる。
一撃の動作は遅いが威力はゴブリン達と比べ桁違いであった。
「ええぃ、こんな奴にどうやって戦えって言うんだい!? 」
「今は避けるしかないだろ! 攻撃が効いてないんじゃどうしようもない!」
前線で攻撃を引き付けていたマルスとノエルは必死に避ける。
数分前まで武器で攻撃を行っていたが、魔獣の固い身体に弾かれてしまい傷を負わせられないでいた。
博士の説明によると、魔獣の名はオーク。大きさは2~2.5mほどの大きさ。本来ならばこのダンジョンに出現しないはずの魔獣だ。
赤入墨は体内の魔力が何らかの影響で暴走し狂暴になっている状態で、今のマルス達では歯が立たないと言っていた。
「ただ、いつまでも当たらないとは限らないけどな……っと! 」
会話をしていると当たってしまいそうになる。一瞬肝を冷やしたが瞬時に身を屈め、回避することができた。その際、オークの隙を衝いて攻撃してみるがやはり意味はなかった。ガキンッと鈍い音とたて、弾かれてしまう。
「やっぱダメだ! 皆も回避に専念するんだ!!」
マルスは再度指示を出すが、それを無視して動き出す人物がいた。
「武器がダメなら、魔法を使えばいいじゃない! 」
小人族の双子の姉、マオはオークへ近づきながら詠唱を始め初級魔法のファイヤーボールを放った。火球は真直ぐ向かっていき、直撃した。
「やった! やっぱり私が動かないと! 」
初撃で動きを止めたオークに対し、彼女は続けて詠唱し火球を放つ。
当たった時に発生した爆煙で、オークの姿は見えなくなった。
マオはこちらを向き自信ありげに言う。
「どうよリーダー! こんな弱い敵に何を苦戦―――」
「駄目! マオ、そいつ死んでない!! 」
「え……? 」
突如ソフィアが叫ぶ、マオも彼女に視線を向けてしまう。
再度、煙の方を見た時にはオークが武器を構えながら飛び出し、目の前に迫っていた。
「グラァァァァァッ! 」
雄叫びを上げながら棍棒で薙ぎ払う。マオの頭には走馬灯が流れていた。
まだ親元にいた時の記憶がいくつも浮かんでくる。
「アッ―――」
「マオーーーーーーッ!! 」
小さな影が彼女を突き飛ばした。マオには当たらず、棍棒は虚しく空を切る。オークの足元付近にはセオが這っていた。その場から動けずに止まっている。
突然獲物が消えたことを不思議に思うオークは辺りを見回す。
その隙を逃がさずマルスは背後から飛び掛かった。
「な、ナイスだ、セオ! 時間を稼ぐから早くそこから! 」
オークの首に下げていた紐に掴まりながら剣を刺そうとするが、固い肉体には刺さらず僅かに沈こむだけだった。何度も突き立てようと繰り返していると、不意に脚を掴まれ宙吊りにされてしまう。
「アッ?! ……っとこれはマズイな」
マルスの目の前にはオークの顔が見える。周囲を見てみるが2人とも離れたようだ。オークは不快な表情をしており、棍棒をマルスの顔に向かって振るう。
「ちょ……待てって! 」
鉄棒で腹筋を行うように器用に避ける。そんな中博士から通信が入る。
『無事か……っておいッ?! 何をしとるんじゃッ! 』
「ごめ……ちょっと、これは……腹筋に…………効く」
『そんな事言っとる場合かッ!! 回避に専念しろと言ったじゃろう!』
回避することで必死で博士の通信はマルスの片耳からは抜けていた。
ソフィアは代わりに現状を説明した。
『なるほどな、またお主が原因か。しかし、叱っておる時間も無い! 一か八かじゃが試すしかないな、ノエルよ! これからワシの指示通りに動け! 』
一番魔獣の近くにいたノエルをオークの背後まで移動させ、さらに指示を出す。
『良いか? 今から技の使い方を教える。お主らので効果があるかわからんがマルスを救うには賭けるしかない!』
ノエルは形成した武器を構える。武器形状は両手持ちのスレッジハンマー、大きな火力を期待できる得物だ。実際に対ゴブリン戦では一撃で仕留める時もあった。
「ホントにそんな感じで使えるかい? 」
『やるしかないじゃろう! でないとマルスがやられてしまうぞ? 』
マルスの回避反応が遅くなってきており危なくなってきていた。
軽く深呼吸をすると、オークに向かって走り出し、手前で飛び上がった。
「スタンインパクト!! 」
振り上げたハンマーのヘッド部は赤く発光しており、そのままオークの後頭部目掛けて勢いよく振り下ろす。赤い光が弾け、ゴンッと鈍い音がしたが先ほどまでの攻撃とは違う反応を見せた。
「ガッ……ァア……」
明らかに苦痛の表情をしていた。あまりの衝撃にマルスを放して頭を抱え、膝を付いた。そのままマルスは背中から落ちたが受け身を取り、体勢を立て直す。
「痛ッ……けど助かった! 」
「礼は後でにしとくれ、とりあえず今のうちに下がるよ!」
オークも少しの間は動けないようだ、作戦を練るなら今しかないだろう。
2人は仲間の元まで後退する。
『さて、アヤツに技が効果ありとわかったところであまり状況は変わらん。足止めできたとしても数秒が良い所じゃ』
「効果があるなら攻めた方が良いのでは? 少しでも相手の体力を削っておけば有利になっていくと思いますが」
『言ったじゃろう、効果はあっても状況は変わらんと。良いか、これからも回避を主体に考えて動くのじゃ。一旦ワシは増援側に通信を移すぞ』
マルスの提案も却下されてしまい、一応博士は各自に技の使用方法を伝えてから通信を切った。
「さて、どうしたもんか……」
「とりあえず回避主体で戦って、隙があったら技を試してみようよ」
「よし、そんな感じで行こうか。 俺とノエルはさっきと同じ、ソフィア、セオとマオは後方から援護で」
話し終わるとオークも立ち上がり、こちらを睨みつけ咆哮する。
部屋中に響き渡り思わず耳を塞いでしまう、再度見た時には両腕に血管が浮き出ていた。オークの持つ技の一つ、ウォークライだ。大声を出すことで士気を高め、力を増すらしい。
「増援が来るまで踏ん張るぞ!! 」
マルスの掛け声とともに戦闘が再開された
※※※
~魔結晶ダンジョン スタート地点~
マルス達と同じダンジョンにはもう一つのチームが到着していた。
先ほど博士が話していた増援だ。
「あ~、アカン。 何か構造まで変わっとるやん」
「そんなことはどうでもいいでしょう? 早くいきませんと後輩達がミンチになってしまいますわ」
「空気中の魔力も不安定だ、急ごう」
チームメンバーは独特な話し方をする正人族、お嬢様風の小人族、寡黙な雰囲気の獣人族の3人だ。獣人族の手にはTFがあり、魔力の波形が激しく波打っていた。
正人族も地図を確認するも画面には構造不明の文字しか出てこない。
「厄日やわ~、しんどい……」
「愚痴ってないで行きますわよ! 」
小人族は後ろから正人族の脚を蹴り、進んでいった。
「痛ッ!? 蹴らんでもええやん……」
「いつまでも暗い顔しているからだ、置いてくぞ」
獣人族も行ってしまい、残ったのは正人族だけであった。
頭を掻くと「待ってえな~」と言いながら追いかけて行く。
※※※
オークと戦っている中、一つ違和感を感じていた。
隙を衝いては何度か技を当て傷を負わせていたのだが、相手の勢いは全く衰えない。むしろ、常に全力攻撃をするぐらい元気だ。
「どんだけスタミナあるんだよ!? 」
オークの身体をよく見てみると、後頭部にノエルが負わせた青い痣が無くなっていることに気づく。それ以外にも細かな切り傷等も薄くなってきており、驚異的な速度で身体が再生しているようだ。
「傷が……無くなってる!? 確かあそこに痣があったのに……」
ノエルも気づいたようだ。どうやらこの魔獣を倒すには一撃で倒すほどの火力が必要らしい。しかし博士が言った通り、マルス達は力を付けたばかりの新人……そのような技は習得していない。
「マルス、もう一回だけあの技をお願いできるかな? 小っちゃい傷が付けば……」
「何かあるのか、ソフィア?」
頷いたことを確認するとオークを見る。イノシシように地面を蹴り、右肩を突き出すと、巨体を揺らしながら突進してきた。そこでマルスも一つの考えが浮かぶ。
(危ない賭けだけど……やってみるか)
剣を左脇に構えた。抜刀を行うような構えだ。軽く深呼吸し、集中する。
速度を上げながらオークが向かって来るが、そのまま続ける。
剣身が蒼く発光し始める、光は徐々に大きくなってゆき、炎のように揺らめきだした。
「ガァァァァッ……ウガッ!?」
オークもその光に気づき、減速しようとするが手遅れである。
勢いの突きすぎた巨体はそのまま突っ込んでゆく。
「今だ! 烈風刃(れっぷうじん)ッ!! 」
剣を振るうと蒼い衝撃波が放たれる。勢いよくオークの元まで飛んでいき、直撃したように見える。しかし、オークは当たる直前で身体を横に振り機動をずらしていた。マルスの横を通り過ぎ、後ろの壁に激突する。
部屋は大きく揺れ、パラパラと塵が落ちてくる。
「……アブな! 外しちまったか!?」
後方ではオークがユラりと立ち上がり、こちらに振り向いていた。
マルスが放った一撃は外れたと思われたが……
オークの右肩に亀裂が入り、血が噴き出してきた。
突然の痛みに思わず手を当て膝を付いてしまう。
「イ、イデェッ!」
自身の手を見ると赤黒い血が付いており、その顔は怒りの表情をしていた。
吠えようと息を吸った時、肩の傷口に矢が刺さる。
「グフォッ!? ゲハッ ゲハッ?!」
再度痛みに襲われ咽ってしまう。
隙ができた時、ソフィアが指示を出す。
「マルス、その矢を切って!! 」
「お、おうッ、わかった!」
オークも咳が落ち着いた所を狙われて勘違いをしてしまう、もう一度あの技を撃たれると……棍棒で防御するように前へ構えるもその予想は外れる。
マルスは刺さっている矢を切り裂き、後退した。
「切ったぞ! 何が起こるんだ? 」
「ディザスターアロー、傷を悪化させる技だよ! 」
切られた矢は光の粒子となり、傷口に入ってゆく。全体が白くなると、血が勢いよく噴き出し始める。次第に傷も深くなっていき、オークの右腕は動かなくなった。
「なんで初めから使わなかったんだよ!? 」
「だって異常に回復速度が速いんだもん。連発もできないしさ」
彼女は元々武器の扱いには慣れていた。ダンジョンの魔獣との戦闘、さらに技の使い方を聞いてから何か掴んでいたのだろう。2人の会話を遮るようにオークは吠える。そこでマルス達は衝撃的なモノを見る。
突然オークは自身の右腕を掴み、力を込めた。
血の勢いは増し、筋肉が無理やり裂ける不快な音がする。
「ォォォォォオオオオオッ!! 」
完全にオークの右腕は千切れた。肩から先が無くなり、左腕で持ってしまっている。
「おいおいおい……」
「さ、さすがにこれは予想外だよ……」
痛みを感じていないわけではない。暴走状態だからこそできたことなのだろう。
自身の重りとなる腕を捨て、それを武器として使用するつもりだ。
右腕だったモノを上に掲げ吠えると、呼応するように赤い入墨が発光する。
肩から噴き出していた血は止まり、右腕だったモノが変形し始める。
左腕と一体化し、肘から先は赤黒い結晶に覆われ、形は棘の付いた棍棒のように見える。さらに肩当のような防具も形成され、防御力が上がっている。
こちらの左半身への攻撃は完全に無効化されてしまうだろう。
「ゥゥゥウオオオオオオオオッ!! 」
今までの突進とは違っていた。攻撃時に大きく肩当を展開し、面積を広げていた。マルスも全力で回避行動をとらなければ当たってしまうほどだ。
壁にブツかっても関係無しに動き回る。不規則に跳ね返り、どんどん速度を上げてゆく。回避を行っているうちにマルス達は部屋の中央に固まってしまう。
「なっ……追い込まれた!? 」
「だんだん速くなってるよ! このままじゃ……」
「とりあえず皆で背中を合わせるんだ! 攻撃方向を見極めて回避するしかない!」
各自背を合わせ、跳ね返るオークを目で追う。しかしぶつかった時の振動で部屋自体も大きく揺れるため、
反応が遅れてくる。6度目の突撃では完全に回避が遅れた。
「み、みんな! こっちか―――」
セオも必死に叫ぶが、すでに赤い塊は目の前に迫っていた。
全員が死を覚悟した時、閉まっていた扉が爆発した。
当たる直前でオークは装置のある方向に吹き飛ばされ、誰かの声が響き渡る。
「ストライクですわ! 」
※※※
援軍の3人は順調に進み、マルス達のいる部屋の扉前まで来ていた。
しかしそこには赤入墨の魔獣が群れており、扉に向かって攻撃していた。
「扉閉まっとるやん、しかも赤入墨がウヨウヨと……」
箒頭の正人族は気怠そうに言う。
「まとめて塵にしてしまいましょう。 援護頼みますわよ」
そう言うと小人族は武器を形成する。右手には小柄な身体には似合わない大きさのランスが出現する。扉に向けると、持ち手で何か操作し始めた。
円錐状の先端から半分付近が花のように展開し、地面に固定された。その姿は大筒の構えに近い。
持ち手を回転させると、エンジンをかけるような音が響き渡る。
魔獣たちも気づき、襲い掛かってきた
「……援護を開始する」
獣人族は静かに行動を起こす、詠唱を始めたかと思ったら一瞬で火球が複数放たれる。連撃は収まらず、火球以外にも氷塊、風、岩などを織り交ぜながら放ち続けていた。
「しんどいわ~……」
正人族も獣石を取りだし姿を変える。白い毛並みのワーウルフに変異し、魔法の間を縫うように接近していく。体術を駆使し、魔獣を一か所に集めていった。
最期の一体を蹴りあげると、準備ができた小人族が声をかける。
変形したランスの前には限界まで溜められた魔力の塊が発生していた。
「準備完了ですわ、そこをどきなさい!」
「ちょ、ちょい待ってえな、巻き添えは勘弁でっせ! 」
瞬時に後退し、2人の元に戻ると変異を解いた。
「さぁ行きますわよ! 塵になりなさい、オーバーエクスプロード!!」
魔力の砲弾が発射される。扉に向かって真っすぐ進み、魔獣達は飲み込まれてゆく。
勢いは止まらずそのまま扉を打ち砕き、オークに直撃した。
「おぉ~……まぐれか? 」
「ね、狙って撃ったに決まってるでしょう! 私の実力、ストライクですわ!」
吹き飛ばした方向が装置のある場所とは気づいていないようだった。
マルス達の元まで近づきながら確認してみるが、煙でよく見えない。
その中からオークが飛び出すが動きを止めてしまう。腹部は大きく裂け、顔の皮膚は一部焦げ片目を失っていた。先ほどの一撃で身体の損傷が酷く、オークは再生を始める。それを見た正人族は顔を歪める。
「うっわ……暴走状態で異形化、超再生のおまけ付きかいな、しかも装置も壊れとるし」
「えっと……あんた達はもしかして……」
「もしかしなくても援軍や。しっかし、よう耐えたなぁ」
マルスの問いに答えると、何かを求めるように手を差し出す。
「結晶、持っとるか? 」
「え? 」
「制御の魔結晶や、はようせんともっとメンドくなる 」
「わ、わかりました! セオ、渡してくれ」
箒頭の正人族の手に結晶が渡される。すると獣石を使いワーウルフに変異した。
「とりあえずの応急処置や、その再生力……利用させてもらうで」
オークの目の前に一瞬で移動すると、腹部の傷口に結晶を深々と差し込む。
反射的に腕を振るうも、抜きながら下がられた為当たらなかった。
変異を解きながら戻ってきた正人族の白い毛は赤く染まっていた。
「うへぇ、気持ち悪いわ~」
相手に背を向け血を払うように手を振るう。
オークもそのまま黙ってはいない、しかし走り出そうとした時身体に異変が起こる。自分の脚が動かないのだ。
前に進もうにも足の裏が地面に張り付いたような動きをしてしまう。
動かない部分は広がってゆく、もはや上半身を捻る動きしかしていない。
「な、何が起きて……? 」
「アイツを媒体にしてダンジョンの魔力を制御しとるんや」
よく見るとオークの脚は結晶化していた。
色は持っていた結晶と同じ白色、徐々に身体を侵食していき、全体を覆ってしまった。
「よし、これでOKや」
「OKや……じゃありませんわ!」
小人族は正人族を蹴りあげ、文句を言い始める。
2人の会話についていけず、マルス達は傍観していた。
そこに獣人族が話しかけてきた。
「あの2人はほっといて良い、私たちは君たちを助けに来たものだ。2年ほどだが君たちの先輩となるな」
そのまま話を続ける。
「装置は壊れてしまったが、今回の試験は無効にはならない。
君たちの動きはモニターされているから、それで判断されると思う」
そこで博士から通信が入る。
『……ぃ、おいッ! 聞こえておるか!? 』
「聞こえてますよ、博士」
『また通信が途絶えてしまってな……、先ほどとは違って安定し始めたが結晶を交換したのか? 』
「いえ、装置が壊れてしまったので魔獣を媒介にして安定させました」
『ほうほう、そうか魔獣を使って……何ッ?! 壊れたとなッ!? 』
「後で報告しますのでとりあえず帰還します」
そう言って通信を切ってしまう。
「さて、帰りましょうか」
TFを操作すると足元に転送陣が現れる。
光に包まれ、目を開けると夕日が差し込む講義室に戻ってきていた。
暗い空間。見渡す限り黒一色で、上下左右どこを向いているかさえもわからない。
いくつもの紫の結晶が浮いており、様々なダンジョンが映っている。
その中には石造りの通路を進むマルス達の姿もあった。
【ククク……、面白そうな奴がいるではないか。 少し試してみるか】
姿が見えないが、ただその場に男の声が響き渡る……。
低い含み声だが、自信に満ちた高圧的な口調だ。
突然、各結晶の前に赤黒い光の球が出現した。それは禍々しく赤と黒が渦を巻いている。その光球は結晶に入っていき、各ダンジョンに変化をもたらした。
【さて、ここからどうなるか……、呆気なく終わらないでくれよ? 】
男の声は静かに低い声で笑い出す。
その直後、黒い空間に一筋の光が差し込む。
【チッ……奴が覚醒し始めたか】
次第に光は広がってゆき、暗い空間を白一色に塗り替えた。
そこには外の映像を映し出す多くの結晶が残っていた。
※※※
~魔結晶のダンジョン 最奥~
ダンジョンの最奥でマルス達な赤入墨の魔獣と戦闘を行っていた。
しかし攻撃しているのは魔獣の方で、彼らは回避に専念している。
「ガアァァァァッ! 潰ス……ツブスゥゥゥゥゥゥッ!! 」
巨大な体で石棍棒を軽々と振り回し、地面へと叩き付けてくる。
一撃の動作は遅いが威力はゴブリン達と比べ桁違いであった。
「ええぃ、こんな奴にどうやって戦えって言うんだい!? 」
「今は避けるしかないだろ! 攻撃が効いてないんじゃどうしようもない!」
前線で攻撃を引き付けていたマルスとノエルは必死に避ける。
数分前まで武器で攻撃を行っていたが、魔獣の固い身体に弾かれてしまい傷を負わせられないでいた。
博士の説明によると、魔獣の名はオーク。大きさは2~2.5mほどの大きさ。本来ならばこのダンジョンに出現しないはずの魔獣だ。
赤入墨は体内の魔力が何らかの影響で暴走し狂暴になっている状態で、今のマルス達では歯が立たないと言っていた。
「ただ、いつまでも当たらないとは限らないけどな……っと! 」
会話をしていると当たってしまいそうになる。一瞬肝を冷やしたが瞬時に身を屈め、回避することができた。その際、オークの隙を衝いて攻撃してみるがやはり意味はなかった。ガキンッと鈍い音とたて、弾かれてしまう。
「やっぱダメだ! 皆も回避に専念するんだ!!」
マルスは再度指示を出すが、それを無視して動き出す人物がいた。
「武器がダメなら、魔法を使えばいいじゃない! 」
小人族の双子の姉、マオはオークへ近づきながら詠唱を始め初級魔法のファイヤーボールを放った。火球は真直ぐ向かっていき、直撃した。
「やった! やっぱり私が動かないと! 」
初撃で動きを止めたオークに対し、彼女は続けて詠唱し火球を放つ。
当たった時に発生した爆煙で、オークの姿は見えなくなった。
マオはこちらを向き自信ありげに言う。
「どうよリーダー! こんな弱い敵に何を苦戦―――」
「駄目! マオ、そいつ死んでない!! 」
「え……? 」
突如ソフィアが叫ぶ、マオも彼女に視線を向けてしまう。
再度、煙の方を見た時にはオークが武器を構えながら飛び出し、目の前に迫っていた。
「グラァァァァァッ! 」
雄叫びを上げながら棍棒で薙ぎ払う。マオの頭には走馬灯が流れていた。
まだ親元にいた時の記憶がいくつも浮かんでくる。
「アッ―――」
「マオーーーーーーッ!! 」
小さな影が彼女を突き飛ばした。マオには当たらず、棍棒は虚しく空を切る。オークの足元付近にはセオが這っていた。その場から動けずに止まっている。
突然獲物が消えたことを不思議に思うオークは辺りを見回す。
その隙を逃がさずマルスは背後から飛び掛かった。
「な、ナイスだ、セオ! 時間を稼ぐから早くそこから! 」
オークの首に下げていた紐に掴まりながら剣を刺そうとするが、固い肉体には刺さらず僅かに沈こむだけだった。何度も突き立てようと繰り返していると、不意に脚を掴まれ宙吊りにされてしまう。
「アッ?! ……っとこれはマズイな」
マルスの目の前にはオークの顔が見える。周囲を見てみるが2人とも離れたようだ。オークは不快な表情をしており、棍棒をマルスの顔に向かって振るう。
「ちょ……待てって! 」
鉄棒で腹筋を行うように器用に避ける。そんな中博士から通信が入る。
『無事か……っておいッ?! 何をしとるんじゃッ! 』
「ごめ……ちょっと、これは……腹筋に…………効く」
『そんな事言っとる場合かッ!! 回避に専念しろと言ったじゃろう!』
回避することで必死で博士の通信はマルスの片耳からは抜けていた。
ソフィアは代わりに現状を説明した。
『なるほどな、またお主が原因か。しかし、叱っておる時間も無い! 一か八かじゃが試すしかないな、ノエルよ! これからワシの指示通りに動け! 』
一番魔獣の近くにいたノエルをオークの背後まで移動させ、さらに指示を出す。
『良いか? 今から技の使い方を教える。お主らので効果があるかわからんがマルスを救うには賭けるしかない!』
ノエルは形成した武器を構える。武器形状は両手持ちのスレッジハンマー、大きな火力を期待できる得物だ。実際に対ゴブリン戦では一撃で仕留める時もあった。
「ホントにそんな感じで使えるかい? 」
『やるしかないじゃろう! でないとマルスがやられてしまうぞ? 』
マルスの回避反応が遅くなってきており危なくなってきていた。
軽く深呼吸をすると、オークに向かって走り出し、手前で飛び上がった。
「スタンインパクト!! 」
振り上げたハンマーのヘッド部は赤く発光しており、そのままオークの後頭部目掛けて勢いよく振り下ろす。赤い光が弾け、ゴンッと鈍い音がしたが先ほどまでの攻撃とは違う反応を見せた。
「ガッ……ァア……」
明らかに苦痛の表情をしていた。あまりの衝撃にマルスを放して頭を抱え、膝を付いた。そのままマルスは背中から落ちたが受け身を取り、体勢を立て直す。
「痛ッ……けど助かった! 」
「礼は後でにしとくれ、とりあえず今のうちに下がるよ!」
オークも少しの間は動けないようだ、作戦を練るなら今しかないだろう。
2人は仲間の元まで後退する。
『さて、アヤツに技が効果ありとわかったところであまり状況は変わらん。足止めできたとしても数秒が良い所じゃ』
「効果があるなら攻めた方が良いのでは? 少しでも相手の体力を削っておけば有利になっていくと思いますが」
『言ったじゃろう、効果はあっても状況は変わらんと。良いか、これからも回避を主体に考えて動くのじゃ。一旦ワシは増援側に通信を移すぞ』
マルスの提案も却下されてしまい、一応博士は各自に技の使用方法を伝えてから通信を切った。
「さて、どうしたもんか……」
「とりあえず回避主体で戦って、隙があったら技を試してみようよ」
「よし、そんな感じで行こうか。 俺とノエルはさっきと同じ、ソフィア、セオとマオは後方から援護で」
話し終わるとオークも立ち上がり、こちらを睨みつけ咆哮する。
部屋中に響き渡り思わず耳を塞いでしまう、再度見た時には両腕に血管が浮き出ていた。オークの持つ技の一つ、ウォークライだ。大声を出すことで士気を高め、力を増すらしい。
「増援が来るまで踏ん張るぞ!! 」
マルスの掛け声とともに戦闘が再開された
※※※
~魔結晶ダンジョン スタート地点~
マルス達と同じダンジョンにはもう一つのチームが到着していた。
先ほど博士が話していた増援だ。
「あ~、アカン。 何か構造まで変わっとるやん」
「そんなことはどうでもいいでしょう? 早くいきませんと後輩達がミンチになってしまいますわ」
「空気中の魔力も不安定だ、急ごう」
チームメンバーは独特な話し方をする正人族、お嬢様風の小人族、寡黙な雰囲気の獣人族の3人だ。獣人族の手にはTFがあり、魔力の波形が激しく波打っていた。
正人族も地図を確認するも画面には構造不明の文字しか出てこない。
「厄日やわ~、しんどい……」
「愚痴ってないで行きますわよ! 」
小人族は後ろから正人族の脚を蹴り、進んでいった。
「痛ッ!? 蹴らんでもええやん……」
「いつまでも暗い顔しているからだ、置いてくぞ」
獣人族も行ってしまい、残ったのは正人族だけであった。
頭を掻くと「待ってえな~」と言いながら追いかけて行く。
※※※
オークと戦っている中、一つ違和感を感じていた。
隙を衝いては何度か技を当て傷を負わせていたのだが、相手の勢いは全く衰えない。むしろ、常に全力攻撃をするぐらい元気だ。
「どんだけスタミナあるんだよ!? 」
オークの身体をよく見てみると、後頭部にノエルが負わせた青い痣が無くなっていることに気づく。それ以外にも細かな切り傷等も薄くなってきており、驚異的な速度で身体が再生しているようだ。
「傷が……無くなってる!? 確かあそこに痣があったのに……」
ノエルも気づいたようだ。どうやらこの魔獣を倒すには一撃で倒すほどの火力が必要らしい。しかし博士が言った通り、マルス達は力を付けたばかりの新人……そのような技は習得していない。
「マルス、もう一回だけあの技をお願いできるかな? 小っちゃい傷が付けば……」
「何かあるのか、ソフィア?」
頷いたことを確認するとオークを見る。イノシシように地面を蹴り、右肩を突き出すと、巨体を揺らしながら突進してきた。そこでマルスも一つの考えが浮かぶ。
(危ない賭けだけど……やってみるか)
剣を左脇に構えた。抜刀を行うような構えだ。軽く深呼吸し、集中する。
速度を上げながらオークが向かって来るが、そのまま続ける。
剣身が蒼く発光し始める、光は徐々に大きくなってゆき、炎のように揺らめきだした。
「ガァァァァッ……ウガッ!?」
オークもその光に気づき、減速しようとするが手遅れである。
勢いの突きすぎた巨体はそのまま突っ込んでゆく。
「今だ! 烈風刃(れっぷうじん)ッ!! 」
剣を振るうと蒼い衝撃波が放たれる。勢いよくオークの元まで飛んでいき、直撃したように見える。しかし、オークは当たる直前で身体を横に振り機動をずらしていた。マルスの横を通り過ぎ、後ろの壁に激突する。
部屋は大きく揺れ、パラパラと塵が落ちてくる。
「……アブな! 外しちまったか!?」
後方ではオークがユラりと立ち上がり、こちらに振り向いていた。
マルスが放った一撃は外れたと思われたが……
オークの右肩に亀裂が入り、血が噴き出してきた。
突然の痛みに思わず手を当て膝を付いてしまう。
「イ、イデェッ!」
自身の手を見ると赤黒い血が付いており、その顔は怒りの表情をしていた。
吠えようと息を吸った時、肩の傷口に矢が刺さる。
「グフォッ!? ゲハッ ゲハッ?!」
再度痛みに襲われ咽ってしまう。
隙ができた時、ソフィアが指示を出す。
「マルス、その矢を切って!! 」
「お、おうッ、わかった!」
オークも咳が落ち着いた所を狙われて勘違いをしてしまう、もう一度あの技を撃たれると……棍棒で防御するように前へ構えるもその予想は外れる。
マルスは刺さっている矢を切り裂き、後退した。
「切ったぞ! 何が起こるんだ? 」
「ディザスターアロー、傷を悪化させる技だよ! 」
切られた矢は光の粒子となり、傷口に入ってゆく。全体が白くなると、血が勢いよく噴き出し始める。次第に傷も深くなっていき、オークの右腕は動かなくなった。
「なんで初めから使わなかったんだよ!? 」
「だって異常に回復速度が速いんだもん。連発もできないしさ」
彼女は元々武器の扱いには慣れていた。ダンジョンの魔獣との戦闘、さらに技の使い方を聞いてから何か掴んでいたのだろう。2人の会話を遮るようにオークは吠える。そこでマルス達は衝撃的なモノを見る。
突然オークは自身の右腕を掴み、力を込めた。
血の勢いは増し、筋肉が無理やり裂ける不快な音がする。
「ォォォォォオオオオオッ!! 」
完全にオークの右腕は千切れた。肩から先が無くなり、左腕で持ってしまっている。
「おいおいおい……」
「さ、さすがにこれは予想外だよ……」
痛みを感じていないわけではない。暴走状態だからこそできたことなのだろう。
自身の重りとなる腕を捨て、それを武器として使用するつもりだ。
右腕だったモノを上に掲げ吠えると、呼応するように赤い入墨が発光する。
肩から噴き出していた血は止まり、右腕だったモノが変形し始める。
左腕と一体化し、肘から先は赤黒い結晶に覆われ、形は棘の付いた棍棒のように見える。さらに肩当のような防具も形成され、防御力が上がっている。
こちらの左半身への攻撃は完全に無効化されてしまうだろう。
「ゥゥゥウオオオオオオオオッ!! 」
今までの突進とは違っていた。攻撃時に大きく肩当を展開し、面積を広げていた。マルスも全力で回避行動をとらなければ当たってしまうほどだ。
壁にブツかっても関係無しに動き回る。不規則に跳ね返り、どんどん速度を上げてゆく。回避を行っているうちにマルス達は部屋の中央に固まってしまう。
「なっ……追い込まれた!? 」
「だんだん速くなってるよ! このままじゃ……」
「とりあえず皆で背中を合わせるんだ! 攻撃方向を見極めて回避するしかない!」
各自背を合わせ、跳ね返るオークを目で追う。しかしぶつかった時の振動で部屋自体も大きく揺れるため、
反応が遅れてくる。6度目の突撃では完全に回避が遅れた。
「み、みんな! こっちか―――」
セオも必死に叫ぶが、すでに赤い塊は目の前に迫っていた。
全員が死を覚悟した時、閉まっていた扉が爆発した。
当たる直前でオークは装置のある方向に吹き飛ばされ、誰かの声が響き渡る。
「ストライクですわ! 」
※※※
援軍の3人は順調に進み、マルス達のいる部屋の扉前まで来ていた。
しかしそこには赤入墨の魔獣が群れており、扉に向かって攻撃していた。
「扉閉まっとるやん、しかも赤入墨がウヨウヨと……」
箒頭の正人族は気怠そうに言う。
「まとめて塵にしてしまいましょう。 援護頼みますわよ」
そう言うと小人族は武器を形成する。右手には小柄な身体には似合わない大きさのランスが出現する。扉に向けると、持ち手で何か操作し始めた。
円錐状の先端から半分付近が花のように展開し、地面に固定された。その姿は大筒の構えに近い。
持ち手を回転させると、エンジンをかけるような音が響き渡る。
魔獣たちも気づき、襲い掛かってきた
「……援護を開始する」
獣人族は静かに行動を起こす、詠唱を始めたかと思ったら一瞬で火球が複数放たれる。連撃は収まらず、火球以外にも氷塊、風、岩などを織り交ぜながら放ち続けていた。
「しんどいわ~……」
正人族も獣石を取りだし姿を変える。白い毛並みのワーウルフに変異し、魔法の間を縫うように接近していく。体術を駆使し、魔獣を一か所に集めていった。
最期の一体を蹴りあげると、準備ができた小人族が声をかける。
変形したランスの前には限界まで溜められた魔力の塊が発生していた。
「準備完了ですわ、そこをどきなさい!」
「ちょ、ちょい待ってえな、巻き添えは勘弁でっせ! 」
瞬時に後退し、2人の元に戻ると変異を解いた。
「さぁ行きますわよ! 塵になりなさい、オーバーエクスプロード!!」
魔力の砲弾が発射される。扉に向かって真っすぐ進み、魔獣達は飲み込まれてゆく。
勢いは止まらずそのまま扉を打ち砕き、オークに直撃した。
「おぉ~……まぐれか? 」
「ね、狙って撃ったに決まってるでしょう! 私の実力、ストライクですわ!」
吹き飛ばした方向が装置のある場所とは気づいていないようだった。
マルス達の元まで近づきながら確認してみるが、煙でよく見えない。
その中からオークが飛び出すが動きを止めてしまう。腹部は大きく裂け、顔の皮膚は一部焦げ片目を失っていた。先ほどの一撃で身体の損傷が酷く、オークは再生を始める。それを見た正人族は顔を歪める。
「うっわ……暴走状態で異形化、超再生のおまけ付きかいな、しかも装置も壊れとるし」
「えっと……あんた達はもしかして……」
「もしかしなくても援軍や。しっかし、よう耐えたなぁ」
マルスの問いに答えると、何かを求めるように手を差し出す。
「結晶、持っとるか? 」
「え? 」
「制御の魔結晶や、はようせんともっとメンドくなる 」
「わ、わかりました! セオ、渡してくれ」
箒頭の正人族の手に結晶が渡される。すると獣石を使いワーウルフに変異した。
「とりあえずの応急処置や、その再生力……利用させてもらうで」
オークの目の前に一瞬で移動すると、腹部の傷口に結晶を深々と差し込む。
反射的に腕を振るうも、抜きながら下がられた為当たらなかった。
変異を解きながら戻ってきた正人族の白い毛は赤く染まっていた。
「うへぇ、気持ち悪いわ~」
相手に背を向け血を払うように手を振るう。
オークもそのまま黙ってはいない、しかし走り出そうとした時身体に異変が起こる。自分の脚が動かないのだ。
前に進もうにも足の裏が地面に張り付いたような動きをしてしまう。
動かない部分は広がってゆく、もはや上半身を捻る動きしかしていない。
「な、何が起きて……? 」
「アイツを媒体にしてダンジョンの魔力を制御しとるんや」
よく見るとオークの脚は結晶化していた。
色は持っていた結晶と同じ白色、徐々に身体を侵食していき、全体を覆ってしまった。
「よし、これでOKや」
「OKや……じゃありませんわ!」
小人族は正人族を蹴りあげ、文句を言い始める。
2人の会話についていけず、マルス達は傍観していた。
そこに獣人族が話しかけてきた。
「あの2人はほっといて良い、私たちは君たちを助けに来たものだ。2年ほどだが君たちの先輩となるな」
そのまま話を続ける。
「装置は壊れてしまったが、今回の試験は無効にはならない。
君たちの動きはモニターされているから、それで判断されると思う」
そこで博士から通信が入る。
『……ぃ、おいッ! 聞こえておるか!? 』
「聞こえてますよ、博士」
『また通信が途絶えてしまってな……、先ほどとは違って安定し始めたが結晶を交換したのか? 』
「いえ、装置が壊れてしまったので魔獣を媒介にして安定させました」
『ほうほう、そうか魔獣を使って……何ッ?! 壊れたとなッ!? 』
「後で報告しますのでとりあえず帰還します」
そう言って通信を切ってしまう。
「さて、帰りましょうか」
TFを操作すると足元に転送陣が現れる。
光に包まれ、目を開けると夕日が差し込む講義室に戻ってきていた。
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