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終わりの始まり
終わりの始まり 後
しおりを挟む睦井たちの乱入があったがそれ以降は何事もなく訓練が終わり、俺たちは自分の部屋に帰っていった。
訓練所を出るとき、空深の所に兵士が一人来て何かを話していた。少し遠くにいたから聞き取れなかったけど、兵士の後を空深が付いていった辺りから王様が呼んだのかな?
そんな疑問を持ちながら時間が過ぎ夕食時、空深の姿は無かった。居ないついでで東も居なかった。
偶然近くを通った兵士に空深の事を聞いた。なんでも、思ったより話が長引いてるようだ。だけど、目の前の兵士が何故か異様に怯えているのが気になった。魔族関連の情報でも入ったのだろうか?
先に食べていていいとの事なので夕食を先に食べることにした。
ーー時は空深が王とあった時に遡る
空深は困惑していた。兵士に連れられ王の居る場所に来たのはよかったのだが、今まで見たことない人が多数居たからであり、その人たちが貼り付けたようなニコニコ顔で話しかけてきていたからだ。
着ている服は、かなり良さそうな感じのものであり、貴族なのだろうとは空深も予想ができた。だが、こっちに来てからは基本、訓練ばかりして来たため困惑する事態になっていた。
なんとか愛想笑いを浮かべやり過ごしていると、別の貴族が贈り物をしたいと述べ、1つのペンダントを取り出した。ペンダントは赤色の宝石にメインとしたシンプルながらかなり高価そうな代物だった。
思わず、空深も目を奪われるが、すぐに、我に返り断ろうとする。しかし、それを止めるように空深の肩を誰かが掴み止めた。
振り返ると案内をした兵士が居た。そして空深に耳打ちをする。
「このような場面では、受け取って、なるべく付けておかないと少しまずいのです。」
それを聞いて空深は思わず、「どうして?」と聞き返してしまう。だが、兵士は答えた。
「メンツがありますので」
それを聞いて空深も納得し、それを受け取り付ける。
本来なら受け取ったものをその場でつける必要はないのだが、それを知らない空深は自分から王が用意した、状態異常抵抗低下の呪いがかかったペンダントを自ら付けるのだった。そしてーー。
空深は自身の変化に気づいた。ペンダントをつけてから頭に霧がかかったように意識がぼやけてしまう。それは、時間が経過する事に酷くなる一方だった。
空深は気力を振り絞り、なんとかペンダントを外し、遠くに投げたのだが、時は既に遅かった。体から力が抜け、空深は膝から順に床に倒れてしまった。
それを見ていた者は皆無言だった。それは、心配をしていたからだ。ただ、空深の心配ではなかった。催眠がかかったどうかの心配だった。
固唾を飲んで見守る中、部屋の隅から東が歩いてくる。そして、倒れている空深の前まで行くと真っ白な、何も特徴のない仮面を付けて一言呟く。
「立て」
命令を受け、すぐさま立ち上がる空深。ただし、その目には光がなく、どこか虚ろな目だった。
そんな空深に、東は命令をする。
「お前の恋人をーー魔王を始末してこい」
空深からの返事はない。だがゆっくりとだが、しっかりとした足取りでこの部屋から出て行くのだった。
催眠が掛かり、自由な行動が出来ない空深だったが、何故か意識だけはしっかりとしていた。それ故に、必死に寮の部屋に向かって歩くこの足を止めようと必死に足掻いていた。
だが、それでも催眠に掛かった空深の体は止まることは無かった。
(止まってよ!どうしてなの!?止まってよ!このままじゃあ、亮が!亮が!)
そんな必死な思いとは裏腹に、空深はとうとう亮の部屋の前に辿り着くのだった。
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