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後始末はしっかりね? 1

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航太から電話を受け、たまたま近くのファミレスでお茶してたオレと夏樹はとりあえず、航太達がいる学校に向かう。
 
 
色々と思うことはあれど、とにかく学校内でいそうな所を事務室で聞いて向かう。
少し前に授業自体は終わっているようで、今見ているとすれば、部活動じゃないか…と教えてもらったので、片っ端から使っていそうな場所を当たるか…と思っていたところ、すれ違いざまに男子生徒が騒いでいる内容が耳に入った。
 
 
「あの外人って、津村先輩のお父さんだよな?」
 
 
一瞬かちりと止まって、思わず夏樹を見る。


「カイト?行こうよ。とりあえず行かないと」
 
 
嫌な予感しかせず、足を止めたオレを急かす夏樹。
今すれ違った生徒が来た方向に行くと、体育館の脇の建物…武道館の入口には予想通りの人集り。人を掻き分けて中に入ってみると、道着を来たハルトさんと、確かあれは自分達より1つ下の、今年居合部の部長になったヤツじゃないかと思い、ちょっとげんなりする。
 
 
あいつ…オレにもやられてんだよなぁ……
 
 
ふと3年生の始めの頃を思い出す。
合気道の県予選の1ヶ月前、同じクラスの合気道部の部長をやっている田村から助っ人を頼まれた。それも、よりによって団体戦の大将戦の……。
怪我をした自分の代わりに出てくれないか…と頼まれたが、当然断った。
部活内で強いやつならいるだろうと。
確か、下の学年でいたはずだ…と言ったら、あいつはダメだと言った。理由を聞いたら…怪我の原因があいつだと、今年部長になったあいつだと言っていた。
自分の証言しか証拠が無く、事件として扱えず事故扱いになったそうだ。
 
 
ちなみに…田村の怪我は全治2ヶ月で、自分が出れないとなると補欠の2年…今年部長になった長嶺が繰り上がりで出るようになるのだが……個人の感情を持ち込んではいけないと思いつつも、割り切ることができなかったそうだ。
 
 
コーチに直談判したところ、オレに助っ人を依頼出来たら田村の意向をのむと言われ、嬉々として来たらしい。
まぁ…コーチの先生には、個人的にお世話になってるしなぁ…と思うのだが、なんとも微妙な気分だった。


一応…カイトは段持ちで合気道部にも所属になっていたし、コーチが所属していた合気道の団体に所属して、練習や昇段試験は受けてもいたけれど、部の所属の件は…コーチの個人的な理由だ。


武道に怪我は付き物だけれど、控えに目星めぼしい選手が居らず、苦肉の策だった。
 
 
結局のところ3年になるまで出番はなかったが、最後のそれが厄介だった。
田村の言う事を全面的に支持する事もできず…かといって、長嶺を出場させるのもタイミング的にあまり良いとは言えない時期だったようだ。
 
 
最終的には…オレと長嶺が試合をして、勝った方が本番に出ると言う事になったんだけど…オレ勝っちゃったんだよね。余裕で。
実はギリギリ位で負けようと思ってたんだけど、負けられなかったんだよなぁ。
 
 
結局、県予選・県大会とオレが出て、県大会では3位に入ったところで、3年生の出番は終わった。
 
 
あれ以来、長嶺の目が怖くて武道館には寄りつかず卒業になったんだけど……。
なんでこんな事になってんの?思わず、航太とコーチに文句を言いそうになってしまった。
 
 
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