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プロポーズ大作戦 1
しおりを挟む「この指輪の内側、なんて刻んであると思う?」
指輪を大事に懐かしむように指先でクルクルと回す。
向こうの時間ではまだ5年かもしれないが、母さんにとってはもう18年だ。
懐かしいのかもしれない。
「愛しい娘へ。この想いがあなたを守ってくれるように」
魔法文字で刻んだ文らしい。
王妃様はとても気さくな人らしく、乳母になった母さんにも、とてもとても良くしてくれたらしい。
側妃を何人も娶る王が多い中、国王を完全に手のひらで転がし、「妃」と付く女性は自分1人、あとはお茶会をする程度のいわゆる"茶飲み友達"で済むように、夜も昼も頑張っていた、こっちで言う恐妻...良い言葉を宛てがうとすれば…女傑というのが相応しい人らしい。
どんなに優秀でも、どんなに強くても、どの世界でも女性は苦労するらしい。
あちらの世界での王妃様や母さんは、地球で言うキャリアウーマンなんだろう。
夏樹が、あちらの世界に行って揉まれながらでもやって行けるのか…それ以前に、王女なら...オレとの結婚なんて難しいのではないか。
考えれば考える程ドツボにはまっていく。
隣の夏樹も心ここに在らずという感じだ。
「なぁ、母さん...記憶が戻った後、夏樹にすぐ会わなかったのは?何か理由が?」
夏樹が王女だと聞いた時から不思議に思っていた事だ。
探しに来たなら帰る時に連れ帰るだろう。
でも、声さえ掛けなかった…...なぜ?
「ん~......夏樹ちゃんの性格を考えたのはもちろんなんだけど、あっちの情勢が判らなかったのが1番ね。一度あちらに戻ってみて、大丈夫なようなら連れて行こうと思ってたの」
あのまま王弟に乗っ取られていたならば、夏樹は地球に残した方が幸せだろうと思っていたらしい。
ちなみに...異世界に渡る為の道は、1度開けば固定できるらしい。多分、今んとこ母さんだけしかできないだろうけど...との事。
魔力は使うが、母さんが行来するには殆ど問題にならないらしい。
やっぱ規格外だったか...母さん。
⚫〇⚫〇⚫
「あのっ……」
今までほとんど聞き役に徹していた夏樹だった。
「あの...私...どんな所か解りませんが、異世界行ってみようと思います。マリさんの魔法で、時々なら戻ってもこれるんですよね?」
もっと迷うのかと思っていたけど、そうか…時々戻ってこれるなら、少し遠くに引越した程度の距離感だろうしな。
「ん~...まぁ、時々はね。でも、さっきキースが言った通り、こちらとあちらでは時間の流れがちょっと違うから...そこは注意かな?」
あとね…と、母さんが話し始めたのをきっかけに、今まで聞けないでいた異世界の事を聞いてみた。
ちなみに、その中での1番のビックリが年齢の事だった。
魔力が強いとそれに伴い寿命が伸びるそうだ。
あちらの世界では、色々な種族がいて、種族によって寿命が違うらしい。
で...もっとビックリしたのが、婚姻の契約をすると、寿命が永い方に合わせて伸びるらしい。
Oh!ファンタジー!ですよ。
ただ、それも色々とあるらしく、人によっては、婚姻という形をとらず、パートナー(日本で言う事実婚ってやつ?)という形をとる人達もいるらしい。
長生きが良いとは限らないからな。それと...
「今更な話なんだけど…」
どうせなら自分の事を聞いてみよう...と、ふと思った。考えてみたら、自分の事知らないんだオレ……。
で……結果ですが、ビックリ仰天...
ボク ヒューマン種ジャナイミタイデシタ。
父親が獣人(人狼種)で母さんがエルフ。
で...多分、寿命はエルフの方に寄っていると思うとの事だった。
ハーフは純血種よりも寿命は劣るらしいけど、人狼種の強靭な身体もあるし、魔力も多いだろうって。
で...それを聞いた夏樹がキラキラした目で、オレの頭の辺りを見ている。
正確には、ケモ耳があったらその辺に生えるよね?という辺り。
……夏樹さん?目が怖いんですけど。そんなに見てても生えては来ないよ?多分。
なんて思ってたのにぃー!
「あっちに行けば、多分カイちゃんももふもふの仲間入りになると思うのよ~。やっぱり、獣人も魔素が少ないと、本来のチカラが出ないらしいのよねぇ~」
と満面の笑み!?
「だから、安心してお婿にもらってもらって良いのよ?我が息子ながらオススメ物件よ~」
と、爆弾を投下した……。
バレてた?やっぱり?ってな感じですよ…。
一応だけど、ウチも爵位持ちだから...
と追加で爆撃。
でも...憂いはちょっと晴れた。
尻込みする必要はなかったみたいだ。
ならば改めて……
「夏樹?今までの話を聞いた上でもう一度言うよ。オレと結婚してくれないか?」
思わず、親公認プロポーズになっちゃったけど、許してくれるよな?夏樹?
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