ある雪の日に…

こひな

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雪の日に

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あの日、私は突然世界に放り出された。






「いつまでも俯いていたら、あの人が悲しむよ」


知ったような口を訊く今私の横に座っている女は、私の最愛の人の妻……だった人。そして私は、今現在その女の義理の娘という立場だ。義理と付けることから、血が繋がっていないことは理解して貰えるだろう。


「悲しむって……お兄ちゃんのことだから、もうさっさと『よっしゃ、新しい人生楽しむぜッ』とか言って転生準備でもしてるんじゃない?……多分、私のことは気にしてないと思うわ。貴女もいるし。それに、お兄ちゃんに心配されるような生活はしてなかったしこれからもしない……つもり」


滲み出そうな涙を吹き荒ぶ風で誤魔化し、菩提寺の参道に足を向ける。

今日は癌で亡くなった兄の49日。
身内がいない私と……身内と縁を切った兄に法要に呼べる身内はなく、なんとなくもの寂しいけれど、きっと兄は気にしてはいないだろう。そういう人だ。


「じゃあ、帰ろっか。うるさい輩が出てこない内に色々手続きも進めちゃおうね」


一際強く吹いた風に身を震わせた彼女が前を歩く。今日も彼女は元気だ。……いや、いつもか。


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