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87、冒険者仲間の正体は……

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婚約式から半年。
婚約の周知後、ソラが何日も戻ってこない……とか、虚ろな目をしたスラム街の住人が公爵邸に押し入ろうとしたりするトラブルはあったものの、令嬢本人が突撃してくるようなことは一度もなかったらしい。
そして……。


「ドリスデン侯爵ご本人が行方不明だ」


昨日、疲れた顔で帰ってきたロイス様が教えてくれた。
色々と悪いウワサがあり、恨みを抱く者が多い為何らかの事件に巻き込まれているのではないかという話もあるのだけれど……。


「俺は、闇の精霊が関与していると思う」


王太子殿下が断言したそうだ。
ロイス様によると、王太子殿下はが鋭いらしく、今までこうしてしたもので外したことはないらしい。


は女神さまにあいされているからね~』


そういうのは、表向き私の護衛兼従者であるアーセルことソラだった。
こうして念話で話しかけてくるのも時々あるので、以前は普通に話せばいいのに…と思ったのだけれども、どうもこういった類の話は、あまり広められない話らしく、ロイス様にも今のところは内緒なのだ。


『あの王子は初代勇者の魂を持つもの。初代勇者は女神さまが初めて好きになった。女神さまが守る、この世界でただ一人女神の加護を持つ者』


ロイス様とお茶を飲みながらのひととき。
ソラの念話を聞いて、思わずお茶を吹き出しそうになった……のは内緒にできなかった。
頑張って我慢して、咽て咳込んで……ロイス様にとても心配をかけてしまった。


「そういえば……婚姻の儀の際には、ロイス様のご両親にはご出席いただけるのでしょうか?」


一年後の婚姻の儀に向け準備を進めているのだけれど……なにぶんこの公爵邸には女手があまりない。
本来なら、ロイスの母が主体で婚姻の儀に向け準備を進めなければいけないのだけれど……。


「母はやはり出席しないそうだ………」


こればかりはしょうがない……と寂しそうに呟く。


「貴族の末端の出である自分が王族も出席する婚姻式になど出られるわけがないだろう……と、ジュリが予想した通りのことを言ったよ。婚姻の儀の差配や準備も数えるほどしか見ていないので、見よう見まねででもやれる自信がないと謝っていたよ」


シュタイン侯爵家も大概な家だと思うけれど、ロイス様のお家も中々複雑らしい。
なので……


「マリーさんに依頼としてお願いできないでしょうか?」


前世であれば婚姻ももっと簡単にできるのに……なんて思いながら、次の案……以前から考えていたことを提案してみた。マリーさんの身分が分からないけれど、多分大丈夫だろうと思っていたら、ロイス様はあっさり頷いて、さっそく冒険者ギルドに依頼書を出そうとなった。


なんだ……やっぱりマリーさんも身分高いんだ……と思ったのは内緒。
あの王太子殿下と行動を共にする女性だもんね。
納得納得……であった。


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