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79、嫌な予感
しおりを挟むあれから二日後……。
湖のほとりで惚けていたジュリらしき人物を、王都の公爵邸に連れて帰って来て……
とりあえず客室に泊まってもらっている。
(魔力の気配は間違いなくジュリなんだが……)
あの日、湖のほとりにある繭に結界を張り、少し離れた場所でマリーと二人昼食をとっていた。
……ジュリのことを考えながら。
しばらくすると、予想通り繭に亀裂が入ってきたので、いよいよかと待っていたら、あの時と同じく繭が光の渦に巻き込まれ………気がついたらそこに繭はなく、代わりに白い簡素なドレスを着た少女が立っていた。
マリーと二人、一瞬精霊かと思うぐらい、その少女の魔力は強大だった。
けれど魔力の気配が…波長が……何度探ってみてもジュリなのだ。
(よく見れば、変わったのは髪の色と目の色だけかもしれない)
以前は特に目立つようなことはなく、一般的なブラウンの髪に、さらに色を薄くした瞳の色だった。以前のジュリが言っていた通り、普通だった。色だけは。
そう、ジュリはこの国ではあまり見かけない、サラサラのストレートヘアの持ち主であった。
ロイスがジュリから目が離せなくなったきっかけだった。
(屋敷に来てからはずっと括っていたけれど……少し俯く時にサラサラっと……こう流れるように動くのがいいんだよな……)
公爵邸の執務室で、仕事をしながら考える。
思わずニヤニヤしてしまうのはしょうがない。執務室に出入りするボードウィルに生暖かい目で見られたとしても……。正直、ここまで来たら腹を括って求婚を……と思わなくもないのだけれど、その前に問題がひとつある。そう……闇の精霊問題だ。
「そういえば、ジュリの相棒はどこにいるんだろうな……」
王太子には一応マリーが報告に向かったが、おそらくジュリの精霊であろう魔狼の姿が見えなかった。
マリーとも話したが、元々が常に一緒であったわけではなさそうなので、数日ほど様子を見ようということになった。けど……。
「精霊の行方、ジュリの色素の変化。行方不明だった時期の居場所……」
聞いていいものなのか微妙な物ばかりで、正直気が引ける。
「旦那様……生意気なことを申し上げます。気に障りましたら聞き流していただけると幸いです……」
ロイスの独り言を、横でずっと聞いていたボードウィルが言うには、このままだと恐らくジュリは王城か神殿にて保護という形になるのではないのか……とのこと。いまはどうか分からないけれど、以前のジュリならばその流れは不本意であり、逃げ出すような案件に当たるだろうこと。
そして、もし王城で保護ならば殿下の婚約者に選ばれてもおかしくはない事、神殿に保護ならば、以降はほぼ面会もかなわぬまま、一生を神殿の奥深くで過ごさなければいけなくなるだろうとのことだった。
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