私も異世界に転生してみたい ～令嬢やめて冒険者になります～

４７、非常勤冒険者登場

ソラがさっきからロイさんの足元から動かないのはなぜ？


普段から疲れていても眠くても、ソラのご飯を作り、ブラッシングも欠かさずやり……日々コミュニケーションをとり良好な関係を築いているはずなのに……。


ロイさんの足元で、時々フォンフォンと尻尾をふり機嫌よくスプスピ眠るソラ。
先程ソラからの念話で『この人、すっごい気持ちのいい魔力を出してるんだよ♪』といらん報告をくれたけど、ちょっといじけたい気分だ。


「改めて……なんですが、ジュリエッタ・シュタインと申します。今は、お陰様で冒険者やってましてジュリと名乗っています。よろしくお願いします」


貴族としての名を名乗るかどうか迷ったのだけれど、このロイさんのことは貴族だと知っていたので、最初からきちんと名乗ってみた。


(もう色々な事情もないしね……)


先日父が来た際に聞いたが、最終的に残っていた母の処遇も決まり、父も役職を降り王都の屋敷にてのんびりすると言っていた。
そして、私には、いつ戻ってきてもいいと……なんなら嫁になぞ行かず、ずっと王都で二人で暮らしてもいいと言ってくれたこともあり、わざわざ身分を隠して生活する必要もなくなった……と判断してのことだった。


(結婚はしたいのよ……ただ、こんな変わり者の令嬢と……なんて言うおぼっちゃまはいないだろうから、貴族位がある人とは難しいだろうけど……)



⚫〇⚫〇⚫


他愛もないことのひとしきり話したあと、ロイさんはふと息を吐き、いきなり頭を下げた。


「ジュリ殿には……いやジュリ殿だけでなく、今回のことや今までのこと、色々と申し訳ないことをした」


いきなりの事でわけが分からずいると、ロイさんはフルネームを名乗り、前ノートル公爵は従兄弟に当たるということだった。


「いや……まぁ、あの……ははっ。多分ですけど、今回の件がなくとも私は多分、あのまま貴族らしくは出来ていなかったと思います。いずれ機を見て家を出ていたと思います。あのことがあって良かったとは思いませんが、何もなければ、父や兄に説明して……というのも中々難しいと思うので……。それと母のことは……母のことはあまり知らなくて…。お恥ずかしい話ですが、母と言うよりは時々、理不尽なことを言ってくるおばさんみたいに思っていたので。父や兄がどう思っているのか、今現状どんなに大変な思いをしているのか、分かりませんが、私自身は逃げ出したことで、特に何も思っていませんので……」