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33、予定は未定

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予定は未定。
そっと出るはずがそんなわけにもいかず……。
おまけに、マルスさんの横には見たことのある……だいぶワイルド味が増し露出が多くなったマリーが座っている。


「ジュノさんお帰りなさい♪」


そう言ってお茶を出してくれたのは、つい今朝ほどこのモックの街を出るにあたり『気を付けて♪』と見送ってくれた、この宿屋のマスコットガール。


「っていうか、なぜ僕が怒られている感じになっているんですか?それに……マルスさん?そのお隣の方は?」


もしかしたらマリーに似た冒険者さん……という可能性も無きにしも非ず……なんて思ったのは無駄な足掻きだったようで、当初の見た通り、シュタイン家で私の侍女をしていたマリーだった。
この宿に戻ってくる道すがら、『黙って街を出るなんて酷いじゃないか』とよく分からないことをマルスさんに言われ続け、なんだかすっっっっごく疲れた。そして……


「申し訳ないのですが、僕のことはジュノと……性別は男です」


そう宣言して今に至る。
マリーは長くもない侍女生活のせいなのか、何度かお嬢様と呼びそうになったけれど、多分ギリセーフだろう。そう思った瞬間、マリーが何かを呟き、私達の周りに薄い膜のようなモノが出来た気がした。


(結界……じゃない?遮音?)


初めて見る魔術に少し驚いた。
こういった術を使うのは、やはりAランクの冒険者だからなのか……はたまた貴族の依頼を受けたりするからなのか……。
二人のやることに少し興味が湧く。



「まずは……私が受けていた依頼の件ですが、本当の依頼者はお父上です。あなたを守り何かあれば逃がすようにと……それと……ギルドに私宛に手紙が来ておりました。『もし会えたら伝えて欲しい』と手紙が入っておりましたのでまずはこちらを……」


そう言って渡されたのは、確かにお父様の手で書かれた、少し大胆な筆跡の手紙だった。


『今まで上手く守ってあげられなくて申し訳なかった。君が外に出たがっていたことはエリウスからの話で薄々気が付いていたので、分かっていたよ。冒険者ギルドに口座が作ってある。当面の資金に使いなさい。そしてできれば強くなりなさい。もし難しかったらの所に戻ってきなさい。貴族令嬢である君には難しい世界だというのは私も知っているからね。でもなるべくなら足掻いてみなさい。お前の母からの干渉がなくなるまでは……』


短い数行程度の手紙だったけれど、ジュリエッタのことを知っていてくれていたことが嬉しかった。
毎日王都の屋敷から通っていたお父様と違って、私は週の大半を学院で過ごしていた。
週末こそ屋敷で過ごしてはいたけれど、思えば接触は最小限だったから、前世を思い出してから一度も会っていない。なのに……。


思わず泣きそうになってしまったけれど、気を取り直してマルスさんとマリーに視線を戻す。


件は分かりました。では本題に………なぜ僕は勧誘されているのでしょうか?」


そう……帰りの道すがらした話の大半は、マルスさん達のパーティーへの勧誘だった。
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