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26、令嬢の末路
しおりを挟む「そもそも、なぜ私があの王子に媚びを売らなくちゃいけなかったのよっ!」
第一王子は病弱でいずれ廃嫡になると、大神官に言われ、第二王子に言い寄り周囲を唆し、あの気に入らない公爵令嬢から奪った。
そして、次は王太子妃に……。
『光属性の稀有な魔力を持つ貴方であれば、男爵令嬢であってもいずれ王妃になれます。確実に……その暁には……』
神殿が王国を牛耳ろうが何しようが、最終的には、私が……この光の巫女が王妃になり神殿も国も思い通りにする……。
その思っていたのに、第二王子の廃嫡・幽閉という沙汰でその夢は消えた。あれだけ私を『光の巫女』と敬っていた大神官も、いつの間にか代替わりし、気が付けば周囲には私を悪役に仕立てる者ばかり。
「これじゃ私が悪役令嬢みたいじゃないっ!物語やゲームではアイツが…あのアデイラが悪役令嬢にならなければいけないのよっ!ねえっそうでしょ!マデウスッ!」
部屋中の物という物に当たり切ったあと、ふよふよと部屋を漂う光の玉のようなモノにキッと視線を向ける。
『どうなんだろうね~ボク、その悪役令嬢って言うのがよく分かんないんだけどさぁ~、キミ……もう光の巫女の資格ないから、ボクはもう帰るよ~』
それまでは部屋の中をふよふよと漂うだけだった光の玉が窓辺へ向かう。
「ちょっ……ちょっと待ちなさいよっ!そんなこと聞いていないわよっ!私が光の巫女なんじゃないのっ!」
令嬢らしからぬ声で光の玉に向かって怒鳴る。
『あれ?言ってなかったっけ?キミには『光の巫女の素養がある』って言っただけだよ~。ボクらは神様の遣いで、この世界にいるであろう光の巫女(神子)を見つけ、見極めて、世界をより良く出来る存在にチカラを貸す存在なんだ。ボクらが見えるからと言って、必ず巫女になれるとは限らないんだよ?そういう点から見ると……キミは不適合だったね……残念だけどここでサヨナラだよ。それと、ボクの名前はマデウスじゃないんだぁ~ごめんね?光の巫女であれば何もしなくても見えたはずなんだけどね』
茫然自失の令嬢を置き去りに、ふよふよと空に旅立つ光の玉。
(ボクの名前を見ることができなかった時点で失格だったんだけど……少しおまけだよ。あの女の子から許嫁は奪ってやっただろ?)
令嬢の願いを少し叶えたことで使命を果たした神の遣いは、クスクスと音にならない声で笑う。
(次はどこに行こうか……楽しみだなぁ~)
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