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12、未来の陰

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そう……私はもう子供でもないし、” 前世の記憶 ” という強い味方がある……多分。
平民より魔力量が多いという貴族を更に上回る魔力量。
おそらくだけれど、王宮筆頭魔術師の人よりは多いと思う。
この学院への入学時に量った記憶では、学院の担当教師に驚かれたらしいので……。
その時より強い魔法が使えるのだから、多分魔力量は増えているはず。

けれど、のんびりぐうたら平凡に生きていきたい私としては、王宮筆頭なんてなりたくないし、魔力量が多い嫁が欲しい貴族へ輿入れし、子供ばかり産まされるのも勘弁してほしい。
そんなわけで、前世の記憶を思い出した後は必死に魔力制御を覚えたのだ。
こんなことで今までの成果をふいにしてはいけない。


「そういえば……明日は編入生が来ると聞きましたが、机などの準備はしてありましたっけ?」


少々強引だけれど、私の婚約者についてのお話はここで終わり。
イリヤ様も違和感を覚えたかもしれませんが、ここは察してくれるとありがたいなぁと思い、新たな話題をキース様に振る。編入生などの机だったりは生徒会管理で準備するので、忘れていたら明日が大変だ。
それに、こういった仕事も生徒会がやるのだ言うことの周知もしなければ、来年から困るのはここにいる私とイリヤ様以外の三人だ。なので……


「キース様のクラスに入ると聞きましたが変更なしですか?もしあれば……」


色々と細々指示をして片づけをして帰ろうかと思った時、生徒会室のドアをノックする音が聞こえた。
学院内に残っている生徒はほとんどいないはずだけど……。


「失礼するよ。明日の編入生のことでね……」


そう言って入ってきたのは王宮の筆頭魔術師であるこの学園の理事長、ダーリッシュ・ノートル公爵だった。


(この人苦手なのよね…………)


魔力量と公爵という地位だけで王宮筆頭魔術師の名を得たとウワサと疑惑のある人物で、ジュリエッタと顔をあわす度に、舐めるように全身に目を這わす。最初は気のせいかと思っていたのだけれど……

(あのウワサも本当かもしれない……)

魔力量の多い貴族の娘を娶り、より強いより魔力量の多い子供を産ませ、いずれは王族と姻戚関係を結ぶつもり……というウワサ。
そしてきっと、そのターゲットには自分も含まれているらしい……と。

(お母様にとっては絶好のチャンスなんだろうな……)

一瞬思考の闇に落ちそうになったけれど、イリヤ様に肩を叩かれ、ハッと我に返ることができた。

「ジュリエッタ様……今日は体調が優れないようなので、ここはキース様と私達に任せて帰ってお休み下さい」


私と理事長の様子を見て何かを察してくれたのか、サッと私の前に立ち理事長の視線を遮ってくれた。さすが王女様付きの侍女さんです。

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