人外さんはお友達 ～私だって仲良くなりたい！～

６８ 学生の本分

「なぁ、お前…今どこにいるんだ？」


ベッドに横になり、何も無い空中に向かって話し掛ける。ひょっとしたら、俺が見えていないだけ、そこにいるのかも知れない。そんな期待を、ほんの少し乗せて発した言葉は、期待の甲斐なく消えていく。


（でも、なんでこの病室？）


母親が言っていた通り、ここはとてもお高い病室だ。しかも、今回は入院理由が理由だけあって、我が家の家計からの持ち出しは一切ないらしい。まぁ、高校の入学時にかなりお金が掛かったっぽいから、正直言うとありがたい。なんて、子供が心配することじゃないとまた言われそうだけどそこはしょうがない。


今はとりあえず、学生の本分である入院明けの勉強のことを心配しないといけないようだ。
しかも、学校に復帰後すぐにテストがあるときた。一応、入院期間のこともあり幾分考慮されることを言われたけれども、出来れば普通に受けて普通に終わらせたい。


（しょうがない……暇な時間は勉強でもするか……）


母親が持ってきてくれたバッグをガサゴソ漁り、いつもの勉強道具を出す。
筆箱の中には、渡利と付き合い始めた時にお揃いで買ったペンも入っている。


『筆記用具ぐらいならお揃いでも何も言われないでしょ？』


俺がらみの周囲の奴が勝手に起こすいざこざに巻き込まれないよう、小さなところから一緒を増やしていこう…というなんかよく分からないキャンペーンの第一弾で買った物だった。
第二弾は確か、キーホルダーだったな…と思い、バッグに付いているキーホルダーを手に取った。
第三弾はいつ買いに行けるか見当も付けられないのが、すっごく寂しい。


「渡利……じゃないのか？陽香？早く戻って来いよ。" お揃い " 早く買いに行くぞ……」


どこかで聞いてくれていることを願って、とりあえず勉強を始めた。
赤点を取らない為に……。