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64 今できる事
しおりを挟む「ウチの人が宮田君に陽香の事お願いしたと思うんだけど…無理はしなくても大丈夫だから…」
そう言った彼女は大きなお腹をゆっくり撫でながら、渡利達のおじさんの言っていた契約の事を教えてくれた。
美里さんとおじさんが結んでいるのは伴侶の契約らしい。
契約というととても味気ないように聞こえるけれど、それもしょうがないらしい。
「私が人間の生を終えると、彼と同じ時間を歩む為に生まれ変わるそうよ。今も多分だけれど影響は出てると思うの。だって私、こう見えても、あと数年もすれば五十よ?それなのに妊娠して三つ子でしょ?普通に考えても難しいのに、高齢でしかも初産。人間の病院ではかなり難しい顔をされて、県外の大きな病院を紹介されちゃった」
妊娠中期に三つ子だと分かった途端、それまで通っていた産院では難しいと言われ、考えた末自分達の一族がやっている系列の病院に転院したらしい。普通の病院では常識が追い付かないらしい。
だって美里さんは、どうみても五十間近には見えないから。
「見た目だけじゃなくてね、身体の組織っていったらいいのかな?そっちも年齢より若いみたいで、出産自体は普通に大丈夫みたいなんだけどね、三つ子でしょ?」
カラカラと笑いお腹を撫でながら、ボソッと呟く。
「陽香も怜もね、体質的には私と同じ感じだったの。普通の人より少し強い程度で、何もなければご長寿さんって呼ばれる人になる程度」
そこまで聞いてふと思う。
じゃぁ…俺が渡利と契約したら?
美里さんと同じような感じになるのだろうか?
「なんの偶然か、陽香は妖精のようになってしまったわ。今はどっちつかずの状態だけれど、本人も納得はしているから……」
そこまで話して、美里さんの検温の時間になってしまったのでお暇することにした。
最後に確認だけして……
「今の状態じゃ渡利は消えてしまうんですよね?」
●○●○
昨日考えていたことを、万葉に相談してみる。
今日も怜くんと宮田が病院行くというので、ついて行こうと思ったのだけれど、やっぱり駄目だったから。
「なに落ち込んでるのよ。遅れている分頑張って仕上げないと」
文化祭が目前に迫り、いよいよ間に合わなさそうなので万葉がカリカリしている。
怜くんは…いつの間にか仕上げてあり、すでに提出済みとの事だった。
「陽香のは…出せないかな…」
水彩の色鉛筆で描いた絵は、画家であるお母さんの絵らしい。
色はほぼ塗り終えてあり、水筆でぼかしたりする作業の手前でストップしていた。
「先生に聞いたんだけどね、この状態でも充分出せる状態だっていうから、怜くんに聞いてみてって。陽香頑張っていたもんね…」
万葉がため息をつく。
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