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48 境目を彷徨う
しおりを挟む頭がズキズキする……気持ち悪い。
ただそれだけ……そして…誰かが泣いてる?
(どうして泣いてるんだろ?)
『だから言っただろっ!初っ端からこれかよっ!』
怜くんが珍しく大声上げてる。
(どうしたんだろ?早く止めなくちゃ…)
そう思うのだけれど、思うように身体が動かない。それ以前にここは…?
こうしちゃいられないという思いで、頑張って目を開けた。
『は?』
目覚め一番の私の一言。
だってしょうがない。
目を開けたら目の前に広がるのは、怜くんのドアップだったから。
「は…る…か?おまっ…なんで…」
驚き顔の怜くんがへにゃへにゃと座り込んでしまった。
『大丈夫っ!?』
出そうとして出したはずの声が…自分の声が聞こえない?もしかして…私…話が出来ない?
●○●○
今、私は病室のベッドで横たわる私の枕元に立っている。
立っているって言っても夢枕とかじゃないからね。
私はまだ死んでない……まだ。
「陽香?体調はどうだ?」
見舞いに来た怜くんが、妖精になってしまった私に…横たわる人間の私の枕元にいる私にはなしかけてきた。そして持ってきてくれたハチミツを小さいお皿に、スプーンでひと掬い垂らしてくれた。
先輩に呼び出されてから既に一週間程経っている…らしい。
あの日、先輩に呼び出された私はあの日、先輩に突き飛ばされたような形で倒れ、後方にあった石に頭を強く打ち付け意識を失った……らしい。で……つい一昨日、こんな形で目覚めた。
まぁ…… " 目覚めた " というのが正しいのかどうかは分からないけれど。
「明日また崇さん達が来るから。あまり身体から離れるなよ?」
怜くんは私が病院に運ばれた日から毎日お見舞いに来てくれているらしい。
もちろん里奈も万葉も…そして宮田君も。
あの日、頭を強く打って気を失った私は、慌てた先輩が連れてきた先生が呼んだ救急車で、ここに運ばれた。
脳波等々検査をしたけれど一向に意識が戻らず、どうしたらいいものか……そんな時に宮田君が見舞いに来て、怜くん激高…となったらしい。ちなみに、検査終了までは面会謝絶だったらしく、面会制限がなくなったその日に、宮田君達は来てくれたらしい。
( 戻れなくなったらどうしよう…… )
怜くんが締めてくれたカーテンの隙間から見える夕日を見ながら途方に暮れる。
多分誰も…崇ちゃんだって思っていなかったはずだ。私がこうしてふわふわした存在になるだなんて。
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