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37 相変わらずな我が家
しおりを挟む両親が帰国して一週間。
あれから色々考えることや感じたことはあったけど、悩んでもどうにかなる訳でもないので兼ねいつも通りだ。
そして今日は、朝から鼻歌を歌い珍しく花瓶に花を生ける母がいた。
今までにない光景なので、とりあえず浮かれている理由を聞いてみた。
「昨日、ギャラリーから連絡あってね絵が完売したって~だからかなぁ~」
おざなりな言葉だったけど、だいぶ嬉しいらしい。それと…あの大量の花束は、父からの絵の完売祝いだろう。
仕事の都合で一緒にいる時間はあまりないようだけど、いつも仲が良いようで子供としては安心だ。
それに…母の絵が完売したということは、母のあの絵が……まるで私が見ている世界をそのまま切り取ったかと思うような、幻想的な絵が認められたということなんだろうと思う。
母本人が言っていたことではないけれど、出産少し前から絵を描くことを控える前までの母は、どんな大きな絵でもどんな小さな絵でも、描けば必ず売れる新進気鋭の画家だったらしい。
その母の絵が、産後変わったと話題になり、それまで持て囃していたマスコミ等が一斉に引いたらしい。
私も見せてもらったけど、絵のことは解らない私にも、分かるくらいはっきりと分かる違いだった。
(これ私が見ている世界と同じだ……)
色とりどりの光溢れる世界……。
言葉にするととても幻想的で抽象的な言葉だ。けど、それは陽香だけが見ている世界だと思っていた。
『人ではない者が見えるというのは特異な事』
そう思い、見ているモノを誰にも言ってはいけないと思っていたから、同じモノを見ている人がいることがとても嬉しかった。でも、世間の風は強かった。
その絵は、産前に描いていた絵とは違い過ぎた。違い過ぎた故に、にわかファン達は母を叩き、持て囃していた勢いそのままにバッシングを始めた。
一定のコアなファン、それに家族としての父・バイヤーとしての確かな眼を持つ父がついていたお陰もあり、母の精神的な部分も自信も失われることなく今に至る。
時々辛そうに画板を見ている姿も度々見ていたので、母の上機嫌なことも上機嫌な理由も、自分のことじゃないけれど、とても嬉しいことだった。
「あれ?そういえば怜くんは?」
お休みの日の朝ごはんはいつも一緒な怜くんが中々来ない事に気が付いて、慌てて母に聞く。
「あぁ、怜はおじいちゃんの大学の研究室に言っているわよ。なんか教えて欲しいことがあるからって、昨日帰ってきた時に約束したみたい」
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