人外さんはお友達 ～私だって仲良くなりたい！～

２９ 人外さんとの契約

崇ちゃんが教えてくれたのは、人外さんとの伴侶の契約のことだった。
聞いていると、人外さん達はあまり男女には拘りがないらしく、パートナーが同性でも普通に伴侶の契りを結ぶらしい。崇ちゃんが私に教えるのを渋ったのは、私とぼんちゃんは伴侶の契りを結ばなくとも、この地にいる限りは今と同じように一緒にいられるかららしい。


人外さん関係の事で、私達人間に言わなくても良いことはなるべく言わないようにしているようだ。
そして……人間のまま彼女達と一緒にいたいと言った怜くんと彼女には、改めて一つ提案された。


「伴侶の契りは言わずもがな双方が望んでいなければ結べないのは解かるな？」


そう怜くんの妖精さんに問いかけた崇ちゃんは、先にテーブルに出してあったキーホルダーを見せて、キーホルダーに嵌まっている綺麗な石に憑くことを提案した。


「この石は特別な石だ。まぁぶっちゃけていえば、おそらく彼女が産まれたであろうと推測する土地の石を使って作った物だ。彼女もこの石ならば憑き直せるだろうと思う」




●○●○




スマホのアラームが鳴る中、いつもと違う寝心地に違和感を覚えて目が覚める。



「そうか…昨日から泊りだったっけ……」


父も母も留守にすることを心配した美里ちゃんに誘われ、崇ちゃんと美里ちゃんの住むお屋敷に初お泊り。
今まで薄ぼんやりとしか認識していなかったことが、昨日一気に解かった……気がした。
そう……『気がした』だけ。


馬鹿ではないのだけれど、基本あまり深く悩まない陽香は難しい話が嫌いだ。
難しい話しは嫌いだから聞かなくていい……なんて事はまかり通らないと知ってはいるので、なんとか頑張って話しを聞くのだけれどなかなか話は頭に入ってこない。昨日は若干それに近い状態だった。


ボーっとしながらも着替えをして、部屋に備え付けの洗面所で顔を洗う。
学校に行くときはブローしていく肩まで伸びた髪の毛も、休みだから…という理由をくっつけて、軽く結ぶだけにして部屋を出た。


『なんだ眠れなかったのか』


話しかけてきたのは、里帰りすると言って陽香の元を留守にしていたぼんちゃんだった。


「やっぱりなんだか落ち着かないからかなぁ～。いつもはアラームでもなかなか目が覚めないのに、今日はアラームが鳴った瞬間パッチリ目が覚めちゃった」