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70、幸せの約束
しおりを挟む「あら…トマスはもう戻ったのですか?せっかくお菓子を作って来たのに……」
婚姻して五年。
俺が王位について四年。
慌ただしかった国政もようやく落ち着いてきた。
先頃はミレーユが二人目の子を身籠っていると聞いて、俺は幸せいっぱいである。
「体調はどうなのだ?動くなとは言わないけど何事も程々にな」
安定してからの妊娠報告だということで、知らされた時にはもう四か月を過ぎた頃だった。
最初の子は身籠ってすぐの頃から体調がすぐれず、本人も周囲もだいぶ大騒ぎしたものだけれど、今回は前の時のようなこともなく、気分良く過ごせているようだった。
「先生からもしかしたら、もう少し後につわりが出るかも…と言われているので、なんとなく…やりたいことは今の内と思って」
笑いながら、いつものように手づからお茶を入れてくれた。
王位継承してずっと駆け足でここまで来たせいか、休むことが下手な俺はこうしてミレーユとお茶を飲むことで、上手く息抜きできている……ような気がする。
「セレナはどうしている?この時間だと昼寝か?」
最初に生まれた子は姫で…亡くなった母上と同じ髪色ミレーユと同じ目の色を持った、とても暖かい魔力を持って生まれた無口……というか、ほとんど言葉を発さない子で、トマス曰くセレナはおそらく私達と同じ前世を持った子供ではないかということだった。
またあの調整者がやらかしたのかと思うと頭の痛い事だけれど、こればかりはただの人間の俺達にはどうにもできない問題だ。前世では世界的な人口増加で、将来は食糧難に陥るのではないかという噂も聞いていたので…推測ばかりになってしまうけれど、あちらの人間をこちらで転生させているのかもしれない。
と……いい方向に考えている俺ってポジティブなのだろうか?なんて。
あちらで亡くなって心残りがある者も多いのかもしれないが、せっかく生まれ変わったのだから幸せになって欲しい。困っているならその手伝いぐらい……保護ぐらいだったら国でできる。
色々調べたら、この国の中枢には転生者や転移者が多い事が分かった。
だから、安心して君も生まれてくればいい。
隣に座るミレーユのお腹を撫でながら思う。
「セレナにも安心させてやらないとなぁ~」
呑気に呟く俺にミレーユが微笑む。
自称調整者の『幸せの約束』は本物だったらしい。
♦♢♦♢
これにて本編終了となります。
お付き合いいただきありがとうございました。
別連載となりますが番外編にて、トマス氏登場の予定です。
そちらも、引き続き読んで頂けると嬉しいです♪
※ファンタジー小説大賞に『俺の彼女はうさぎさん~モニターの向こうは異世界らしい~』にてエントリーしております。合わせて読んで頂けたらと思います m(_ _)mよろしくお願いします。
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完結おめでとうございます
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最後までお付き合い頂きありがとうございました(≧∇≦)/
少し駆け足になってしまいましたが、事件が起きる前にくっつけてしまいました(;^_^A
番外編にてトマス氏や他の人達のことも書いていく予定です。引き続き読んで頂けると嬉しいです♪よろしくお願いします٩(๑^o^๑)۶
執筆お疲れ様でした!
終盤は少々駆け足だった感もありますが、とても楽しい作品でした。
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最後までお付き合い頂きありがとうございました(≧▽≦)
これ以上二人の結婚を延ばしたら、結婚できなくなりそうで、思わず急いでしまいました(;^_^A
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ありがとうございました(//∇//)