64 / 70
64、王位継承権
しおりを挟む「トマス………いや………小林さん。あなたはミレーユにいったい何を言ったんだ?」
至急執務室に来てもらい、原因を究明するべく形だけの尋問をする。
いくら真面目な顔で尋問したって、尋問するのは俺だ。無理は禁物。
けど……
「恐らく、お世継ぎ関係の事かと思います」
さらっと言われ、思わず流しそうになった俺。
世継ぎ…ね。
そうだね…俺、王様になるんだもんね。
おまけに、兄上が廃嫡になったことで第一継承権は俺に、第二以降は現王の兄弟の子…俺の従兄弟達になる。
現王の兄弟…俺の叔父たちに当たる人達は、俺が産まれた時点で継承権の放棄をしているので、今現在の継承順位には入らない。まぁ…父上の兄弟たちが聞き訳が良かったのだろう。王位継承の争いはただの一度もなかったらしい。
「殿下にお子様がお二人産まれれば、前例に習い従妹様方には継承権を破棄して頂く予定でおります。これは陛下始め、現宰相、家臣一同の同意を受けております。ですので、早いうちにお子様を…と言うお話はさせて頂きました。婚姻後三年以内にお子を身籠れないようであれば、側妃を娶る予定もあると……。中々にミレーユ様には酷なお話しかとは思いましたが、国の今後が掛かっております。お子様が出来なければ王位継承での争いが始まるのは必須。これは国にとってはマイナスな事になります。ですので、お気にすることは承知の上でお話しさせて頂きました。それに、ミレーユ様は今後王妃となられます。公爵夫人などのように、屋敷の中だけを差配するのではなく、城を差配し、城の女衆をまとめて頂かなくてはいけませんので……」
王妃教育を受けているミレーユは恐らく授業中も…そして、トマスにも圧を掛けられたのだろう。
そして疲れてしまったのかもしれない。
それほど王族の教育は過酷なのだ。
兄上のようにチャラチャラして自動的に王様に…王妃になれるわけはないのだ。
「分かった。これは俺が出たら不味い方向に行く案件だな。どうしたらいいだろうか……」
正直俺はミレーユだけいればいいのだけれど、王族の…この国の王としては場合によってはそうも言っていられないのだろう場面が来る。まぁぶっちゃけた話、俺とミレーユが色々と仲睦まじく頑張って子だくさん家族にすれば何の問題もないのだけれど、なかなかデリケートな問題だ。単純な話ではない。
色々話をしたいし聞きたいけれど、ここで俺が動いて国の方針を曲げねばいけない状況になってしまったら、将来の継承権争いは必須だ。
「わるい…トマス。辺境伯家へ使いを出して、今回の事とミレーユの説得をしてもらえるよう頼んでみてはくれないか?それでもミレーユがNOと言うなら……辺境伯家縁の者から妃を選ぶ。今更他国や他の貴族の娘と…とはいかないからな」
まぁ…駄目なら俺が我慢すればいい話だ。
子作りは……その内そういう薬のでも頼ってみよう。
0
お気に入りに追加
280
あなたにおすすめの小説
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。
藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。
但し、条件付きで。
「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」
彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。
だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全7話で完結になります。
もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
(完結)戦死したはずの愛しい婚約者が妻子を連れて戻って来ました。
青空一夏
恋愛
私は侯爵家の嫡男と婚約していた。でもこれは私が望んだことではなく、彼の方からの猛アタックだった。それでも私は彼と一緒にいるうちに彼を深く愛するようになった。
彼は戦地に赴きそこで戦死の通知が届き・・・・・・
これは死んだはずの婚約者が妻子を連れて戻って来たというお話。記憶喪失もの。ざまぁ、異世界中世ヨーロッパ風、ところどころ現代的表現ありのゆるふわ設定物語です。
おそらく5話程度のショートショートになる予定です。→すみません、短編に変更。5話で終われなさそうです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる