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64、王位継承権

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「トマス………いや………小林さん。あなたはミレーユにいったい何を言ったんだ?」


至急執務室に来てもらい、原因を究明するべく形だけの尋問をする。
いくら真面目な顔で尋問したって、尋問するのは俺だ。無理は禁物。
けど……


「恐らく、お世継ぎ関係の事かと思います」


さらっと言われ、思わず流しそうになった俺。
世継ぎ…ね。
そうだね…俺、王様になるんだもんね。
おまけに、兄上が廃嫡になったことで第一継承権は俺に、第二以降は現王の兄弟の子…俺の従兄弟達になる。
現王の兄弟…俺の叔父たちに当たる人達は、俺が産まれた時点で継承権の放棄をしているので、今現在の継承順位には入らない。まぁ…父上の兄弟たちが聞き訳が良かったのだろう。王位継承の争いはただの一度もなかったらしい。


「殿下にお子様がお二人産まれれば、前例に習い従妹様方には継承権を破棄して頂く予定でおります。これは陛下始め、現宰相、家臣一同の同意を受けております。ですので、早いうちにお子様を…と言うお話はさせて頂きました。婚姻後三年以内にお子を身籠れないようであれば、側妃を娶る予定もあると……。中々にミレーユ様には酷なお話しかとは思いましたが、国の今後が掛かっております。お子様が出来なければ王位継承での争いが始まるのは必須。これは国にとってはマイナスな事になります。ですので、お気にすることは承知の上でお話しさせて頂きました。それに、ミレーユ様は今後王妃となられます。公爵夫人などのように、屋敷の中だけを差配するのではなく、城を差配し、城の女衆をまとめて頂かなくてはいけませんので……」



王妃教育を受けているミレーユは恐らく授業中も…そして、トマスにも圧を掛けられたのだろう。
そして疲れてしまったのかもしれない。
それほど王族の教育は過酷なのだ。


兄上のようにチャラチャラして自動的に王様に…王妃になれるわけはないのだ。


「分かった。これは俺が出たら不味い方向に行く案件だな。どうしたらいいだろうか……」


正直俺はミレーユだけいればいいのだけれど、王族の…この国の王としては場合によってはそうも言っていられないのだろう場面が来る。まぁぶっちゃけた話、俺とミレーユが色々と仲睦まじく頑張って子だくさん家族にすれば何の問題もないのだけれど、なかなかデリケートな問題だ。単純な話ではない。


色々話をしたいし聞きたいけれど、ここで俺が動いて国の方針を曲げねばいけない状況になってしまったら、将来の継承権争いは必須だ。


「わるい…トマス。辺境伯家へ使いを出して、今回の事とミレーユの説得をしてもらえるよう頼んでみてはくれないか?それでもミレーユがNOと言うなら……辺境伯家縁の者から妃を選ぶ。今更他国や他の貴族の娘と…とはいかないからな」


まぁ…駄目なら俺が我慢すればいい話だ。
子作りは……その内のでも頼ってみよう。



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