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執務室に逃げようが何だろうが捕まる時は捕まるもの。
あの時諦めて捕まっておけば、今頃こんなことしなくても良かったのに。
そう思いながらせっせと空の魔石に魔力を注ぐ。


以前思いっきり短く切った髪はどうにか肩まで伸び、気を抜くとすぐに黒くなってしまう髪は、こうして定期的に魔石に魔力を込めたり、魔道具を作ったりして銀髪を維持している。
ちなみに、これができるようになったのは半年ほど前。


魔石に魔力を込める…以前は何も考えなくても出来たのに、いざ意識的にやろうとすると中々難しくて、始めの頃は魔石を割ったり粉々にしてしまったり……注ぐ魔力量の調整が上手くできなかった。
今となってはなんのそのだけどね。


「今度は少し大きめの石にした方が良いかしらね」


次に作る魔道具の事も考えてメアリに提案してみる。
バイエルン王国は比較的過ごしやすく、乾いた気候だったけれど、ここアルメニアはどちらかというと、日本に気候が似ていて、夏はとても蒸し暑い……。


「少し大きめの魔石を使えば、王城の居住区画くらいの空調はカバーできそうじゃない?」


王城丸ごと空調改革を念頭にメアリに言ってみると、少し考えて訂正案を出してきた。
魔力が無くなった際に交換または魔力の注ぎ直しを考えて、中程度の大きさの魔石を何個か使った方が良いのではないかと提案してきた。


ほうほう…そっかそっか。


こうして自分だけでは思いつかない提案をしてくれるはメアリは、とってもいいパートナーだ。
真純が嫉妬しなければ。なぜ、自分の(前世の)兄に嫉妬するのかよく分からないけれど。


こんな感じで日々は過ぎ、気が付けばまた一年。
楽しい日々は過ぎるのも早いものだと、感慨深く思っていたら口に出ていたようで、メアリにババ臭いなんて言われたりして。


そうそう、子供出来ました。前世風に言えば、只今八か月。
もうすぐ産み月です。ちなみに、男の子。
性別は楽しみにとっておきたかったんだけど、色々な事情を鑑みて…この国の管理者のミーリアにちょっと聞いてきてしまった。最近ちょっと先の事が分かるようになったらしいけど…先の事を聞くのはいい意味でも悪い意味でもお勧めしない…と笑いながら教えてくれた。


あの様子をみると、そう悪いものにはならなそうなので、安心して子供を産める。
こうやって何でもない普通の毎日を積み上げられることに幸せを感じる。
前世では掴めなかった幸せを着実に積み上げ、これからも楽しくいられたら……。


大きくなったお腹をさすりながらミーリアは思ったのだった。
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