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時間だと言われ連れてこられた所は、王宮の敷地内にある小さな建物だった。
草木の状態からして、整えられているような気もするけれど、如何せん建物自体が古く崩れそうで少し怖い。
ここで真純くんが待っているのだろうか?


「こちらです」


中に入ると、扉がもう一枚あり…飲食店で言う待合スペース的な所に通された。
そしてそこには兄様が待っていた。


「ミーリア、いきなりすまなかったね。でも、このまま放って置いたら僕や父上の手の届かない場所に行ってしまいそうな気がしたのでね……知っている中でも一番、ミーリアが幸せになれる道を選んだつもりだよ」


そう言って、パートナー同伴でのパーティーのように私と腕を組み、もう一枚のドアを軽くノックする。
そこは……前世で見たことのある小さな教会のような場所だった。
兄様はアルメニアの建国の歴史の一部を一歩一歩ゆっくり歩きながら、小さな声で話してくれた。


「この国の本当の創国主はね、こことは別の世界で生きた記憶のある方なんだよ、カール殿下もミーリア…君もだろ?それとメアリもかな?」


そう言って、下を向いた私の顔を覗き込み前を向かせる。


「それでも、変わらずミーリアは私の妹だよ。でも、羨ましいなぁ。時々はその前世での世界の事を教えてくれるかい?ミーリア?」


そう微笑んで、祭壇の手前で待つカール殿下に私を任せる。
ここまで来たら引き返せない。
引き返したら、一緒に歩いてくれた兄様と、席に座り私を見てるお父様に迷惑が掛かってしまう。


「みのり?顔を上げて?」


カール殿下の声がやけに優しく聞こえてしまい、泣きたくなる。
告白して離れようと思っていたのに、なぜ私はここにいるんだろう。


「みのり?真純だよ。だ。そしてここにいるのはミーリア・ウィンステッドではなく、市川みのりだ。わかったね?」


カール殿下……いや…真純くんがいきなり変な事を言い出した。
?この教会みたいな場所ってこと何かな?
色々と急な展開に複雑な心境で、泣きたいのに…逃げ出したいのに。そう思うのになかなか足が動かせなかった。
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