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国王陛下とシャーロット王女への挨拶は、危惧したようなこともなくすんなり終わった。ベールについては、始めに顔だけ見せて、あとはずっと被っていた。多分、シャーロット王女のはからいかと思う。ありがたい。
その王女は途中、何度も話しかけようとしてきたけれど、結局何の話もせず王宮での自室に戻ってきた。
きっと真純君の婚約のことだろう。そんなに気を使わなくていいのに…なんて思う。


「お嬢様…寝過ごしてしまったようで申し訳ございません」


戻ってきたらメアリが起きていたので、起き抜けに申し訳なかったがお父様からの手紙を見せ、このまま領地へ戻る事を告げる。


「申し訳ないんだけど、このまま領内の自宅へ転移をお願いできない?それと、あとででいいから、ラビも連れてきて欲しいんだけど」


何か言いたそうなメアリだったが、何も言わせず転移にて領地へ飛ぶ。
あとのことはマリーに話してあることを伝えアルメニアの王宮に戻らせた。
神殿には二人を連れては行かない。これは、私の中ではすでに決定事項なのだ。
これで別れることになっても、面会などで会う事はできるだろうし、あの不思議空間に呼ぶことだってできる。


会う気になれば会えるのだ。


そう思い、そのままお父様へ帰還の挨拶をしに行く。
ついでに、神殿へ入る決心も伝えてこよう。決心が鈍らない内に……。



●○●○



あの空間で真純に説教していたら、思ったより時間が経っていて、起きてびっくりした。
おまけに、領地より至急戻れとの知らせがあり、私が寝ている間に挨拶も終わらせこのまま帰ると言う…。
何かに追い立てられるように急ぐお嬢様。


隙をみて話しかけようとしても、必ず遮られ中々話しかけられず、勢いのまま領地へ転移でお嬢様を送り、とんぼ返りでアルメニアの王城へ戻る。
恐らく、真純のことが関係しているのだとしても、ここまで私を避けるのはおかしい。


「ねぇマリー…お嬢様、何かおかしかったわよね?」

自分だけの勘違いかとも思い、マリーにも確認する。


「朝のお目覚めがだいぶ早かったようですが……私との話を避けているような感じは致しました。ただ、お話しようにも帰還へ時間が無かったのも確かだったので、そのせいかと思っていたのですが……」


やはり、私の勘違いじゃなかったのだと思い少し焦る。
領地に帰れば、旦那様やアーサー様もいるので、特に大きな危険はないかと思うのだけれど、何だか妙な胸騒ぎがする。このままここで呑気に帰還の準備をしていてはいけない気がする。そう思ってしまう。
理由はない…何となく…だ。


「まさか……お嬢様は神殿に入る気じゃ……」


ふと思いついた可能性に、自分でもびっくりした。
お嬢様のあの精神状態ではありえない事ではない。


けれど、旦那様とアーサー様が許さないだろ…と、ストッパーがいる事に少し安心もした。でも…振り切られる可能性もあるし、今のお嬢様の現状を考えると神殿入りも仕方なしの選択である事は変わらない。


一度領地へ転移し、先に旦那様にお話をしておいた方が良いかも……そんなことを考えていたら、廊下がにわかに騒がしくなり、部屋のドアがノックされた。


「お忙しい所申し訳ございません。先ほどカール殿下がお目覚めになりまして……」


真純の間の悪さに思わず歯ぎしりをする。
あとで思いっきりしばいてやる……。


そう心に誓い、マリーにベールを被せカール殿下の元へ面会に行く。
お嬢様、早まらないように!ただその一言しか言えなかった。
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