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106 ~夢の終わり~

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そろそろ戻らないと不味いかな……と、物語に書かれるメアリ達の様子を読んで思う。
気が付けば、数日もすれば成人となり、慣習では半年後にお披露目のパーティーを開かなければいけない時期になってしまった。


「一度、メアリを呼んで相談しようかしら?でも、そんなことしたら連れ戻されるわよね?」


との独り言に答えてくれたのはうさぎの彼ではなく、新しく仲間になったカラスのピーちゃん。
もちろん、カラスなので『カー』である。
ちなみに、うさぎの彼の名は "ラビ" に決まった。
現実に戻ってから名付ける予定だったけど、思ったよりこの謎空間の滞在期間が長くなってしまい、必要上つけた。


まぁ、安易な名前で申し訳ないけど。


ちなみにラビは只今、バイエルン王国の某貴族の当主の夢へ潜入捜査中。
兄様とシャーロット様の婚姻に異議を唱え、ウィンステッド家になにかとちょっかいを掛けている貴族がいるようで……お父様も兄様も、対応になかなか苦戦しているようだ。


何か弱みでもあればね。


と、思わずあくどい笑みを浮かべたら…


「子猫ちゃん、そんな汚れ仕事は俺に任せな。このプリティーな俺にかかれば、情報収集なんてお手の物だぜ」


と…いつもの調子でラビに言われ、ラビはそのまま諜報の旅へ旅立った。


なんだろう…もしかして、私よりこの不思議空間を把握している気がする。
まぁ…この空間で生まれた彼らだから、自然と空間認識をしているのかもしれない。


「ピーちゃん、この手紙をメアリの夢に届けてきてくれないかしら?」


時々こうやって試しに手紙を送ってみる。
直接呼んでしまえばいいのだけれど、いまだ勇気が持てずにうだうだしてしまう。
明日こそは…と、いつも思う。
今日もやっぱり「明日こそは」と思う。

こんなに自分は優柔不断だっただろうか?
前世ではもう少し、てきぱきしていたはずなのに………



●○●○



「お嬢様から手紙が来た」


夢の中だけど……。
昨日の……やけに現実的な夢に、一羽のカラスが出てきた。
手紙を咥えたカラスを見た瞬間、これはお嬢様からの手紙だと思った。


お嬢様は知らないようだけれど、この世界と前世では生息している動物が少々違う。
鳥類も、鳩はいるけどカラスはいないのだ。


「お嬢様はいつお戻りになるのかしら……」


独り言ち溜息をつく。
あれからお嬢様に色々聞くことが出来た。
彼女は、みのりちゃんが覚醒する前のミーリアの元の人格。
そして、今はこの世界の管理者らしい。


「管理者と言っても、本に書かれたものを呼んで所定の所にしまうだけ。司書のようなものよ」


と笑っていたけれど……。



「同情はするけど、私の大事な子はみのりちゃんだから」





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