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「真純君……」


その人を見てつい漏らしてしまった名前は、逢いたくても逢えない幼馴染みの名前だった。
けれど、そんなわけもなく…。
身なりを見れば一目で王族か上位貴族だろうと分かる、上等な衣服を見て……再びエリザベス様を見れば……土下座していた……。


もしかして、土下座って流行ってるの?


土下座しているエリザベス様を見て唖然としていると、先程現れた男性がニッコリ笑い、自己紹介を始めた。


「初めてお目にかかります。ウィンステッド・ミーリア嬢」


そう言って、わざとらしい位のうやうやしさで話し始めたのは、この国の第一王子…次期国王陛下のカール・デュマ・ウィンザー様だった。



⚫〇⚫〇



「エリザベス、あれは君がやったことではない。兄の尻拭いで頭を下げて廻っていると聞いたが、それはお前の役目ではない」


そう言って彼は、恐縮しまくるエリザベス様を下がらせ……気が付けば二人きり。
しばらく無言が続き…我慢できなくなって話し始めたのは、私だった。


「ご挨拶遅くなり申し訳ございません。初めてお目にかかります、バイエルン王国から来ました、ミーリア・ウィンステッドと申します」


メアリ仕込みのお手本通りの挨拶をして…出来れば早々にこの場を去りたい私は、エリザベス様を追う振りをして、早口で辞去の挨拶をして、寮の自室へと戻った。


なぜカール殿下があそこに来ていたのか、何も考えず部屋に篭ろうと思っていたら、メアリよりカール殿下がお会いしたいと来ております…なんて逃げ場のない来襲……はぁ…泣きたい。何でだろう。カール殿下を見ていると、真純君を思い出してしまう。


頭が良くて、頼りがいがあるけど泣き虫で。
優しいけど、なんだか腹黒君だったり……。


良いところも悪いところも……全部が好きなんて、甘い事は言わないけれど、ずっとずっと見ていた……勇気が出せなくて、最期まで見ていただけだったけど……なんで今頃思い出す?なんで殿下を見てドキドキするの?


ぐるぐるぐるぐる考えながら、ほぼ連行と言ってもいい位の勢いで連れて来られてしまった…。メアリ…もう少し時間が欲しかったよ(涙)


そんなことを思っていても、色々と迫ってきているのも確かで……。


「お嬢様?大丈夫でいらっしゃいますか?顔が赤いようですが、熱が?」


様子のおかしい私を見て心配してくれるメアリに……


「さっき外で、カール殿下にお会いしたんだけど……気のせいだと思うんだけどね…真純君に似てる気がしてね………………」


そんな私を見て一言、へぇー…と平坦な返事をして、カール殿下がいる応接の間に進む…。
このまま、Uターンしてベッドに潜りたい衝動を抑えて…。
ホントにもう泣きたい……。
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