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76 ~メアリは一人考える~
しおりを挟むこの国に来て数週間。
王立中央学院に留学するお嬢様には、この国に来る前に侍女となったマリーが付いている。
で……私は、このアルメニア王国の王都を絶賛散策中です。
まぁ、お嬢様に食材の購入も頼まれているので、遊んでいるわけではないんですけどね。
それに隣には、形式上侍女見習いとなったウィリアム殿下の影、マリーの妹ポーラがいる。
ウィリアム殿下(の中の人)曰く、今後本体に戻れた時のことを考え、優秀な人材は隠しておきたいのと、今後ポーラが『主をホイホイ乗り換える部下』などと、不名誉ないわれをされてしまうことを防ぎたい為らしい。
一応王位継承権の放棄を公言はしたものの、王命により保留中のウィリアム殿下。
まぁ、王族という事もあって側近もわりに目立つしね。
そんなわけで、ポーラは諜報活動以外はどこに行くにでも、私にくっついてくる。
一応指導係だから。
けど、昨夜は危うく転移の魔法をつかっているのを見られるところだった。
注意に注意を重ねているのに…さすが成長著しい忍者は違うと感心。
女性だからくノ一と呼んでもいいかも知れないけど、またマーキスに聞かれるのはなんとなく不味い気がするので、口に出すのは止めて……また改めて隠匿の対策を練らねばいけない。
自国の王子も気を付けねばいけない人物だけど、ここに来ての最大の要注意人物、この国の第一王子…カール殿下の最近のウワサがちょっと気になる。
半年程前に昏睡状態から目覚め、まだ魔力過多症の症状はあるものの、以前に比べだいぶ魔力のコントロールが上手くなり、ここ最近では治療の一助と言う事で招かれたお嬢様の手助けが要らないのではないか…とまでなっているという。
ここまではまぁ…大目に見ていいとして。
問題は、この数ヶ月で進められている商業経済の立て直し政策と、国の新しい仕組みの土台だと言うギルドの設立。
これはどう見ても、転生者だろう。
お嬢様の言う通り、殿下本人か側近……恐らく殿下本人だろうと思う。
そして……その殿下が、お嬢様に興味を持っている…ということは、きっとお嬢様を転生者だと確信してのことだろう……と私は予想してるんだけど。
「メアリ様?ここに深い谷間が出来ております。皺は女性の天敵であります」
自分の眉間を擦りながら、私の顔を覗き見るポーラ。
話し方、仕草…見ていれば違いが分かるけれど、初対面ではそれこそ『分身の術』だ。
今後、双子ならではの色々をやらせてみたいなぁ~と考えているけれど、それはとりあえず保留しておいて。
今はカール殿下のことだ。
今回お嬢様と共に留学したウィリアム殿下にも、カール殿下には気を付けるように…と忠告をもらっている。
以前と醸し出す魔力の質が変わったらしい。
ウィリアム殿下(の中の人)は、繊細な魔力操作・魔力感知ができるようで、お嬢様が以前のお嬢様ではない事も魔力の質で分かったというのだから、カール殿下についても、間違いは無いのだろうと思う。
さて…どうしたものか…。
安易に動くのは怖いな…と感じる。
お嬢様にも気をつけてもらわねば…。
そしてウィリアム殿下にも…。
「ポーラ、あとでいいから伝言ね。お嬢様の件で、安易な約束はなさらないように…と」
とりあえずは殿下に釘を刺しておこう。
それで様子見かな……。
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