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70 ~新たな動き 2~
しおりを挟むマリーと名乗ったその者は確かに、あの時ウィンステッド嬢に付いていたメイドだが、何が理由でこの離宮にいるのか……。
「レオナルド殿下…。これは主…ミーリア様から預かっている私の身の上を証明するものであります。殿下なら判るだろうとのご判断で持たせて頂きました」
そういって僕に差し出したのは、あの時彼女が使っていた結界を張る魔道具と、微かに残る彼女の魔力…そして、彼女自筆の手紙であった。
「もし僕が気が付かなかったらどうする気でいたんだ?」
興味本位で聞いてみたのだが、「殿下なら絶対気付くから大丈夫」と言っていたらしい。
「あの方なら、あの後絶対に魔力操作の練習をしているはず」とも言っていたようで、自分の性格をしっかり見抜かれていたようで何だか少し恥ずかしかった。
そして…ここに忍んできた理由を改めて聞く。
「それをお話する前に、大変申し訳ございませんがこれを使ってもよろしいでしょうか?」
と…さっき手渡された魔道具を指差されたので、何も言わずに渡すと魔道具の裏側の小さなスイッチのようなモノを入れる。
「ほお…そうやって起動するのか」
魔道具の仕組みや働きに驚きつつも、まずは結界を張った理由を聞き、今現在の外の様子…そして、マリーがなぜここにいるのかを聞いた。
「こちらの離宮をお暇した後、色々ありましてしばらく王都に滞在していたのですが……」
そう話し、僕の疑問や今現在の状況などを教えてくれた。
ウィンステッド領の者はみなこんなに優秀なのだろうか?
そばに一人欲しいと思い、マリーをスカウトしようとしたが、あっさり断られた。
もしミーリア嬢の味方についてくれるのならば、『トウリョウ』に頼んで、紹介は出来るとの事だった。ただ、説得はご自分で……と言われてしまった。
この手の者達は主に忠実な者が多いので、期待はできないな…とガッカリしていたが、僕の知らない僕の色々を知っている者で、大層憤慨している者がいると聞いて、紹介だけでもしてもらう事にした。
「ではすまぬが、これをサイラスに。ウィンステッド嬢にも手紙をしたためておくので、戻ってきた際には持って行ってくれ」
●○●○
マリーを送り出したあと、手元に残る魔道具をじっくり見る。
この魔道具を作ったのはあの魔法士か?久しぶりに興味をそそられる物にワクワクしながら魔力を注ぐ。
面白いほど魔力が吸い取られ、中に置かれている石の色が濃くなっていく。
もしかして、これは僕の魔力の色か?
先ほど魔力を注ぐ前は仄かにオレンジだったから、あの色はマリーの魔力の色なのだろう。
「これは面白いし……ん?過剰な魔力を注いでおけばいつでも起動できるのか?」
自分の知らない構造の魔法陣に好奇心が刺激される。
一度あの魔法士に魔法の手解きをしてもらえないだろうかと考える。
そしてそれは、今の継承権を放棄したウィリアムの身分では難しいだろうか?
レオナルドの婚約者候補のウィンステッド嬢の傍付きが、ウィリアムに近づくのは不味いだろうか?
周りの貴族や王宮での力関係を考える。
「やはり、元の姿に戻るのが理想か……」
ため息をつきながらそう独り言ち、魔道具を引き出しにしまった。
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