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何もなく数日が過ぎようとしていた頃、領地にいる元ウィリアム殿下に動きがあったらしく、マーキスが直々に私の元に来た。
それも何故か、いわゆる忍び装束に激似の服を着て…これっていったいどこ情報なの?と半眼でメアリを見てしまった。目を逸らされたけど。


マーキスに「直々」という言葉を使うのもなんだけど、一応今は兄様の侍従兼諜報部門の実質的なトップらしいので、一応ね…一応。


「ミーリアお嬢様…領地内にご滞在の中のレオナルド殿下の件ですが…」


さっそく聞くと、すでに色々やらかし始めちゃっているらしい。
それも、小さい事から大きな事まで各種色々。
マーキスの報告では、やらかした半分くらいが魔力が上手く扱えない為の事故。
あとの半分は…中身がバカ王子と判っている人なら、容易に納得できるものばかり…まぁぶっちゃけ、優等生の真似はできず、化けの皮が剥がれてきたって感じか。


婚約が本決まりになる前で良かったと、喜ぶべきことなんだろうけど、外見がレオナルド殿下でのやらかしなので、気持ちは複雑だ。


「サイラス様はいかがされたの?側近でいらっしゃるあの方のお名前が一度も出てこないけれど…」


あの方なら必ずいさめるだろう事なのに、一度も名前が出てこないので不思議に思い聞いたら…なんと…クビにしてしまったそうだ。
魔力過多症が治ったなら医者の側近は要らぬ…と。


何度も殿下を諫める姿は見掛けられていたそうだけれど、殿下のその言葉に特に反論もせず大人しく従ったそうだ。もう諦めていたのだろうと思う。


そして、側近をクビにした殿下はどうしているのかと思えば、現ウィリアム殿下の元を離れた側近達を呼び寄せているらしい。気心知れた側近が良いのは解るけど…ちょっとやりすぎ?レオナルド殿下の真似をして何かをしようとしたのだろうけど、優秀な兄の真似は続かなかったようだ。


予想とはちょっと違ったこともあったけれど、概ね予想通りかな?と思う。
お父様も兄様も呆れを通りこして、病気や呪いの類か?という説まで立てているとの事。
どっちみちこの状態の殿下では、婚約を了承するわけにもいかないと、王宮に使いを出し婚約内定の辞退とレオナルド殿下のお迎えを催促したらしい。


そして、私にはもう少しここに滞在して、殿下と顔を会わせるのを避けるようにとの伝言があった。
殿下が、私の戻りはいつなんだと騒ぎ始めたからだ。


「殿下はなぜそんなにも私を(憎むのだろう)…」


その呟きに答えたのは、意外にもマーキスだった。
警護という名のお遊びを敢行する殿下の側近を尻目に、日夜情報収集の為殿下に引っ付いていたマーキスは、鏡に向かう殿下が呟いている内容を聞いてしまったというのだ。
主な主語が抜けてが、恐らくはそれだろうという事だった。


「あいつのせいで神殿に追いやられた…あいつが婚約者だから」


王都で最近神殿に入った貴族の子女は、ミュリエッタ・アシュバートン男爵令嬢のみで、一時期男爵令嬢も婚約者候補に挙がっていたらしい。
私見ですが…と前置きを置いたマーキスが、もしかしたら、殿下は男爵令嬢を婚約者にしたかったのではないか?と教えてくれた。


え?そこでなんで私が????って思うよね…普通。
っつーか、それ私のせいじゃないし!!
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