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しおりを挟む王都には10日程かけて行くらしい。
レオナルド殿下が来る時と同じだ。
まぁ、理由は言わずもがな…私が旅慣れてないから。
それでも、メアリが前世知識チートを活かして馬車の改造をしてくれていたりして、馬車の揺れが身体に余り負担にならないようにしてくれたんだけどね…。
「車酔いとかしたこと無かったんだけどなぁ…」
思わず呟いてしまい、慌てて口を噤む。
ついつい、いつもの調子で喋ってしまったが…目の前にいるのはメアリではなくマリーだった……ハッと思い出し思わず動きを止めてしまったけれど……マリーからビシビシと視線を感じる…
(どうしよう……聞いてたよね…今の…)
抜けているように見えるが、そこは諜報や潜入をこなせる人材。
欺いていようといまいと、自然に身についた隙が普段は出ている…それに、マリーは諜報員としてはとても優秀なのだ。
少しの情報で色々と察する頭脳も持っている。
恐る恐る、視線を感じる方…マリーに顔を向けると、じーーーーっと見つめるマリーが……
「お嬢様…無理にとは言いませんが、私を信頼・信用して頂けた時には、マリーにも教えて下さいませ…お嬢様とメアリ様の秘密を。察するに…デリケートな部分もあるので、無理に…とは申しませんけれど…。もし必要なら『誓約』をしても構いません。それぐらい本気で仕えておりますので」
そう言いきって「いつものマリー」に戻った。
そう…デリケートな問題だ。
主に人生的に。
前世の記憶を持っている…とか、転生者…とか、(この世界での)未知の知識を持っている……なんてのが、ろくでもないのに知れたり、広まったりしたらきっと色んな意味で「異端者扱い」だ。
人は自分と違うのを嫌う。
それは前世も異世界もきっと同じだ。
人種が違っても世界が変わっても、少なからず必ずある。
まして自分は…ミーリアは公爵家の令嬢。
ろくな未来が見えない……。
でも、味方がいるのは心強い。
それも、今の自分の周りにいる人達は高スペックな人達ばかり。
…まぁ、多少の残念さはしょうがないけど。
前の人生では、色々なことが重なり…おまけにある程度の事は自分でできたから、あまり他人を頼ったりはしなかったんだけど…今は…この世界では、頼ってもいいだろうか。
迷惑に思われたりしないだろうか…。
色々な考えが頭を埋めつくし、黙ってしまった私を見て、マリーが慌てたように言葉を追加する。
「話せる部分だけでいいんです。私もお嬢様を助けたいのです。まだまだ、信頼に値するような事もしておりませんし、お傍に来てそれほど時間も経っておりません。それでも……」
感極まって泣いてしまったマリーに、なんて声を掛けて良いか分からず、私も途方に暮れた。
前世の31年の人生でも、そんな言葉を掛けて貰えたことはなかった気がする。
嬉しいけれど…自分はその気持ちを返せるだろうか?
信頼される主になれるだろうか…。
そんなことを考えていたら、気持ちが落ち着いたのか、マリーがつぶやく。
「少しづつ私を見て下さい。お嬢様に信頼される部下になってみせますから」
そう笑ってくれた。
その笑顔を見て、私も信頼される主になれるよう頑張ろうと思えた。
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