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しおりを挟むレオナルド殿下到着の報告が来たが、その日は殿下には会えず…ご挨拶は翌日の朝食の後に持ち越された。
第二バカ王子の襲撃後、なるべく早くと急いだのが悪かったのか、襲撃に興奮してしまったのが悪かったのか、公爵邸についた時には発熱していたらしい。
殿下の側近であり医師であるサイラス様が教えてくれた。
「それにしても…こう言ってはなんですが、殿下の滞在する部屋はできれば離れをとお願いしていたかと思うのですが…本邸でよろしいのですか?」
サイラス様の言に、我が家の使用人や、私達のことを心配して言っているのか、不審に思って言っているのか判りかねたのか、お父様がそのことについて返す。
「離れをご希望なのは、周囲への魔力の影響を考慮して…でよろしかったですか?」
サイラス様は男爵家の三男で、貴族位こそないが、医師としての実力は確からしく、レオナルド殿下の側近兼専属医師になる際に、一代限りの騎士爵を授かったとの事。
実績を認めているからこそ、対等な扱いなのだろうとは思うのだけど、ちょっと違和感。
サイラス様は、何を警戒されているのだろうか?
「屋敷の周囲と、屋敷内を確認の為歩かせていただきました。…で…これなんですが」
そう言って出したのは、私が作った魔道具だった。
そうか…殿下に会う以外で私が呼ばれるのはなんでだろうと思っていたんだけど、これの説明の為か。
お父様は、サイラス様がこの魔道具に気付いたのを気付いたのだ。
「レオナルド殿下のご滞在です。いかに魔力が多いとはいえ扱いきれているわけではないご様子。我が家でも警備の者はおりますが、離れまで含めてしまうと本邸が手薄に…本邸を護ろうとすれば離れが手薄になってしまう故、本邸へとご滞在をお願いしました。幸いにも、我が公爵邸にも優秀な魔法士と…魔法の扱いに長けている、息子と娘がおります。このご滞在でゆっくり療養をしていただこうと、もてなしも考えております。できればごゆるりとお過ごし頂きたい為の措置です」
そういって私に視線を向けるお父様。
…お父様…私に丸投げですか?ちょっと恨みますよ?
一生懸命、目で訴えるが華麗にスルー…しぶしぶ説明頑張りましたよホント。まぁ…これも適材適所?ってやつですよね。
「その小箱はお気付きの通り、魔道具でございます。製作者は私です」
そう切り出し、魔道具の説明を始める。
大きく目を見開いたまま動かないサイラス様が目に入ったが、そんなのはお構いなしだ。
「この魔道具は、護りの結界を兼ねた、魔力を抑える役目をする物です」
そう…この魔道具は過剰な魔力を吸収し、その吸収した魔力を結界を張る為のエネルギーに変える。
必要以上の魔力は吸収しないが、この結界が作動している場所では過剰な魔力は自動的に吸収される。
私やメアリのように魔力量は多いが、きっちり制御されている魔力は吸収しない。
けれど、怒りや興奮などで異常に魔力が高まってしまったり、急性の魔力過多症になってしまった場合などは効力を発揮し、結界内にいる人物の魔力を吸収するという、私の想像力…というか妄想力が生んだ不思議アイテムだ。
ちなみに、無意識で…もうそ…いやいや、想像力を発揮して小箱に組み込んだ魔法陣は、メアリ以外の魔法士には解析不可能でした。
だって…その魔法陣、日本語だったんだもん。
無意識って怖いねって思っちゃった。
「この魔道具を使えば、一時的ですが殿下のお熱…魔力過多を和らげることが可能かと思います。ですが…正直、まだ私と、私の侍女メアリでしか試したことがありません。サイラス様のご許可や殿下の同意がなければ、殿下自身に使うことはできません」
そう言い切ったころには、思案顔のサイラス様に戻っていた。
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