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第一王子が静養にくる……


昨夜王都よりお父様へ知らせが来たそうだ。
昼食後、執務室に来るよう言われ聞いた。


なんでも…婚約者候補の人達との王城での交流が一通り終えたらしい。
お父様の話では、我が家に…私に正式な婚約の打診がきているらしい。


こう言っちゃなんだけれど…面倒くさい。
王子と婚約なんて、平穏な日々がどんどん遠ざかって行ってしまうではないか。
…と、そこまで考えて第一王子の婚約者吟味の理由をふと思い出す。


魔力の器…か。
前世知識で、人間の身体の中にそんな物はないと解っている。
魔力の器…そうそれはこの世界、魔法を使うこの世界独特のものだ。


「殿下のご体調の方はどうなのでしょうか?」


お父様の眉間にシワが寄るのが見えて、ちょっとビクついてしまう。


あまりよくはない…と噂では聞いているけれど、噂は噂だ。
けど…やっぱり良くないのかな?


「よくも悪くも…というか魔力量が増えて、最近はあまり安定していないらしい」


それっきり口を噤んでしまったお父様。
とりあえず、部屋に戻り今後の準備の手配をしなければと思う。
本来なら伯爵夫人マーガレットが差配するのだろうけれど、身重…それも産み月が近いので難しい。さてどうしたらいい?


ふとメアリが話してくれた乙女ゲームを思い出す。
兄様が戻って来たところで考える必要がなくなってすっかり忘れていたけれど、あれはどんな内容なのだろうか?
第一王子…レオナルド殿下は出て来るのであろうか?
色々気になりつつも、客間の準備に人を手配し、メアリが待つ自分の部屋に戻る。


「お嬢様…おかえりなさいませ」


ニッコリ笑うメアリのバックに咲き乱れるバラの幻影が見えるようだ。
……男だけどね。メアリを見ていると愛の力って凄いのだなぁと感じる。


私はこのまま、レオナルド殿下と婚約して、こんな風に笑えるのだろうか。
平々凡々とした前世、おまけに結婚どころか彼氏さえもいなかったのだ。
不安になるなと言う方が可笑しい…よね…きっと。


湧き上がる不安を心の奥底に追いやり、人払いをしてメアリにゲームの事を聞く。
「乙女ゲームの事を詳しく聞きたいんだけど…」


そう切り出した時、メアリがおもむろに手帳より少し大きな…重厚感のある日記帳のような物を出してきた。今まで少しづつ書き出してまとめていたようだ。


何れ私に関わって来ることだろうと思っていたらしい。
ちなみに…アルベルト(メアリ)も攻略対象者の一人らしい。
前世からの色々で、乙女ゲームの筋書きからは早々にドロップアウトしたらしいけど。


それと…以外にも第一王子は物語のどの場面にも出てこない。スチルさえも出てこなかったようだ。


それを聞き、あくまでゲーム上の事で推測だけれど…亡くなる運命…なのかもしれないと思う。


王位継承順位が上だとはいえ、健康問題がある王子に嫁ぎたい物好きはあまりいないだろうし、嫁いだところで…子作りさえも難しいのではないか?と言われているらしい。
まぁ、命の欠片というファンタジー物体を交換できれば問題はないのだけれど、信頼し合えないと難しいらしいので、結婚すればOKってわけじゃないのだ。


時間さえあれば、結婚後に徐々に信頼を深めて…ということも可能だろうが、完全に政略結婚だとそれも難しいだろう。


信頼しあえ命の欠片の交換も出来、体力が戻りそして…なんてやっている内にどんどん歳はとっていく。


気が付けば女性の方が、女盛りも過ぎ子供を作るには遅い時期になってしまう。
悲しいけれど、現実だし目に見えているので、婚約者候補の中に公爵家はいない。


現段階で、レオナルド殿下の婚約者候補の中で一番身分が高いのはミーリアだ。
あの例の男爵令嬢にも白羽の矢が立ったらしいが、素行に問題ありで最近外されたようだ。
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