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23 ~若と侍従の呟き 2~
しおりを挟む突然だが、王都の学院を休学する事になった。
原因はあの、ミュリエッタ・アシュバートン男爵令嬢だ。
自分で自分が上手くコントロール出来なくて藻掻いて藻掻いて…どうにもならず領地に帰省したところ、父上から決定事項として伝えられた。
不甲斐ない…ただそれだけだった気持ちが、父上から見せられた調査報告書で、少しだけ和らいだ。
が…不甲斐ない気持ちは無くなる事はなかった。
領地から送られて来たという装飾用の短剣は、ミーリアが魔法を付与した魔道具という事だった。領地の魔道具職人が作った物だとばかり思っていた。
私より三つ年下の、母様に良く似た妹。
母様が亡くなったのはミーリアのせいでは無いはずなのに、ミーリアを妹として素直に可愛がる事が出来なかった。
母様が亡くなる時に託されたというのにだ。
今なら自分で自分の事を笑い飛ばしてやれる…「なんて小さい奴だ」と……。
領地に帰省した際に、ミーリアについての事も父上から報告書を見せられた。
彼女は…ミーリアは産まれてから5年程王都で暮らしていた。
当然私も一緒であったけれど…父上の仕事や母様の病気の治療の為だった。
あの頃は、第一王子の伴侶候補を探す為、貴族家の女児は魔力検査を受ける事が義務付けられていた。
そして、ミーリアは見事…と言っていいのか判らないが、候補になった。
当然のように第二王子派からの嫌がらせや第二王子本人からも嫌がらせがあったが、どうにか耐えて、「一定の時間、伴侶候補である王子と過ごす」という要求を満たし、領地へ帰って行った。
王都でも一人堪え、領地に帰っても害されるという危機を乗り越えた。
父上曰く、治療の魔法使えるのはその事件がきっかけであろうとの事だった。
きっと神は、試練を与えそしてそれをミーリアは見事乗り切ったのだろう。
あの小さな身体で、あの細い腕で…。
妹であるけれど、素直に尊敬する事が出来た。そして思ったのだ。私は小さいと。
だから決意した。
これからは守ろうと。神殿や貴族の魔の手から…父上と共にミーリアを守ろうと。
亡くなった母様に…神に誓った。
⚫〇⚫〇
学院を休学し、ミーリア様の学院入学まで領地にて勉強をする事になった若。
もちろん、侍従の私も常に一緒である…が、突然の休学だった為、寮の荷物など引き上げて来なくてはならず、ここ1週間程お傍を離れ王都に行きそして戻って来たのだが…これはどういう事なんだ?
魔法学の教師より若とミーリア様二人で学ばれると聞いていたのだけれど、教えているのは、ミーリア様とアルベルト…いや…メアリではないか!
それに…なぜだ…。
最初は護衛(男)だったはずなのに、なぜ今は侍女(女)なのだ!
これは私の未熟さ故の理解力の無さなのだろうか。
現に、若・ミーリア様・御館様そして奥方様まで普通に接している。
私もミーリア様が言うジョブチェンジというものをやらなければいけないのだろうか。
ジョブチェンジをして性別の壁も越えなければこの先、若のお傍に居続けるのは難しくなっていくに違いない。
考えている時間はない。
けれど…どうしたらいいのだ。
私の中の常識が邪魔をする。
矜恃を捨ててはいけないと。
考えろ…考えるんだ!
どうやったらこれからも若のお傍に仕える事が出来るかを…考えるのだ!
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