生まれ変わりも楽じゃない ～生まれ変わっても私はわたし～

２１

兄様が私の部屋に来た。


みのりの記憶が戻って初の出来事で、どうしたらいいのか正直分からない。
私付きの侍女＆兄様付きの侍従はドア近くに揃って立っているが…
私…獲物？と聞きたくなるような鋭い視線をみんなから受けてるんだけど、どうしたらいいの？


治療魔法をかけるって言ったって、いきなりは出来ないしね…やっぱり、魔法をかけられる本人だって、事の経緯を知らなければ不安だろうし。


と…うだうだ考える。
が…考えてもどうにもならないんだよね…とりあえず、出来ることを！
とは思うけど…ね。


「ミーリア？」


どう話を切り出したらいいのか考えていたら、兄様が私の名前を呼んだ。
兄様の声を聞くのは久しぶりかもしれない。イケメン＆イケボのダブルで、ちょっとドキドキの私……って今はちがーーーーう！


と…心の中で叫んでいたら、兄様が話し出した。


「ミーリア、ありがとう。これ…」


そう言って取り出した短剣は、一年程前程に試作した短剣もどきだ。
短剣とは言い難い、完全装飾用の物。


効果があるかどうかは解らないけれど、もしかしたら効くかもと思って、「想い」を込めて作った。悪玉男爵令嬢菌撲滅！と…。


念(魔力)を込めている私を見て、当然…と言っていいのか苦しいところだけど、メアリは思いっきり笑い転げていた。
悪玉男爵令嬢菌って……って言いながら涙流して笑ってた。
人が一生懸命やっているのに、失礼なっ！と思ったけれど、初の魔道具制作だった事もあり、疲れて突っ込むにも突っ込めなかった。
まぁいいんだけどね。


「あまり効果がなかったかもしれないんですが…」


キラキラしている兄様を直視出来なくて思わず目を逸らした先には、笑いを堪えるメアリ。もうっ！何笑ってんのよっ！


と…思っていたら、兄様からびっくり発言が。


「ミーリアは凄いのだな！まだ８歳だというのに、魔道具まで作れるのだな♪」


とまぁ…ホント、キラッキラと目を輝かせて、迫られてしまった。
あとから聞いた事だけれど、兄様は以前より魔道具作りに興味を持っていたそうで、学院を卒業後は魔道具職人の元へ修行に出ようかと思っていたらしい。
兄様の侍従もキラキラした目で語ってくれた。


にしても…「若」とか「父上」って、江戸時代かよっ！と突っ込みそうになっても堪えた私を褒めて欲しかった。
メアリはやっぱりお腹抱えて笑ってたけど。


結局のところ…兄様は今期で学院を休学して、しばらくは領地の経営と…私と一緒に魔道具制作を学ぶ事に。学院へは私が入学する時に復学する事になった。


とりあえず、これで悪玉男爵令嬢菌の感染源からは引き剥がせたし、めでたしめでたし。で…実害がなければ、特に思うことも無いので、好きにやってくれ…である。
どう考えても引っかかるのはバカ王子だと思うしね。


ちなみに…私が魔法を使えるであろう事はバレているらしい。
お父様の所に報告書があったことを兄様が教えてくれた。