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しおりを挟む「私を」撫でてくれた真純君の手を思い出し、涙が出た。
同時に、自分の死の間際も思い出し、切ない気持ちになる。
刺された時痛かったのかもしれない…苦しかったのかもしれない。
でも、覚えていないという事は、きっとそうでもなかったのかもしれない。
多分…感覚はなかったんだろうと思う。
自分の死については…恐怖も何もなかった。
自分らしい…と言っていいのか分からないけど、刺されて…抗うことさえ出来ず死んだのだろう。
どうしようもなかった…としか言えないけれど…真純君に、身近な人の死を2度も看取らせてしまった。そちらの方が心的ダメージが半端ない…。
まぁ…身近な人と言っても、私は真純君にとってきっと…友達以上恋人未満の幼馴染…身内でも無いことにさらに落ち込む。
負担…掛けちゃったよね。
そう思うと更に落ち込む。
落ち込んでもしょうがない事は解っているのに。
だって…今私がこうしているのが何よりの証拠だ。
そう…私の…市川みのりの死は過去だ。
うだうだ悩んでもしょうがない。
あとは、神様がどうにかしてくれた…と思いたい。
⚫〇⚫〇
涙をポロポロと流すミーリア。
いったい私は何をしてしまったんだろう。
国内では武のウィンステッド等と言われているが…思い上がりも甚だしかった。
娘一人の気持ちも理解してやれないのでは、戦いで先を読むなどできない。
不甲斐ない…ただそれだけだ。
なのにこの部下…アルベルト改めメアリは思いの他ずけずけとものを言う。
「エドワード様…ミーリア様の気持ちが解らなくても戦えますからね?」
「だいたい父親なんてそんなもんでしょう」
などと好き放題、的確に私の心を抉る…。
まぁ…こいつなら大丈夫だろう。
悩んだ末先程の提案を受ける。
「アルベルト改めメアリ…。ミーリアの身の回りの世話と護衛を任じる。侍女については後日当人と会って、ミーリアにも引き合わせて…それから判断をする」
まぁ、この部下が推薦する人物なのだから、下手な人材ではないであろうと思うが、念には念を入れて…だ。
ミーリアは少し落ち着いたせいで疲れが出たのか、こくりこくりと船を漕ぐようにしている。このまま寝かせた方がいいと思い、最後の確認をメアリにする……。
「メアリ…あの…その……決まったパートナーはいるのか?」
これは今後ミーリアの世話をするにあたりの確認だ。
それによってどれぐらいの範囲をできるかが決まるからな。
この聞き方が一番無難かと判断した。
「エドワード様…対外的にはアルベルトはいない者と思って頂いて結構でございます。ちなみに…パートナーはスペンサー子爵でございます。その…できれば色々ご内密にお願い出来たらと思います。許可を頂いているので、お話しますが…子爵家では既に次代への移行があと数年程で完了するそうです。次代のカール様には、色々とご了承頂いております。落胤を残して後々お家騒動を起こされるよりは…という事でございました」
まぁ…こいつもここに来るまで色々あったんだろうと思い、とりあえずは納得する。
差し当たり、入浴・着替え以外からやるように指示を出し、ミーリアの部屋を出ようかと思ったところで、メアリより書状をあずかる。
スペンサー子爵からの…再びの盟約であった。
まぁ…子爵とその子息の人柄はよく知っている。お互い爵位を継いでからも交流は度々あった。色々と…色々と思うことはあるが、ミーリアの身辺を固めるのが先決か…そう思い、執務室に急いだ。
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