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しおりを挟む「私…刺された?」
市川みのり31歳。
仕事に追われ、気が付けば三十路…。
せっかくの誕生日なのに隣を歩くのは、やる気のない社長。御歳35歳。
社長だからと言ってお金持ちのボンボンでもないし、バリバリのやり手でもない。
この会社…合資会社 ナオキカンパニーは3人の取締役と2人の常勤役員が居る。
社長はその常勤役員の1人。取締役の付かない…現場監督のようなものだ。
やる気がないけど……部下が優秀だとどうにか回るもんだね…と言ったのは、この会社の取締役をやっている、幼馴染だ。
大学在学中の就活を始めようとしていた時に声を掛けられたのだ。
当初の考えに従い、サービス業は無理だと断っていたのだけれど、事務所の仕事だから…と押し切られた。結果は…今のこの通り、いつの間にかサービスする側になっている。
おまけに、いつの間にか役職付きである。世の中不条理だ…と思うこともあった。
サービス業ゆえなかなか休みが合わず、彼氏が出来てもいつの間にかいなくなっている。
自然消滅ってやつだ。
たまに、まともに別れ話があっても、決まって「仕事の方が大事なんだろう?」だ。
つい最近も言われた。
あまりの言葉に思わず「あなたは仕事大事じゃないの?」と言い返してしまった。
仕事は生活を送る為の糧だ。遊んでいてお金が貯まるわけではないというのにこれである。
ちなみに…最近の忙しい理由は隣の社長が原因だ。
半年前辺りから結婚式の準備だとかで度々休む。
社長なのに…だ。
彼女のドレスを選んだり、招待者の選定だったり…彼女に言われるまま付き合っているらしい…なのに…。
「貴方がいるから、たー君が仕事仕事って言うのよっ!!」
って…どういう事なんでしょう?
わけが解らず社長を見上げる。
長身・イケメン・社長…と、外見だけは良いこの人は、お休みとって何してたの?
言葉には出さず目だけで訴える。
最終的にはこれが悪かったのかもしれない。
「堂々と見つめあってるんじゃないわよっ!」
そう言った彼女が私にぶつかってきた。
何が起きたのか解らなかった。
ぶつかった途端腹部が急に熱くなり、その後一気に身体が冷えた。
血が…大量の血が自分の腹部から出ていた。
それを見た直後意識を手放した。
白昼…取締役達との打合せ後に、会社に戻る途中での出来事だった。
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