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過去 〜片想いと償い〜

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あの日、僕の生は一度幕を閉じた。
そしてどこをどうしてどうやってそうしていたのか分からないけど、見つけたんだ。


『後悔しているのか?』
『失敗は……困るのだ』


見つけて手を伸ばそうとした時に聞こえた声は何だか少し不安げに聞こえる。


『彼女と同じにはなれないぞ?』
『だが彼女が望めばもしや……』


他にも何か言われたような気がするけれど、あの光に手が届くならどうでも良かった。
あの宝物のように育てた心が少しでも届くなら……少しでも彼女の心を癒して守ってあげられるなら。

だから僕は躊躇しなかった。
あの声が示した真っ暗な穴に飛び込むのを……




♢♢♢




世界の境界線を自ら越えるという行為は、かなり魂に負荷が掛かるらしい。
前世の記憶らしきものは薄らとあるけれど、具体的に思い出せるような事はほとんど無かった。

あの方が……創造神と呼ばれるあの方がいなければ、僕は何も出来ずこの世界をただ漂っていたかもしれない。


『僕の愛し子を見つけたら守って欲しい』
『見つけたらでいいよ。これは私とキミの試練だよ。会えばすぐに分かるよ。だから探して。キミにはこの世界でも長命な種族に転生してもらうつもりだ』


そう言ってあの方の元を飛び立ち、長い時間を一人で過ごした。愛しいあの子の気配はまだこの世界にはない。あの子に会えないこの長い永い時間もきっと試練なのだろうと思う。けれど、長すぎる時間は僕の記憶も薄れさせる。


「なら、その時が来るまで記憶をしまって置けばいい」


時のかけらと呼ばれる、時を司る精霊が作ってくれた魔石に、僕の大事なあの子の記憶を……思い出せただけの記憶を詰め込む。

あとはきっかけだけ。
きっかけがあれば思い出せる。
彼女を想った日々を。
彼女を守れなかった日々を。

あの時の謝罪はしない。
謝罪は『許されたい』と思う自分の身勝手な思い。だからそれはずっとずっと胸にしまって、自分を戒める糧としよう。

そう……彼女にはただ幸せを。
できれば僕が幸せを届けたい。

それが今の僕の気持ち。


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