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ミーヤの初恋
しおりを挟むミーヤは恋をした。
淡い淡い淡すぎる恋。
でもあの時はこれが恋だと気が付けなかった。だって自分は、婚家を出てきたとはいえいまだ夫人と呼ばれる立場。
政略だろうと見合いだろうと結婚は結婚。そしてこの国では重婚は認められていない。余程の貴族位があり、婚姻相手の病気などで継嗣が望めない場合や、直系の王族を除いて。
なのに……結婚した相手は性に奔放な方だった。
我が家は男爵家とはいえ平民と変わらぬ生活をしており、社交界などとは縁がなかったことが災いしたのかもしれない。
正式に婚姻するまで見事に隠された事実は直後、初夜に明かされた。それも侍女のクチから。
待てど暮らせど私のベッドには来ない旦那様。子どもが出来ればひょっとして……とも思ってた。けれど、その考えさえも実現することはなかった。
そして、そんな私を不憫に思った出入りの商人が打診してきたのが、ホーグワット家の侍女の募集だった。幸いにも下級とはいえ貴族籍にあったことと、別荘で身重の夫人の世話ということで住込希望者を……という事ですぐに採用になった。
それから……
色々と……本当に色々とあった。
あの事故で目の見えなくなった私にも、あの方は気遣いを見せてくれた。
そしてまた恋をした。
独り身に戻りはしたけれど、セレーネ様を養女として…戸籍上は娘として育てられる喜び、セレーネと共に毎日を過ごせるそれだけで充分幸せだった。
けれど再び同じ人に恋をしてしまった。
でもまさか、気持ちを返してもらえるとは思わなかった。第一身分が違う。特徴のない茶色だった髪はすっかり色が抜けてしまい、白くなってしまった。魔法使いという職業上、変わった方が多いと聞いている……だからきっと、これはあの方が妥協した結果。
セレーネを守る為……精霊様と同化した私に興味があった為の求婚。
でもそれでもいい。
だって初恋が叶う。
打算でもなんでもいい。
そばに置いてくれるのが私だけというなら……。それこそ私の打算なのだから。
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