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ジルベルトとセレーネ
しおりを挟むジルベルト・アンガー 23歳。
貧乏貴族のアンガー男爵の三男に生まれ、膨大な魔力と特殊な魔法能力を持っているという以外は至って普通に育った。転機が来たのはやはりあの洗礼の儀だった。
あの日は隣町の教会で洗礼の儀が行われ、その時に発覚した能力……鑑定と魔法医の能力を買われ、まだ幼少ながら親元を離れ王宮で魔法の能力を伸ばす為の訓練と、貴族としての教養をみっちり教え込まれた。
その後12歳で王宮の筆頭魔法使いの座に付いた翌年、運命の出会い……と言っては少々早い出会いがあった。
彼女の名はセレーネ・ホーグワット。
母譲りの青味がかった銀髪と、深い緑の瞳。
そして……僕と同じ鑑定能力を持った魔力量の豊富な子ども。
残念ながら母親のことは救えなかったが、将来有望な子どもに出会えたことは何にも代えがたい収穫だった。
さて……ここでこの国の筆頭魔法使いになれる条件を説明しようと思う。
まず第一は魔力量、2つ目は誰にも文句を言われないような特殊な能力、そして3つ目は鑑定能力と……主にこの3つだ。
はっきり言ってしまえば、3つ目の鑑定能力だけでも王宮の魔法使いにはなれる。
それほど稀にしか発現しない能力だし、見つかれば国が必ず確保する能力者だ。
けれど……
(この子には精霊がついている?)
自分の鑑定能力でも鑑定できない空白部分に疑問を感じ、部屋の中とあの子の周りをジッと見ていると、目の端にキラキラとした鱗粉のような物が見えた。
(色々と稀有な子だが、精霊が護る子どもを有象無象の中に投げ込みたくはないなぁ……)
この世界に存在すると言われる精霊はとても気紛れで、チカラのある存在だと言われている。
そんな存在が彼女に?
それとも……
疑問を多少残しつつその日は彼女へ、能力の隠匿魔法をかけ王都に戻った。
また逢えるだろうことを願って……
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