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もう少し……
しおりを挟む「……その髪……は?」
ドア近くに立ち声を掛けてきたミーヤは、以前まで一緒にいた……心の中で『母様』と呼んでいたミーヤとは髪の色も目の色もすっかり変わっていた。そして……。
「目が見えていない?」
ここまで一緒に来た使用人に手を取られ、ゆっくり歩くミーヤ。セレーネの頭の中に再び『なぜ?どうして?』が溢れ出しそうになった時、ミーヤにイスを勧めたユアンがこれまでの……魔力暴走が起こってからのことを話してくれた。
「セレーネの魔力暴走を止めてくれたのは彼女なんだ。セレーネを中心に魔力が吹き荒れ、屋敷までも吹き飛ばしてしまうんじゃないかという渦の中に飛び込んで、セレーネを抱き留め暴走を止めてくれた。視力の喪失は強い魔力の影響だろうと、筆頭魔法使いの方が言っていた」
そして、兄様の声に被せるように、精霊のシルフィ(仮)の声が聞こえた。
『セレ!!!ボクがいない間にいったい何があったんだ?あそこから戻ってきたら屋敷は凄いことになってるし、セレは暴走してるし、コイツは瀕死だったし……それに……』
シルフィ(仮)が語ったあの日の惨状に、今更ながら恐怖を覚えた。
(瀕死って……私が……私自身がミーヤを殺してしまうところだったんじゃないっ!)
握り締め過ぎた爪が自身の手を傷つけているのは分かっていたが、それを解くことができない。気を抜くと泣いてしまいそうだったからだ。
「セレーネ。アレを起こしたのはセレーネではない。俺だ。そして止めてくれたのは彼女だ。感謝している。そして彼女を救ってくれた奇跡にも……」
俯き、噛みしめるように語る兄様。
多分、兄様には精霊の姿は見えていない。
だから『奇跡』と言ったのだろう。
「兄様……ミーヤはこれからどうなるのですか?父様は……父様はどう言っているのですか?」
あの日から色々な処理で忙しくしているという父様の考えが気になる。思えばあの日も碌に話しが出来なかった。
「ミーヤは辞めさせられてしまうのですか?私はミーヤから引き離されてしまうのですか?」
考えれば分かる。
身体機能が失われた使用人など通常は使えない。たとえセレーネの魔力暴走を止めたが故の負傷であっても、報償金などは出すだろうが、雇用の継続はできない。多分。
それに、今後セレーネがこの家に……ホーグワット家にい続けられるかも疑問なのだし……。
そこまで考えて、再び落ち込んだ……。
(いまだ幼児な自分が恨めしい。せめてあと5年……私がもう少し大きかったら……)
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